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罠を仕掛けた三人は森の草むらに隠れた。しばらく黙って罠を見ていたが、ハーピーがやってくる気配がない。
「ハーピーの奴、なかなか来ないな」
「仕方ないですよ。簡単につかまえられるのならダイアウルフも私たちにこんな試練を与えないですから。もう少し待ってみましょう」
「そうだな、ヒメジ。それにしても……。」
「オニヨンさん。話し中ですが、ハーピーが見えました」
「ザイン。どこにハーピーがいる?」
「あそこです。あの木周りを旋回しています」
「本当だ。もっとこっちに近づいてこい」
「オニヨンさん、下の網にハーピーがかかったら合図くださいね」
「分かったヒメジ。罠を落とす用意をしてくれ」
ハーピーは次第に高度を下げてきた。ゆっくりとなにかを探すように森を見ながらハーピーは降下してくる。
「オニヨンさん、我々の設置したリンゴを見つけたようですよ。ゆっくり旋回しながらこちらにやってきます」
「ザインそうなのか。私には降りてきているようには見えないが」
「老眼なので、見えないだけじゃないのですか」
「ヒメジ、後でしばく」
「それだけはご勘弁を」
「ほら、オニヨンさん。さっきまであの木のてっぺんを旋回していましたが、今は上から四番目の枝のあたりを旋回していますよ」
「そうだな、しかし、随分警戒しているように見えるが気のせいか」
「いいえ、警戒していると思います。木に実っているリンゴが地面に置かれているのですから、罠か何かあるのではないかと思うのが普通です」
「そうだな。ハーピーが降りてきやすいように動かないでゆっくり待とう」
「その方がいいですね。あ、木の半分の高さまで降りてきました。何もないと思ったのでしょうか、こっちに向かってきます」
「ハーピーちゃん、もう、ちょっとだ。降りてこい」
「オニヨンさん、近づいてきました」
「よし、ザイン。いつでも戦えるように剣の準備をしておけ。ヒメジ、罠を落とす準備はいいな」
「はい、オニヨンさん。準備できています」
ハーピーは、ゆっくりと確実にリンゴが置かれている所に降りてきた。
「もう目の前まで降りてきました。後十メートルほどです」
ザインとオニヨンは瞬きせず、ハーピーの動きを見ていた。後、五メートル、三メートル、
一メートル、しかしハーピーは上昇して上空十メートル付近で旋回した。
「畜生、気づかれたか」
「違うと思います、オニヨンさん。もし気づかれたのなら、ハーピーはここから飛び去っていると思います。まだ、上で旋回していると言うことは、リンゴをとるタイミングが合わなかっただけだと思います」
「なるほど。それではまだチャンスがあるのだな」
「ええ、そう思います」
二人は上空にいるハーピーを見つめた。すると、ハーピーは再び旋回をしながら降下してきた。
「再び降りてきましたよ」
「さすがだな、ザイン。言う取りになったじゃないか」
再びザインとオニヨンは瞬きせず、ハーピーの動きを見ていた。後、五メートル、三メートル、一メートル、そして罠にかかった。
「ギャァァァァ」
ハーピーは全身に麻紐が絡まり、飛べなくなって大声を上げた。
「今だ。罠を落とせ」
オニヨンの合図でヒメジは罠を落とした。上から落ちてきた網はハーピーの頭から全身をすっぽりと覆った。
「でかしたぞ、ヒメジ。ザイン、今だ、出るぞ」
「はい」
オニヨンとザインは剣を持って罠のかかったハーピーの前に草むらから出た。
「グァァァァァ」
網の中でもがいているハーピーを二人は囲んだ。
「ハーピー、覚悟しろ」
ザインは両手剣を上段に構えてジャンプすると、ハーピーの頭上に打ち込んだ。ハーピーは頭から血を流してがっくりとなり動かなくなった。
