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 それから、いくつかの扉を開いてメデューサを倒した。ヒメジは五までは数えたが、面倒くさくなって数えることをやめてしまった。やがて、ある扉まで来ると、

「この次の部屋のモンスターを倒したら、その次の部屋に宝箱が置いています。そして、そこには十二階層へ降りる階段もあります」

ヒメジはオニヨンに声をかけた。

「やっとラストか。戦闘しないでここまで来たので体がなまってしまった。とっとと片付けて十二階層へいこうぜ、ヒメジよ」

「はい、オニヨンさん。気合いを入れていきましょう」

二人は扉を開いて部屋の中に入っていった。先に入ったのはヒメジである。盾を持っているので何も怖くないはずだったのだが、部屋に入ると同時に、ヒメジが床につまずいて転んでしまった。

「ヒメジ大丈夫か」

オニヨンが後ろから転んだヒメジに声をかけた。

「大丈夫です」

ヒメジは顔を上げようとした時に、オニヨンが叫んだ。

「顔を上げるな。下を見ていろ。じゃなかったら蹴っ飛ばすぞ」

それを聞いたヒメジは、うつむいたまま目を閉じた。

(オニヨンさん、怖いよ。どうしてこんな善良なハンサムボーイに罵声を浴びせるのだよ~)

ヒメジはオニヨンに怖がっていると、頭の方から、

「しゅるるる」

いくつかの蛇が舌を出しながら声を発している音が聞こえてきた。どうやら、メデューサがヒメジの頭のすぐ傍に立っている。オニヨンは、ヒメジとメデューサの間に盾を持って割り込もうとした。それに気がついたメデューサはオニヨンに毒蛇の髪を伸ばして攻撃してきた。何匹かの毒蛇がオニヨンの盾に「ドン、ドン」とあたってくる。一匹の攻撃が重たくて、盾にあたる度にオニヨンは後ろへ押されてしまう。そのため思うように前進できないオニヨンはじっと盾を持って攻撃が緩むまでその場で踏ん張った。

「ヒメジ生きているか」

「まだ生きています」

「それなら、今から魔法でメデューサの動きを封じる。お前は両手で頭を守っていろ」

「どうするのですか」

「こうするのさ」

オニヨンは、呪文と唱えるとファイアーボールをメデューサの立っている真上の天井に向かって放った。ファーアーボールが天井にあたると爆発し、岩がいくつか落ちてきた。その一つがメデューサの頭に当たった。

「ゴツン」

大きな音がした後、メデューサの攻撃が緩くなった。

「今だ」

言ってオニヨンはヒメジとメデューサの間に入った。

「よしヒメジ、もう立っても大丈夫だ」

オニヨンから言われたヒメジは、目を開けてゆっくりと立ち上がった。目の前にはオニヨンの背中が見えた。

「ありがとうございます」

「礼は、モンスターを倒してからにしてくれ」

ヒメジも盾を持ってオニヨンの横に並ぶとメデューサの、

「キャー」

声が聞こえてきた。そして、メデューサのドロップアイテムが転がってきた。

「どうやらヒメジの盾に映った自分の顔を見て石化したみたいですね」

「そうだな。それよりヒメジ、私に何か言うことがあるだろう」

「そうでした。オニヨンさん、助けてくれてありがとうございました」

「違うだろう」

「え?」

「美しいオニヨン様だろう」

(面倒くさい、おばさんだな)

「美しいオニヨン様、助けてくれてありがとうございました」

(さあ、言ったぞ。これでいいだろう。糞ばばあ~……。腹立つな~)

「うむ、それでいい。それでは、宝箱を拝みに行きましょうか」

オニヨンは扉を開けて宝箱の部屋に入った。

「あったぞ、どうか賢者の剣が入っていますように。いち、にの、さ~ん」

オニヨンは宝箱を開けた。この宝箱も金の延べ棒と宝石があったが、それ以外のアイテムはなかった。

「え~。まただよ。いいなあヒメジ。それだけお宝が手には入ったから、ハーレム作れるだろう」

「嫌み言わないでください。さあ、元気出して次の階層へ行きましょう。ひょっとすれば次の階層で賢者の剣が見つかるかも知れませんよ」

「仕方ないな。この階層はこれで許しておいてやる」

ヒメジが言うので、オニヨンはその指示に渋々従い、階段に向かって歩き始めた。


 十二階層への階段を降りている時に、ヒメジはオニヨンに話しかけた。

「オニヨンさん、次はコカトリスが出てきます。気をつけてください。それと……」

「どの階層に、どのモンスターがいるのか、どの部屋に宝箱があるのか、何でもお見通しだな、ヒメジ」

「そうです。私は何でも見通せる力を持っているのです」

「それじゃあ、私がヒメジのことをどう思っているのか見通してくれよ。ねえダーリン」

「ダーリンだなんて、ふざけないでください」

「まあ、五十代なのに赤くなっている。結構うぶなのね」

「それは認めます」

「それで、続きは?」

「私は後方からブーメランナイフでコカトリスを倒していきますので、オニヨンさんは盾で防御に専念してください」

「あいよ。でも、私も攻撃したいな」

「コカトリスは近距離戦が危険です。攻撃は下手ですが遠距離攻撃ができる私に任せてください」

「仕方ないな。ヒメジの顔を立ててやるか」

「ところで、私がヒメジのことどう思っているのかな」

「そ、それは……」

「それは」

「そこまではわかるはずがないですよ」

「なあんだ、つまんないな」

「オニヨンさん、勘弁してください」

「仕方ないな」

やはり口ではオニヨンに勝てないヒメジであった。


 十二階に降りて最初のドアを開けるとコカトリスがいた。コカトリスは息を吐いて石化しようとするが二人が持つ大きな盾に防がれて効果が無い。

「やあ!」

のかけ声で盾を左に少しずらしてブーメランナイフを投げたがコカトリスには当たらずにヒメジの所に戻ってきた。それでも、

「やあ!」

何度かヒメジが投げた毒の薬がついたブーメランナイフが、コカトリスの首筋に当たったとたん、コカトリスは毒で苦しんで倒れた。そしてメデューサと同じ石化の薬をドロップした。ヒメジは、してやったりの顔をしたが、オニヨンが厳しい口調で言った。

「何回投げたら気が済むのだ、ヒメジ。バシッと一発で決めなよ」

「そうしたいのは山々なのですが……」

「投げすぎると、肩が筋肉痛になって明日は投げられなくなるぞ」

「はい、がんばります」

「出来るとがんばるとは天と地の差がある。出来るようになれ」

「厳しいな」

「なんか言ったか?」

「いいえ、できるようにします」

「よろしい、では一発で決めなければ、尻を蹴るからな」

(完全にパワハラだ)

オニヨンが次のドアを開けるとそこにもコカトリスがいた。ヒメジは、間髪入れず毒の薬がついたブーメランナイフを投げてコカトリスの腹に当てた。コカトリスは息を吐く前に倒れて石化の薬をドロップした。

「ヒメジ、やれば出来るじゃないか」

(だってオニヨンが怖いもん)

「そうやって倒していけば、蹴られずにすむからな」

(パワハラおばさん)

「次も期待しているからな」

(期待しなくていいから、蹴らないで)

オニヨンは次の扉を開けると、そこにもコカトリスがいた。


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