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二人はキングオブヒュドラを倒して開いた大きな扉を通って、十五階層へ降りる階段のある空間に入った。その空間はキングオブヒュドラのいた空間より広く、野球場がすっぽり入るほどの大きさであった。
「やっとここまでたどり着いたな。ヒメジは体調に問題ないか?」
「ありますよ。もう、腕も足も腰も動き疲れてぱんぱんです」
「ヒメジ、年だな。私はなんともないぞ」
「よく言いますよ、さっきから二の腕をもんでいるではないですか。筋肉痛ですか?」
「うるさいな~」
「オニヨンさんもいい年ですから無理しないでくださいね」
「私はまだまだ若いわ。失礼なこと言わないで、これでも……」
「あ! 前方から何かきます。あの二足歩行の生き物です」
「あ、あれはアースドラゴンじゃないか」
「アースドラゴン……ドラゴンの仲間、え~~。怖いよ~。口から火炎を出すのでしょう」
「ヒメジ、心配するな。あんなアースドラゴンなんてちょちょいのちょいだ。任せときな」
オニヨンは盾を地面に置くと、アースドラゴンに向かって走って行った。ヒメジは怖がって震えながらも力一杯毒の薬がついたブーメランナイフをアースドラゴンに向けて投げた。
「ガオ~~」
アースドラゴンは竜の咆哮で、近づいてきているオニヨンを怯ませた。
「くそ~、体が思うように動かない」
その間に、ヒメジの毒の薬がついたブーメランナイフはそのままアースドラゴンの腹まで届いたが、堅い鱗に阻まれてはじき返され、傷を付けることが出来なかった。ただ、腹に当たった時に、アースドラゴンが立ち止まって、手でお腹を二回ほどはらった。短い時間であったが、オニヨンは体制を整えて再びアースドラゴンに向かって走りだす時間を与えた。ヒメジは手許に戻ってきたブーメランナイフを再びアースドラゴンに投げた。アースドラゴンは左腕でそれを振り落とそうとしたが、動作が緩慢で間に合わず、左肩に当たった。しかし、堅い鱗に阻まれてはじき返された。ただ、アースドラゴンの注意をブーメランナイフに向いていたため、オニヨンは素早くアースドラゴンの左足に剣をたたき込んだ。
「アースドラゴン、これでもくらえ」
剣が鱗に当たった瞬間、その剣が真二つに折れてしまった。
「え? どうして」
オニヨンは折れた剣を呆然と見ていた。
「オニヨンさん、逃げて」
ヒメジの声がする。アースドラゴンの左足がオニヨンを踏みつぶそうとしていた。オニヨンは剣を捨てると慌てて右にジャンプした。手を伸ばしてスライディングした格好になったが、間一髪回避したオニヨンは、素早く立つと、代わりの剣をアイテムボックスから取り出した。ヒメジは戻ってきたブーメランナイフを三度アースドラゴンに投げた。今度はアースドラゴンの頬に当たった。しかしここでも堅い鱗にはじき返されてたいした効果はなかった。
「糞、堅すぎる。私の持っている武器では倒せない」
ヒメジは絶望感が湧いてきた。
「ガオ~~」
アースドラゴンが竜の咆哮で二人の戦意を喪失させた。とりわけ、ヒメジはひどかった。
「ああ、もうだめだ、アースドラゴンには勝てない」
落ち込んで、アースドラゴンに背を向けて逃げ始めた。それを見ていたオニヨンは、
「あ、こら、逃げるな。この意気地無しめ」
ヒメジに罵声を浴びせた。プロテクトリングがあるため影響を受けないヒメジが逃げ始めたので、オニヨンは自分一人でアースドラゴンを倒そうとジャンプした。その瞬間、急にアースドラゴンの右手がオニヨンに向かってきた。
(これをまともに受ければ、大けがをする)
オニヨンは、アースドラゴンの右手に剣を突き刺した。しかし、剣は折れてオニヨンは五メートルほどはじき飛ばされた。背中から落ちたオニヨンは、すぐには立ち上がれなかったが、アースドラゴンが逃げているヒメジに向かって歩いて行ったので、オニヨンは痛みを和らげるために回復薬を飲む時間を得ることが出来た。一方、その頃ヒメジは、アースドラゴンに背を向けながら逃げている。と言っても怖くてよろけたりこけたりしながら逃げているので、次第にアースドラゴンとの距離が短くなってきている。
「このままでは、まずい。倒されてしまう」
ヒメジはやけくそになり、無駄とは分かっていても、ブーメランナイフをアースドラゴンに投げた。四回目はアースドラゴンの首に当たったがこれも堅い鱗ではじかれた。アースドラゴンはヒメジに火炎を吐いた。ヒメジはブーメランナイフがはじかれてがっかりしていたので、その場に呆然として立っていた。そこに火炎が浴びせられたので、ヒメジは死を予感した。アースドラゴンは、振り向いて火炎をオニヨンにも向かって吐いた。オニヨンもまともに当たりかけたが、右に避けて間一髪それを躱した。
「ふう、回復薬とこの素早さのリングのおかげで体が素早く受けるようになった。今度はこちらの番だ。覚悟しろよ、アースドラゴン」
オニヨンはアースドラゴン後方に回り込み、右足のかかとに剣を突き刺した。ヒメジが修理した殺傷力が向上した剣と力の指輪がオニヨンの攻撃を助け、堅い鱗でも突き破って傷を付けることが出来た。
「やったぞ」
オニヨンは喜んだ。しかし、アースドラゴンは足に傷を付けられたが蚊に刺された程度の傷にしか無かったようだ。オニヨンは剣を抜くと、その場から逃げ始めた。ヒメジは、火炎がおさまるとその場にポケーっと両足を伸ばして座っていた。プロテクトリングのおかげで傷一つなかった。ヒメジは、オニヨンの動きを目で追っていたが、オニヨンがアースドラゴンに傷をつけるところを見るとすぐに立ち上がった。
「やりましたね、オニヨンさん。さあ、逃げてください」
ヒメジは大きな声で叫んだ。
「ヒメジ、生きていたか」
オニヨンが返事をした。
「当たり前じゃないですが。私はハンサムボーイなのです。こんなところで倒れるわけにはいきません」
「よく言うよ。ヒメジも攻撃を受けないように気をつけて逃げろ」
「はい、そうします」
二人が大きな声で話をしている時、アースドラゴンは次第に苦しみ始めた。オニヨンが突き刺した剣に仕込ませていた猛毒が体を巡り始めたようだ。何度もあたり一面にむかって大きな咆哮をあげたり火炎を吐いたりしながらもがいていた。二人は咆哮や火炎を浴びないように逃げ回っていた。二人が三分ほど駆け回って逃げた頃、アースドラゴンは火炎をはきながら倒れると、
「ぽん」
の音ともに三枚のドラゴンの鱗をドロップした。鱗はヒメジ達が使っている盾よりも大きかった。




