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 「オニヨンさん、向こうに宝箱があります」

ヒメジが行きかけたときに、オニヨンが止めた。

「ちょっと待て。宝箱の前にモンスターがいるぞ」

「え、どこですか?」

「ほらあそこだ」

オニヨンが人差し指を示した方向にデュラハンが宝箱の前に二体歩いてきた。

「本当だ、二体いますね。デュラハンのようですが馬には乗っていませんね」

「こんな天井が低いダンジョンでは馬には乗れないだろう」

「そうですね狭い空間に馬に乗っていたら頭が天井に当たってしまいますものね」

「ばあ~か、デュラハンは頭がないだろう、ヒメジ」

「済みません、そうでした」

「ヒメジ、投擲用ナイフで援護射撃をしてくれ。その間に私はデュラハンに近づいて攻撃を仕掛ける」

「分かりました」

ヒメジはカバンに手を入れて何本かの投擲用ナイフを取り出すと、デュラハンの方へ投げ始めた。投擲用ナイフを三本投げて全て外したが、四回目に投げた投擲用ナイフがデュラハンの胴体にあたった。しかし、デュラハンの鎧にはじき返されて効果はなかった。それでもヒメジは投擲用ナイフを続けて三本投げた。それも全て外れたが、その間にオニヨンは二体のデュラハンに近づいて一体のデュラハンの胸をショートソードで突いた。ヒメジは投擲用ナイフと同じようにはじき返されるかと思ったが、鎧をショートソードは見事に貫いてデュラハンを倒した。

「やった~! オニヨンさん」

「よし、もう一体も」

そう言うと、オニヨンはデュラハンの胸から剣を引き抜き、もう一体のデュラハンの胸に剣を突き立てた。デュラハンは持っていた剣でオニヨンの剣を振り払おうと左から右に剣を動かしたが、一瞬オニヨンの剣が早くデュラハンの胸を突き刺した。その後、デュラハンの剣がデュラハンの胸を貫いたオニヨンの剣に当たった。その拍子に、オニヨンの剣は二つに折れたが、デュラハンはその場で倒れて動かなくなった。

「オニヨンさん大丈夫ですか?」

「ありゃー、剣が真っ二つに折れてしまった」

「困ったことになりましたね」

「そうでもないよ。予備の剣がまだ残っているから大丈夫だ」

「それを聞いて安心しました。それでは宝箱を開けましょう」

ヒメジが宝箱を開けると、金の延べ棒や宝石があったが、ここも賢者の剣はなかった。

「残念でしたね、オニヨンさん」

「仕方がない。気持ちを切り替えて、次の階層の宝箱に期待しよう」

宝箱はこれで終わりなので、二人は十階層へ降りる階段に向かって歩き始めた。

       

 午前中に九階層を攻略し、午後から十階層に降りた。ここでは九階層よりも更に戦闘回数が多くなり、一回に遭遇するモンスターの数も多くなった。遠距離で数体倒しても、うじゃうじゃとモンスターがやってくる。オニヨンだけでは近接戦闘がまかないきれないので、ヒメジも参加することが多くなった。

「右頼む」

オニヨンがヒメジに言うと、

「ひえ~。怖いよ~」

返事して、ヒメジは嫌々ながらダガーを手に持ち戦闘に参加した。数体のスケルトンが剣をヒメジに振ってくる。ヒメジは右、左、後ろとステップして躱そうとするが、動作が鈍くて、剣が全部当たってしまった。ただ、プロテクトリングのおかげで剣を全てはね返されてスケルトン達は体勢を崩した。その隙に聖水がついたダガーで頭蓋骨や背骨をたたき割った。こうして、ヒメジは何度も叩かれたり斬られたりしながらも、全てのモンスターを倒した。

「終わりましたよ、オニヨンさん。あ、いてててて」

「どうしたのだ、ヒメジ」

「いえ、ダガーを何回も振り回したので、右腕が筋肉痛になって……」

「情けないな~。さあ、先を急ぐぞ」

オニヨンは、ヒメジに背を向けると歩き始めた。

「オニヨンさん、待ってくださいよ。ちょっとは年寄りにいたわりの言葉をかけてくださいよ」

ヒメジは慌ててオニヨンの後を追った。二人がしばらく歩くと、宝箱が置いてある部屋に着いた。

「ヒメジ気をつけろよ」

「オニヨンさん、先に入ってください。私はその後で入ります」

ヒメジは情けないことを言っていたが軽くオニヨンに無視された。オニヨンが先に、ヒメジはその後に部屋の中に入ったが、モンスターはいなかった。オニヨンは宝箱のふたに手をやった。

「十階層、一つ目の宝箱には何が入っているのかな?」

オニヨンが楽しみに開けると、ここでも金の延べ棒と宝石が入っていた。

「なんだ、ここにも賢者の剣はなかったか」

オニヨンはふてくされた声で言った。

「賢者の剣はもっと下の階層にあるのでしょう。気を取り直していきましょう」

ヒメジはオニヨンに声をかけると宝物を回収し始めた。しばらくヒメジが財宝を回収していると、宝箱の一番底に飾りっ気のない指輪を見つけた。ヒメジは鑑定を使って指輪を確認した。

【素早さの指輪 指にはめたときに素早さが倍になる指輪 ……】

(これはいい物を見つけた。オニヨンに持たせるといいだろう)

ヒメジはオニヨンに声をかけた。

「オニヨンさん、よいアイテムを見つけましたよ」

「どんなアイテムなの?」

「素早さの指輪です。オニヨンさんどうぞ」

「ひょっとしてくれるの?」

「私が持っていても、役に立ちませんから。二人が生き残るためにも、オニヨンさんが持っておいた方がいいと思います」

「ヒメジ、ありがとう。うれしいわ」

ヒメジはオニヨンに指輪を渡した。オニヨンはすぐにそれを左手の薬指につけた。

「ヒメジ、見てみて。結婚指輪みたい」

「誰と誰の?」

「もちろん、わかっているくせに」

「オニヨンさんと誰かな」

「しらばっくれて、オニヨンと将来の旦那様とよ」

「将来の旦那様って?」

「まだ見つかっていないの」

(そうだろうな。おばちゃんだから無理じゃないかな)

「ヒメジ、今、私はおばちゃんだから結婚が難しいと思ったでしょう」

「いや思っていません」

「いや、思った顔していたわ。こう見えても私は周りの男性から引っ張りだこなのよ。魅力的で豊満なボディ。神秘的な女の色気。そして、男を骨抜きにする魅惑的な声。世の中の男はすべて私の虜になるのよ」

(どこが『魅力的で豊満なボディ。神秘的な女の色気。そして、男を骨抜きにする魅惑的な声』だよ。『平凡で洗濯板の胸。男勝りの女。そして、男を怖がらせる甲高い声。世の中の男は全て逃げていく』の間違えじゃないのかよ)

「はい、はい」

「何よその態度、失礼しちゃうわね」

「冗談は終わりにして、先に進みませんか?」

「まあいいわ、そうしましょう。でもね……」

オニヨンは何か言いたそうにしていたが、今度はヒメジが素知らぬ顔をして先を歩き始めたのでオニヨンもその後を黙ってついていった。


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