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 「二つ目は女領主となって、領土を拡大していくことだ」

「何ですか、その夢は。まるで大陸の女王にでもなるつもりですか」

「その通り。一国の王になりたいのは男に限った話ではない。女もなれることを証明したいのだ」

「壮大な夢ですね。でもそのためには優秀な人材や兵力が必要ですよ。具体的にどのようにして集めるのですか?」

「ヒメジ、お前、私の家来になれ」

「嫌ですよ。私は風来坊がいいのです」

「いいやだめだ。私が女王になるためにはお前の持っている能力が必要なのだ」

「私の能力と言っても、料理が上手なことと便利なアイテムがいくつかあるだけですよ」

「私の目はごまかすことは出来ないぞ。もっと能力を隠しているだろう」

「能ある鷹は爪を隠すというわけですか。そんなことは全然ありません」

「ヒメジは、まだ隠している。薬作りが上手い。その能力を活かせば、戦ったときに死傷者を減らせる。これは戦争をする者にとってとっても重要なことだ」

「そうなのですか?」

「ああ、だからお前を宮廷治癒士として召し抱える。それから、長生きしているから多少は知恵も回るであろう、有用な人材や兵士の登用は全てお前に任せる。これで、我が国は万全じゃ」

「ご遠慮します」

「どうしてだ。褒美は思いのままだぞ」

「絶対にオニヨンさんにこき使われるから、早死にしてしまうのに決まっています」

「ばれてしまったか。面倒なことはヒメジに任せて楽をしようと思ったのだが……まあいい、どうせ叶わない夢だからな」

「そうですよ。夢は夢として置いておきましょう。ところで三つ目の夢は何ですか?」

ヒメジが尋ねると、年甲斐もなくオニヨンが顔を赤らめた。

「どうしたのですか? 顔を赤くして」

「ヒメジ、私も女だ。一度でいいから綺麗なドレスを着て愛する人と結婚式を挙げたいのだ」

恥じらいながらオニヨンは言った。

「誰かいい人がいるのですか」

「それが、まだいない」

オにヨンは、はにかみながら言った

「それじゃあ、まだ無理ですね」

「だけど、三つの夢の中で一番叶いやすい夢だと思うのだ」

(いや、絶対にオニヨンの性格なら一番難しいと思います。第一、オニヨンさんを好きになる男性がいるかどうかです。サディストの彼女を好きになる人はマゾヒストか彼女の言うことを何でもきいてくれるかなり気の弱い人だけだろう。そんな人滅多にいないぞ)

「そうですね。早く相手が見つかって夢が叶うといいですね」

ヒメジは洗い物が終わって、カバンに食器を片付けていると、オニヨンがヒメジの背中に頭をつけてきた。

「ヒメジ、綺麗なドレスを着た私を見たかったら、私をしっかりサポートしろよ」

「どう言う意味ですか? 別に綺麗なドレスを着たオニヨンさんをみなくてもいいですよ」

それを聞いてオニヨンは頭を上げて、

「デリカシーのない奴だ」

言った後、ヒメジの頭を一発叩いた。

「私は今から寝る。見張り頼んだぞ」

怒った声でオニヨンは横になった。どうしてオニヨンを怒らせたのか分からないヒメジは、しばらくその場で怒らせた理由を考えていたがいくら考えても分からなかったので、考えることをあきらめて、ネットで九階層の地図を覚え始めた。


 翌朝、ヒメジはオニヨンの機嫌をとるために、朝食にオニヨンが大好きなサンドイッチを用意した。

「おお、これはサンドイッチではないか。上手そうだ。いただきま~す」

オニヨンはかぶりつきながら食べている。

「オニヨンさん、おいしいですか?」

「うまい、うまい。ヒメジの料理は旨いが、このサンドイッチは逸品だ」

オニヨンの機嫌が直っていたので、ヒメジは胸をなで下ろした。

「たくさんありますので、いっぱい食べてくださいね」

「ヒメジ、今日は気前がいいな」

「いつもですよ。それに、オニヨンさんに頑張ってもらわなくてはいけませんからね」

「任せておけ。ヒメジも後方支援宜しく頼むな」

「分かりました」

二人は三十分ほどかけて朝食をとると九階層の探索に出発した。


 九階層ではモンスターと戦闘する回数が八階層に比べて多かった。また、複数体で現れるため、遠距離でのボウガンや投擲用ナイフが役に立った。近接戦闘では能力向上薬を飲んだオニヨンの独壇場で、モンスターから一太刀も浴びせられずに戦闘を終わらせていた。

「オニヨンさん、前からスケルトンとグールがやってきます」

「そうだな。約七体か。ヒメジはボウガンで何体か数を減らせてくれ」

「やってみます」

ヒメジはボウガンで聖水のついた矢を発射した。それは、スケルトンに向かって飛んでいった。

(あたったぞ)

ヒメジは思ったが、スケルトンの肋骨の骨と骨の間を通り過ぎていった。

「あれ~。そりゃないよ」

「文句を言わず、撃ちまくれ」

オニヨンにしかられて、ヒメジはボウガンの矢を再度発射した。

「シュー」

音を立てながら跳んでいった矢はグールの胸にあたると、そこからグールは燃え始めた。

「やったぜ!」

ヒメジは喜ぶと、オにヨンは間髪入れず、

「まだ距離がある、打ちまくれ」

叫んだ。ヒメジは、言われるがまま、ボウガンに矢をセットしてはモンスターに向かって矢を三回発射させた。そのうち二回はグールに当たり二体のグールを倒したが、スケルトンには骨と骨の間を通り過ぎてあたらなかった。

「よくやったぞ、ヒメジ。後は私に任しておけ」

オにヨンは近づいてきたスケルトンにショートソードを振りかざすと先頭の一体の頭部を打ち割った。

「さすが、オニヨンさん。あ! 右からスケルトンがやってきますよ」

「心配するな、ヒメジよ」

ヒメジに背を向けながら話したオニヨンは、軽く左側にステップした。すると、右側から攻撃してきたスケルトンが剣を空振りして前のめりになった。その瞬間を狙ってオニヨンは上から下へショートソードを振り落として首の骨を切った。残った二体のスケルトンは一斉にオニヨンに左右から斬りかかったが、オニヨンは二体のスケルトンの間を抜けながら左側のスケルトンの胴体の骨をソートソードで切った。そして、オニヨンはスケルトンの間を抜けるとすぐに振り向きざまに、残った一体のスケルトンの胴体の骨をショートソードでたたき切った。

「オニヨンさん、見事な剣さばきですね」

「そうだろう。まあ、SSS級冒険者になるとこのぐらい朝飯前だ」

「これだけオニヨンさんが強いと、これからのダンジョン攻略がとても心強いです」

「そうだろう。強くて惚れ惚れするだろう」

「ええ、剣の腕前に惚れ惚れします」

「なんだ、そういう意味か」

「どういう意味だと思ったのですか?」

「もちろん私に惚れ惚れしたのかと思ってな」

(あなたに惚れるわけがないですよ。だって怖いですもの)

「いやあ~」

「なんだ、こんな美人女性を目の前にして、何も思わないのか?」

「そういうわけではないですが……」

「まあ、良い。ヒメジをおちょくるのはこれぐらいにして先を進もう」

「もう、オニヨンさん。からかうのはやめてください」

「だって、ヒメジをからかうと面白いものな」

こうして、二人は先を進み、幾度かの戦闘をこなして宝箱の場所までやってきた。


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