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「今度は、ヒュドラ三匹だ。ヒメジいけるか?」
「大丈夫です」
オニヨンはヒュドラの口からはく毒を盾で防御しながら、後方のヒメジに合図を送った。ヒメジは毒の薬がついたブーメランナイフを投げるとヒュドラの胴体に刺さり、すぐに抜けてヒメジに戻ってきた。ヒュドラは毒に耐性のあるモンスターではあるが、ヒメジのブーメランナイフに付けた毒はヒュドラをも倒す猛毒で、五秒とかからずヒュドラは倒れた。
「残り二匹。おまえも、これをもくらえ」
ヒメジは戻ってきたブーメランナイフをヒュドラに向けて投げた。ブーメランナイフは真っ直ぐにヒュドラに向かって行ったが、一匹の蛇の頭がそれをはじき返した。
「しまった、しくじった」
ヒメジは、悔しがったが、オニヨンがいつの間にかそのヒュドラの傍まで近づいて毒のついた剣を胴体に刺した。
「しゅるるるる」
異様な叫び声と共に、ヒュドラは倒れた。
「やりましたね、オニヨンさん」
「さあ、残りは一匹だ。ヒメジ気合いを入れて倒すぞ」
「了解です」
ヒメジは残ったヒュドラに向かってブーメランナイフを投げた。しかし、ヒュドラの頭の間を通り過ぎてヒメジの手許に戻ってきた。それと同時に、九つの蛇の頭を持つヒュドラは一斉に口から毒を吐いた。一頭だけならたいした量ではないが九頭が一斉に毒を吐いたので部屋中に毒が充満した。
「オニヨンさん、毒に気をつけてください」
「ああ、ヒメジもな」
オニヨンとヒメジは盾で毒を防御していた。しかし、毒に意識していても、二人とも部屋中に充満した毒をいつの間にか吸ってしまった。オニヨンが盾を持ったまま急にその場で仰向けに倒れた。
「オニヨンさん」
ヒメジはオニヨンに声をかけたが、オニヨンからは返事がない。ヒメジは、怒りに震えながらブーメランナイフをヒュドラに向けて思いっきり投げた。しかし、ブーメランナイフは今度もヒュドラの頭の間を通り抜けた。
「くそ、外したか」
ヒメジは戻ってくるブーメランナイフを待っていたら、ブーメランナイフはヒメジに戻る時に偶然ヒュドラの背中に当たった。数秒間毒で苦しんだヒュドラはその場に倒れて消えた。ブーメランナイフがヒメジの手許に戻ると、ヒメジはすぐにオにヨンに近寄り上半身を抱き上げた。
「オニヨンさん、オニヨンさん」
ヒメジは万能薬をカバンからとりだして、オニヨンの口に流し込んだ。しばらくすると、目を開けてオニヨンは、
「どうした、ヒメジ」
と尋ねてきた。
「ヒュドラと戦っているときにオニヨンさんが倒れたので、いま、薬を飲ませたのですよ。
生き返って良かった~」
「私は死んでなんかいないぞ」
「え? だって毒を吸って倒れたではないですか」
「毒を吸ったのは間違いないが、私の足元見てごらん」
「足元になにがあるのですか」
ヒメジは、オニヨンの足元を見ると、
「あっ」
声を上げた。
「な、わかっただろう」
「なあんだ、ドロップアイテムの二十ミリリットルの薬瓶に足を取られてこけたのですね」
「そうだ、そしてそのまま、気を失ったというわけだ。だから死んでなどいない」
「まあ、こうして二人が無事で良かったです」
「そうだな。ところでヒメジは毒を吸ってなんともないのか?」
「え? 私ですか? そういえばなんともないですね」
「ははあ~ん。プロテクトリングだな。そのリングのおかげで毒を吸っても死なない体になっているのだ。よかったな、ヒメジ。お前は無敵だ」
「全然自覚がないです」
「勿体ない。まあ、いい。ヒメジ、次行くよ」
オニヨンは立ち上がると次の扉を開いた。
十三階層は今までの階層より五割ほど広い。手間取っていると徹夜になってしまう。そうなると体力の消耗が激しく、命に関わる。出来るだけ戦闘は短く終わらせ、三つある宝箱を素早く回収して、階層を攻略する必要がある。ヒメジのおかげで二人は最短ルートを歩いて一つ目の宝箱の部屋に到着した。その部屋には宝箱の他に部屋の真ん中になぜか噴水があった。
「宝箱がありますね。オニヨンさんが開けますか?」
「うん、私が開ける。その前に戦闘で汗をかいて喉が渇いていた所なので、この噴水の水はありがたい。いただきまあ~す」
オニヨンは噴水の水を両手でくみ取ろうとした。
「ちょっと待ってください」
ヒメジはあわててそれを制止した。
「なんだ、ヒメジ、この噴水の水に何かあるのか?」
「分かりません。ただ、毒でも入っていれば困りますので、今から水を調べます。少し待ってください。代わりにこれを飲んでください」
ヒメジはオニヨンに水が入った革袋を渡した。
「ヒメジは用心深いな」
オニヨンは革袋を自分に口に運んで水を飲み始めた。その間にヒメジは噴水に体を向けて、
(鑑定 噴水)
心の中で唱えた。
【十三階層の噴水 この階層にあるいくつかの噴水の一つ。この噴水は石化の水が流れており、触れた者を石化してしまう。十三階層の中にある噴水には石化以外にも毒や麻痺の水がある】
(危なかった。鑑定して調べていて良かった)
「オニヨンさん、この噴水の水は……」
ヒメジがオニヨンに話しかけると同時に、オニヨンがヒメジにいたずらで噴水の水を右手ですくってヒメジにかけようとした。
「あっ」
ヒメジが叫んだが遅かった。オニヨンが右手を噴水の水につけるとすぐにオニヨンが右手から石化して、あっという間に全身が石像になってしまった。
「はあ~」
ヒメジは大きなため息をつくとカバンから万能薬を取り出して、オニヨンの形をした石像の頭から薬をかけた。すると、薬がかかった頭部から足元に向かって次第に生身のオニヨンが
現れた。全身の石化が解けるとオニヨンは首をうなだれて、ヒメジに申し訳なさそうな顔をした。
「面目ない」
「オニヨンさん、ちょっと油断しすぎですよ」
「これからは気をつける」
「そうしてください」
ヒメジはこの時ばかりは、オニヨンに年長者としての貫禄を見せつけることが出来た。ただ、だらだらと説教するのはヒメジの性分にはあわないので、短く注意して切り上げると、話題を宝箱に切り替えた。
「それではオニヨンさん、気を取り直して宝箱を開けてください」
それを聞いたオニヨンは、顔をあげて表情が明るくなり、
「まかしておけ」
元気に返事をした。オニヨンが宝箱のふたをもって、開けると金の延べ棒と宝石があった。オニヨンは手を突っ込んで宝箱の中を調べ手が、賢者の剣は見つからなかった。
「またか。いつになったら賢者の剣は見つかるのかな。それともこのダンジョンにはないのかな」
オニヨンは悲しそうな顔になった
「大丈夫です。この階層にはまだあと二つ宝箱がありますから、気を取り直して宝箱の部屋へ行きましょう」
ヒメジはオニヨンを元気づけた。オニヨンは、それに頷きながら、次の部屋に向かう扉を開けた




