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主人公が出ない物語です。少しストーリーが長くなりましたので、第九話、第十話の二つで投稿することにしました。「pvが少ないのに主人公がでない物語を投稿するなんてもう読まないから」とおしかりを受けても仕方ないですが、「まあ、この作者だから仕方ないわね」とおおらかな気持ちで読んでいただけたら幸いです。楽しんで読んでください。
「ただいま」
神父が教会に戻ってきた。シスターは神父を出迎えて、
「ヒメジさんに渡してきたの?」
尋ねた。
「ああ、渡してきた。もう使い物にならない品だからな」
神父はさっぱりとした声で言った。
「でもいいのかしら。あなたの家から代々引き継がれた品でしょう。それをヒメジさんに渡しても良かったのかしら」
「いいさ。私が持っていても使い道がない品だから、ヒメジさんに持っていた方が役に立つだろう。それに、彼のおかげで教会が修理されて私たちも生きていられるからね。そのお礼の品だと思えば安いものさ」
「それならいいのですが、由緒正しい品を昨日あったばかりの人に渡すなんて、私には信じられませんよ」
「いいや、これは神様の思し召しだと思う。だから私は渡したのさ」
「どういうことですか?」
「そういえば、このプロテクトリングのいきさつについては話をしていなかったね。今からシスターにそのことを話そう。プロテクトリングが手に入れたのは今から五百年ほど前だと言われている。夜にヒメジさんが教会の戸を叩いたように、一人の五十代の男が嵐の夜に教会の戸を叩いたのだ」
トン、トン、トン。
「今晩は」
トン、トン、トン。
「今晩は」
男が戸を叩いていると、教会の戸が少し開いた。
「どちら様でしょうか?」
中から三十代の女性の声がした
「私は旅の者ですが、嵐に遭ってしまい困っています。ひと晩宿をお借りできますでしょうか?」
「宿でしたら、この道を真っ直ぐ進んで左に曲がったところにありますので、そちらを利用してください」
「実は、お恥ずかしながらお金を落としてしまって、すっからかんなのです。礼拝堂の隅で構いませんので嵐がやむまで泊めていただけませんか?」
それを聞いた女性は戸を開けると、男を教会の中に入れた。
「礼拝堂だけですよ。奥には入って来ないと約束してください」
「はい、それは約束します」
「では、この礼拝堂をお使いください」
「ありがとうございます」
こうして、男は教会で泊めてもらうことになった。
「あら、体がずぶ濡れではないですか。乾いた布を持ってきますのでそれで拭いてください」
女性は奥に入っていった。
「お構いなく」
男はそう言ったが、内心では女性の心遣いに大変感謝していた。
「お持たせしました。これをお使いください」
女性は男に乾いた布と男性用の服装を渡した。男はそれを受け取ると、
「布はありがたく使わせていただきますが、服装までは申し訳なくて使うことは出来ません」
男は布だけ手にとって、服装は返そうと女性の前につきだした。女性はそれを見て、
「気にしないでください。やせ型でした亡き父の服ですが、あなたの体型が父にそっくりなので使ってもらいたいと思います。この教会ではもう着る人がいないので、是非使ってください。それに、着替えないと体が冷えて風邪をひいてしまいますよ」
女性は服を受け取らなかった。男は、
「そうおっしゃるのなら、遠慮なく服を使わせていただきます」
そう言って、服を脱ぎ始めた。女性は裸の男を見る趣味がないので奥に引っ込んでいった。
乾いた布で体を拭いて、女性が持参した服を着ると、濡れた服を礼拝堂の長いすにかけた。全てかけ終わると男はほっと一息ついて長いすに座った。すると、奥の戸が開き女性はパンと温かいスープを盆にのせて持ってきた。
「着替え終わりましたか?」
「はい、終わりました。私にぴったりの服です」
「それは良かったです。お腹が空いているでしょう。たいした物はありませんがこれを食べてください。温まりますよ」
女性は盆を男性に渡すと、男性はそれを受け取り長いすの上に置いた。
「ありがとうございます。いただきます」
男は食事をしながら、女性に語り始めた。
「自己紹介がまだでしたね。私は旅をしているS級冒険者です。主に剣士ですが多少の魔法も使えます。これまでに多くのダンジョンに入り財宝を手に入れました。そして、このフォース国のどこかのダンジョンにあるプロテクトリングを探しているところです」
ここまで言って、男はスープをスプーンですくって口に持って行った。
「へえ、冒険者さんですか。実は私も冒険者ギルトに登録しています。まだD級ですが回復魔法を得意としていますわよ」
女性は男が冒険者と聞いて親近感を湧いたようで、笑顔で男に話した。男はそれを聞いて、
「それなら今度一緒にダンジョンヘ行きませんか」
女性を誘った。女性は男が『お茶でも一緒に行きませんか』程度の軽い口調で言ったので、少し警戒したが、半分ずつにしましょう」
男のひと言で首を縦に振って了承した。女性は教会を維持するためにはお金が必要だったからだ。
「やった。ありがたい。治癒魔法が使える人がいれば鬼に金棒だ。いるだけでとても心強い。サイクロプスでも、デーモンでも何でも来い」
男はその場で喜んだ。男が子どものように飛び跳ねて喜んでいる姿を見て女性は男が悪い人間ではないと思えてきた。やがて男は食事を全て平らげると、
「ありがとうございました。体がとても温かくなりました。それにスープはとてもおいしかったです」
言いながら盆を女性に渡した。女性はそれを受け取ると、
「それでは私は休ませてもらいます。お休みなさい」
言って奥に入っていった。男は疲れが出て、長いすの上で横になるとすぐにいびきをかき始めた。
翌日、男が目を覚ますと女性が男のためにパンとスープの簡単な朝食を持って礼拝堂に入ってきたところであった。
「おはようございます」
男は女性に挨拶をすると、
「おはようございます。朝食を用意いたしました」
女性も笑顔で返事をした。
「うわ~。これはごちそうだ。いただきます」
男はパンをガツガツと食べ始めた。
「ところで、今日はどうされるのですか?」
女性は男に尋ねた。
「そうですね、近くにダンジョンを見つけていますので、腕試しにそこへ行きましょう」
「近くに? この町の近くにダンジョンはなかったはずですが」
「それが一昨日にたまたま道に迷っていたところで偶然に見つけたのです。比較的近いですよ。ここからだと歩いて二~三時間というところです」
「分かりました、今から準備しますので朝食を食べていてください」
女性は奥に戻っていった。
「はい、ようし食べるぞ」
男は朝食をガツガツと食べ始め五分ほどで全部平らげた。
「おいしかった」
男が言うと同時に、奥のドアが開いくと皮鎧を着てスタッフを持った女性が入ってきた。
「お待たせいたしました」
今まで教会のシスターとして振る舞っていた女性が冒険者の格好になったので男はその変化に驚いて、女性に見とれていた。あまりにも男性がじろじろ見るので、女性は、
「そろそろ出発しませんか」
声をかけた、男は我に返って、武具を装備するとすぐに教会から出発した。
前半いかがでしたでしょうか。この続きは明日投稿します。後半を現在作成中です。ハッピーエンドにするのか、バッドエンドにするのか現在思案中です。明日のできあがりを楽しみにしてください。




