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 谷に流れている小川に沿って上流へ歩いて行くと、木々の向こうにいくつかの煙が上っているのが見えた。ちょうど昼頃である。

「オニヨンさん、ヒメジさん、多分あの煙が上がっているところがオーガの集落ですよ。戦闘の準備はいいですか」

「ザイン、準備いいぞ」

「私もです。ザインさん」

「それでは私の作戦をいいます。お二人はオーガの集落手前の河原で騒ぎを起こしてください。おそらく手下のオーガが多数出てくると思います。その間に私は単独で集落に突入しオーガのリーダーを討ち取ります」

「それは危ない。三人で連携して集落を襲撃した方がいいのではないか?」

「オニヨンさんの作戦には一理あります。しかし、オーガはそれほど頭が回らないモンスターです。おそらくお二人が騒いだら、ほとんどの手下はお二人の所に行くでしょう。残っているのはリーダーだけでしょう。それなら、私一人でも戦えます。むしろ、お二人の方が、相手にする人数が多くて大変だと思います」

「それは大丈夫だ。わしとヒメジならオーガが三十匹いようが、五十人いようが、ちょちょいの、ちょいだ」

「それを聞いて安心しました。それではよろしくお願いします」

「それでは、我々は、もう少し行った河原で大声を出す。それを合図に、ザインは迂回して山中から集落に突っ込め」

「はい」


 ヒメジとオニヨンは五分ほど走り、河原で大声話あげた。

「オーガの馬鹿野郎」

ヒメジが大声で叫ぶと、オニヨンもされに負けじと

「オーガの弱虫」

叫んだ。何度も繰り返し叫ぶにつれて、オーガの集落から多数のオーガが河原に駆けだしてきた。あっという間に二十匹以上のオーガが二人に近づいてきた時に、二人は下流に向けて走り始めた。

「ヒメジ、お得意の逃げ足を生かせよ」

「オニヨンさんも、転ばないでくださいよ」

二人は一生懸命逃げたが、オーガは二人の後をまるでライオンが獲物をつかまえるように追ってきた。

「オニヨンさん追いつかれます」

「ヒメジの足が遅いからだ」

「仕方ないですよ。もう、年なのですから」

「仕方ないこの辺で戦うとするか。いいな、ヒメジ」

「わかりました」

二人はオーガの走る速さに驚き、逃げることをあきらめて立ち止まると、オニヨンは賢者の剣をヒメジはダガーを鞘から抜いた。オーガが二人に追いつくと、持っていた棍棒で殴りかかった。


一方ザインは二人の大きな叫び声を聞くと山の中の茂みを通ってオーガの集落に向かった。五分ほど走っていると、オーガの集落が見えた。ザインは両手剣を鞘から抜くと、一番大きな建物の前にいるオーガのリーダーめがけて走り始めた。

「オーガのリーダーよ、覚悟しろ」

「なんだ、人間。何をしにきた」

「問答無用」

ザインはオーガのリーダーに両手剣を右肩に向けて斬りつけた。しかし、オーガのリーダーはそれを左にそれて躱すと、大斧をザインの首を狙って縦に振った。ザインは体を反転させて両手剣でオーガのリーダーの大斧を防いだ。オークのリーダーは力が強い。次第に両手剣がザインの体に近づいている。このままでは、やられると思ったザインは無詠唱でファイアーボールをオークのリーダーに向かった発射した。オークのリーダーはそれを避けようとして、体を後ろに移動させると、ザインの両手剣から大斧が離れた。そして、二人は向かい合った。オーガのリーダーは、大斧を上段に構えると、ザインに尋ねた。

「お前を殺す前に、聞いておきたいことがある。誰に頼まれてわしを殺しに来た」

「お前は死ぬのだ。聞いていても仕方が無いだろう」

「おそらくはダイアウルフか」

「知らん」

「ダイアウルフだな。いま、お前の顔が一瞬引きつったのが分かったぞ。これで心置きなくお前を倒すことが出来る。その後で、ダイアウルフを血祭りに上げてやる」

「お前が倒されるのが先だ」

「ならばやってみろ」

オーガのリーダーはアイスカッターをザインに繰り出した。ザインはそれを右にジャンプして躱すと、ストーンバレットで反撃した。しかし、オーガのリーダーはウインドウオールでそれを防いだ。こうして二人はしばらく魔法で攻撃したが、どちらも有効なダメージを相手に与えることは出来なかった。


 河原で二人は座っていた。多くのオーガを倒してへとへとだった。とりわけオニヨンは賢者の剣でほとんどのオーガを峰打ちで気絶させていたので疲れていた。

「ヒメジ、相変わらず、お前はへたれだな」

「そう言いますが、オーガを二匹倒しましたよ」

「よく言うよ。ぼこぼこに叩かれていたくせに」

「私にはこのプロテクトリングがありますから無敵なのです」

「確かにそれは、便利なアイテムだが、もう少し攻撃もしっかりやってもらいたいな」

「そうおっしゃいますがね、私だって怖いなりに頑張っているのですよ」

「たしかに、ダガーをめちゃくちゃ振って、たまたま当たったのが二匹だものな」

「いいじゃないですか。倒したのは事実ですから」

「まあ、そうだな、頑張ったことにしておく。ところでヒメジ、もうひと仕事だ。今からザインの助太刀にいくぞ。おそらく相手は強敵だからザインもてこずっているだろう」

「そうですね。行きましょう」

「お、恐がりさんが疲れているのに、ハッスルしている」

「もう、オニヨンさん茶化さないでください」

「すまん、すまん」

二人は立ち上がると、走ってオークの集落に向かった。


 ザインは魔力がほとんど無くなっていた。

「はあ、はあ、はあ」

「何だ、もう魔法は終わりか。それならこちらから行くぞ」

オーガのリーダーはファイアーボールを発射した。ザインは左へ横っ飛びをして一回転し、それを躱したが、もう体力も限界であった。ザインは片膝を立てたまま座っている状態で、

(だめだ、一太刀だけでもあびせたいが、オーガのリーダーの魔法で近づけない。どうしたものか……)

悩んでいた。やがて何か思いついたようで

(よし、一か八かやってみよう)

ザインは地面にあるにある砂をつかむとオーガのリーダーの顔にめがけて投げた。それと同時にザインは立ち上がると、両手剣をオーガのリーダーの頭に振り落とした。

「やった~」

ザインが思った瞬間、大斧がオーガのリーダーの頭の上に持ち上げられて両手剣がはじき返されてしまった。そして、ザインはそのまま後方にはじき飛ばされると、尻餅をついた。ザインはもう体力は残っていなかった。そのまま、大斧がザインの頭に振り下ろされた時に、

「しゅ~」

クロスボウの矢がオーガのリーダーに飛んでいった。オーガのリーダーはそれに気づくと、大斧を振り下ろすことをやめて、体を右に避けた。ザインは後ろを振り向くとそこには、ヒメジとオニヨンが立っていた。ヒメジは、クロスボウに矢をセットして、オーガのリーダーに発射した。それはオーガのリーダーの大斧の斧刃で防がれたが、オニヨンがオーガのリーダーの前に剣を構える時間を稼ぐことが出来た。


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