「ザインでかした。足を二本取って、後は供養してやろう」
「分かりました」
三人は、ハーピーの足を切り落とすと、亡骸は地面に埋めた。
翌朝、ダイアウルフが山から降りてきた。
「約束通りハーピーを仕留めました。これがその証拠です」
ザインはダイアウルフにハーピーの両足を見せた。
「確かにハーピーの両足だ」
「それじゃあ、これで二つの試練をクリアしたことになるのだな」
「ああ、そうだ」
「さあ、ダイアウルフよ、三つ目の試練は何だ」
「三つ目の試練は、私からではなく、グリフォン様が直接お前達にお伝えなさる」
「それでは、その、グリフォンはどこにいる」
「グリフォン様はこの森の奥にいらっしゃる。私が今から案内するからついてまいれ」
ダイアウルフは山をゆっくりと登りはじめた。三人はその後をついていった。
「オニヨンさん、オニヨンさん」
「どうした、ヒメジ」
「オニヨンさんが若い頃この森に来たときにダイアウルフやグリフォンっていましたか?」
「グリフォンは天使の泉より奥にいたから会ってはいない。ダイアウルフはいなかったぞ」
「さっきから気になっていたのですが、どうしてダイアウルフはグリフォンのしもべになったのでしょうか?」
「さあなあ。分からない。それよりヒメジ遅れているぞ。しっかり歩け」
「待ってくださいよ、オニヨンさん、ザインさん」
三人がしばらく歩くと、天使の泉が見えてきた。ダイアウルフはその泉の前まで来ると、三人の方を向いた。
「お前達は、ここで待っておれ」
「この先に行かないのですか?」
ザインが尋ねたが、ダイアウルフは何も言わずに去ってしまった。ヒメジとザインは仕方なく、その泉の前で腰を下ろして休憩した。オニヨンは泉に近づくと、両手で泉の水をすくって飲んだ。
「あ~、上手い。どうだ、少しは綺麗になったか?」
「はい、さすが天使の泉ですね。オニヨンさん肌が綺麗でしたが、水を飲まれてから、より一層みずみずしい肌になってお若く見えます。美人なのに、より美人に見えますよ」
(ザインの奴め。本当に口が上手いな)
「ヒメジはどう思う? 美しくなったと思うか?」
「はい、そう思います。とっても美人になったと思います」
「そうだろうな。この泉の水を女が飲むと、美しい人はより美しくなるからな。二人とも、私の美貌に見とれて、惚れるなよ」
「はい、気をつけます。でも、惚れちゃったらどうしましょう」
(相変わらず、ザインは上手く言うな。私も少し見習おう)
「で、ヒメジはどうだ」
「はい、惚れちゃいます」
「さっきからヒメジの返事は、気持ちがこもっていないように見えるが……」
(やばい、いい加減に答えていたのがばれる)
「そんなことないですよ。心からそう思っています」
「それか、それならいいが。まあ、男のお前達が飲んでも変化はないが、喉が渇いただろう。この泉の水を飲んでみろ。上手いぞ」
そう言われて、ヒメジとザインは泉の水を手ですくって飲んだ。ヒメジは水のおいしさに思わず、
「上手いと」
つぶやいた。確かに、水にほのかな甘みがあり、かすかに柑橘系の香りがする。男が触ると、ただの水になると言われているのにこれだけ旨い水なら、女性が飲んだらもっとおいしいだろう。それに、女性は、飲めば飲むほど肌がみずみずしくなるのだから、これなら女性が夢中になるのもうなずける水だ。ヒメジは自分が男で、この水を扱えないことが悔しかった。
「どうだ、ヒメジ、持って帰れなくて残念だったな」
「オニヨンさん。仕方ありません。こればっかりはどうしようもありませんから」
「そうだな。ヒメジがいまさら女になるわけにもいかないからな」
「ええ、まあ、そうですね」
会話しているところへダイアウルフが戻ってきた。
「待たせたな、今からグリフォン様の所へ行くのでついてまいれ」




