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「やったー!」

「勝ったぞ~!」

二人はその場で飛び跳ねて喜んだ。すると、部屋の真ん中に宝箱が出現した。二人は近づくと急に宝箱が輝いて杖にかわり地面に落ちた。二人は走って駆け寄った。そして、ヒメジが手に取って鑑定をすると、

【賢者の杖 異世界人を元に戻すアイテムの一つ】

表示された。

「オニヨンさん、これ賢者の杖です」

「ヒメジ本当か? ただのぼろぼろな杖だぞ」

「間違いないです。私の見立てではこれが賢者の杖なのです」

「そうか、良かったな。ヒメジこれはお前が持っていろ」

ヒメジは賢者の杖を拾うとカバンの中に入れた。

「オニヨンさん、残念そうな顔をしていますよ。賢者の剣がなかったからでしょう」

「まあな。でも気を取り直してあそこにある階段で十五階層を目指そうではないか」

「十五階層にあると思っているのですね」

「もちろんだとも。私の夢ももうすぐかなうぞ」

「ひょっとしたら、賢者の杖がでたのでメインのアイテムはもう無いかもしれませんよ」

「どういうことだ?」

「だって、これだけのお宝アイテムが出たら、もう出ないのが普通でしょう。一つのダンジョンに一つのお宝アイテムが常識です」

「あのなあ、さっきまでヒメジは『深い階層には賢者の剣がある。私は嘘をつきません』とさんざん言っていたではないか」

「それは、賢者の杖がまだ見つかっていなかったからですよ。でも、見つかってしまった以上はこれと同等なものが出てくることは期待できないでしょう。もう無いと思いますよ。絶対に無いです」

「無いと二度も言うな。賢者の剣が無いかも知れないが、あったらどうする? 私の夫になるか?」

「どうしてそうなるのですか?」

「それだけの覚悟があるのかと聞いている」

「それだけはどうか勘弁してください」

「どうしてだ」

「私は、お淑やかで優しい女性が好きなのです」

「私にぴったりなじゃないか。私は優しいぞ。ヒメジも言っていたではないか」

「いや、その、あれは冗談ですよ」

「冗談だと。私を騙していたのね。責任とってよ」

「責任って、どうとったらいいのですか?」

「もちろん、私と結婚すること」

「それは、その……」

(怖くて出来ないよ~)

「まさか、こんないい女を嫌だというのね。もしそうなら、覚悟は出来ているわよね」

オニヨンは指をポキポキ鳴らした。

(怖いよ~。とりあえずこの場を何とかしよう)

「まだ、オニヨンさんのことをよく知らないですから、友達から始めてもいいですか?」

「なんだと。……まあ、いい。まだ脈はあると言うことだな」

「それは認めます」

「よし、それではその件については追々話をするとして、次の階層に向かうとしよう。まだ十五階層があるのだ。私は賢者の剣を最後まであきらめないぞ」

オニヨンは十五階層へ向かう階段を元気に降りていった。

(面倒な人だ。さっきまで落ち込んでいると思ったら今度は急に元気になる。疲れるなあ)

ヒメジはため息をついて、オニヨンの後をついていった。


十五階層は山岳地帯のダンジョンであった。天気は薄曇りで、遠くの方では雷が鳴っている。薄気味悪い空間である。二人は階段を降りて三時間ほど山道を歩いた。

「おによんさん、今まではモンスターに出会わなくて良かったですね」

「そうだな。出会っていたらヒメジは真っ先に逃げるだろうな」

(正解そうです。すぐに逃げるつもりです)

「そんなことないですよ。私だって、このブーメランナイフで、ばったばったモンスターを倒しますよ」

「よく、そんな大口が言えるな。さっきの階層でも、アークドラゴンにブーメランナイフが効かないと思ったらすぐに逃げ始めたくせに」

「あれは、ほれ、『逃げるが勝ち』と言うじゃないですか」

「やっぱり逃げたいのだ、ヒメジ。ほれほれ」

ヒメジは脇腹をオニヨンに何度も肘でつつかれた。

「勘弁してください、オニヨンさん」

二人がふざけていると、かなり遠い場所から

「ガオ~~」

うなり声がしてきた。

「ひゃ~~」

ヒメジはオニヨンに背中に震えながら隠れた。

「あの声は何でしょうか? モンスターの鳴き声ですよね」

「ヒメジ、相変わらず情けないな。確かにあれはモンスターの鳴き声だが、まだ随分遠いぞ」

「でも、羽を持ったモンスターならすぐに跳んでくるでしょう。用心したことに越したことはないです」

「まあ、そうだが、ヒメジの場合は用心しすぎだ。さあ、もうじき安全地帯なのだろう。モンスターに会いたく無いのなら早くそこへ行こう」

「そうですね。オニヨンさん、前を歩いてください。私はこうやって後から行きます」

「ええい。鬱陶しい。電車ごっこしているわけじゃないから、肩から手を離せ」

「少しだけいいじゃないですか。こうしないと怖くて足が震えて歩けないですから」

「ヒメジは子どもみたいだな。まあいい、しかし肩以外は触るなよ」

(触れと言われても触りたくないですよ。だって、怖いよ~。モンスターとオニヨンのどっちが怖いと言われたら、絶対にオニヨンだ~)

「はい、触りません」

オニヨンはヒメジに肩を持たれてルンルン気分で、ヒメジは恐怖のため震えながら歩いた。そして三十分かけて二人は安全地帯に入った。


 「あ~あ、おいしかった~。ヒメジ、満足したぞ」

「オニヨンさん、よく食べましたね。三回もおかわりしてお腹を壊していないですか?」

「大丈夫だって。私の胃袋は鉄で出来ているからな」

「よほど丈夫なのですね」

「ああ、子どもの頃からお腹を壊したことがないからな。私の自慢の一つだ」

「それは素晴らしい。まるでウワバミみたいですね。ところで今日も武器のメンテナンスを行いますので私に渡してください」

「わかった。それにしても、今日はアースドラゴン線で二本も剣を折ってしまったからなあ。ヒメジ、ドラゴンが出てきても折れない剣を作ってくれないか?」

「なんとかやってみます」

「頼むぞ。それとヒメジは一言多い。誰がウワバミだって」

オニヨンはヒメジの頭に拳骨を落とした。

「痛い。もっと年寄りをいたわりませんか、オニヨンさん」

「それは、ヒメジの言動次第だ!」


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