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 昼食後に残り半分の六階層を探検した。何本かのロクレン草を採取した時に、近くにある大きな花がもぞもぞと動いた。二人は気のせいかと思っていたが、急に蔓が近づいてヒメジの右足に巻き、こかされてしまった。

「わあ~、オニヨンさん助けて~」

そしてヒメジは花の方へ引きずられていった。オニヨンは、すぐにヒメジに巻き付いた蔓をショートソードで切ったが、別の蔓がオニヨンの剣に巻き付いてきた。

「鬱陶しい蔓だね」

自由になったヒメジはカバンからボウガンをとりだし大きな花に向けて毒の薬がついた矢を放った。

「これでもくらえ」

いつもながら狙いはめちゃくちゃだったが、たまたま大きな花が風で右に動いてくれたので花の中心に当てることができた。花のモンスターのマンイーターがヒメジの放った毒の薬がついた矢を受けてもがき苦しんでいる。やがて倒れると、花をドロップした。マンイーターのドロップした花は食欲増進の薬になる。ヒメジは拾うとカバンに入れた。

「この階はどうやら植物モンスターばかりですね」

ヒメジがオニヨンに話すと、

「そうだな。今までは単体なので比較的戦闘に苦労していないが、複数で不意を突かれると厄介だな」

「おそらくは、七階層は複数で攻撃すると思いますので、ロクレン草はこの階だけにしますね」

「おう、そうしてくれ」

七階層の作戦会議その場で済ませた二人は午後に残りの場所を探索して全部で二百本以上のロクレン草を集めることができた。二人は朝に出発した安全地帯に戻って夕食をとった。そのあと、ヒメジはオニヨンに二十ミリリットルの容器を渡した。

「その容器の中に聖水があります。剣にかけて戦うとアンデッドモンスターを倒せるはずです」

「この透明な液がね」

「そうです。何本か渡しておきますので、無くなったらまた、声をかけてください」

ヒメジはオニヨンに五本、二十ミリリットルの薬瓶を渡した。

「本当にヒメジはすごいな。これで心置きなく八階層を攻略できるぜ」

「その前に七階層をなんとかしましょう」

「そうだな」

その日はヒメジが先に寝た。オニヨンは透明な水をずっと眺めていた。

(ヒメジは薬師の能力もあるのか……。ひょっとして、フォース国とシックスス国との戦争で死者が出なかったのは大量の上等のハイポーションと上等のハイナチュラルポーションがあったおかげだと言われている。もしヒメジがそれを作ったのなら納得がいくが。まさかな、一人では無理だろう)

やがて交代の時刻となりヒメジが見張り番になった。ヒメジの方は、

「明日は八階層までを攻略したい。ネットで地図を見て覚えるぞ」

しばらくネットを見ていると、

「おっと、八階層では隠し部屋があるのか。そこには宝物がある。よし、初めての宝物を手に入れるぞ」

今までの階にも宝物はあったが、すべて空っぽであった。このままではほとんど収入がない。賢者の剣が手に入れられてもヒメジの取り分は無い。このままでは骨折り損のくたびれもうけである。ヒメジは気合い十分で地図を暗記した。やがて夜が明けると、朝食を済ませて三十分で六階層から七階層へ降りていった。

    

 七階層では、ローパー、トレント、マンイーターが複数または混成で行く手を阻んだ。しかし、六階層で戦闘を経験して、他の植物と見分けられるようになり、遠距離からでもわかるようになったため、ヒメジのボウガンが役に立った。二、三体をボウガンの毒の薬がついた矢で倒した後、オニヨンの近接戦で残りの一、二体をショートソードで終わらすことが多くなり、十数回の戦闘でも、危なげなく勝つことができた。そして、午前中には八階層に降りる階段を歩いていた。歩きながら、二人は聖水を武器にかけていた。

「ヒメジの作成した薬の効果を見せてもらうぞ。へなちょこだったら蹴り飛ばすからな」

「それは、やめてください。誠心誠意、心を込めて作りました。いくらオニヨンさんが怖い人でも、意地悪なことはしませんよ」

「ほう~、誰が怖い人だと! こんな美人の女性に向かって。もう一回蹴飛ばされたいようだな」

「ごめんなさい」

(でも、本当に怖いのだもの)

      

 八階層まで降りると、床はレンガで側面と天井は木材で囲まれた坑道のようになっていた。そして、五メートルごとに松明が燃えていた。そのような場所で、最初に遭遇したモンスターはスケルトンだ。三体現れたが、動きが遅くてオニヨンが素早く距離を詰めた。一体を左側頭部に打撃を加え、続いて別の一体に右側頭部に打撃を加えた。そして最後の一体には前頭部に打撃を加え、一瞬で倒してしまった。後には片手剣がドロップしていた。

「すごい、聖水の薬でアンデッドモンスターを倒すことができた!」

「そうでしょう。薬を作成した私を少しは尊敬してください」

「え? なんか言ったか?」

「いや別に何もありません」

ヒメジは声を小さくして、

「おばさんは耳が悪いのか」

独り言を言ったら、

「誰がおばさんだ。美女と言え美女と」

オニヨンが怒ってきた。

「ごめんなさい」

ヒメジは謝りながら、

(オニババア)

悪態を心の中でついていた。進んでいくと、次に現れたのはグールである。

「グール二体だ。ヒメジ戦ってみろ」

「オニヨンさん、怖いよ」

「しっかりしろ」

ここでもヒメジはオニヨンに背中を蹴られてグールの前に出てしまった。ヒメジは聖水の薬がついた投擲用ナイフをグールに投げると、グールの肩に当たった。そのとたん、投擲用ナイフが当たったところからグールは燃え始めて灰になった。もう一体のグールはヒメジめがけて片手剣を下ろしてくる、それを左に動いて躱しながら聖水の薬がついたダガーをグールの腹部に突き倒した。すると腹部から燃え始めて、全身に火が回り灰になった。そして丈夫な布がドロップした。

「やればできるじゃないか、ヒメジ」

「怖いお姉様がいるからです」

「てめえ、誰が怖いのだ、こんなに優しいのに。学習能力が無いな」

思いっきりヒメジはオニヨンにおしりを蹴られた。

「いたたたた。やめてくださいよ」

「反省すればな」

蹴られてヒメジがよろけたところにドアがあった。

「あ、ここです。隠し部屋です」

「隠し部屋と言っても、扉がはっきりと見えるぞ」

「そうですけれど、皆さんここの開け方がわからなくて素通りされた場所です」

「じゃ、どうすれば開けられるのか知っているのかヒメジ?」

「わかります。この扉は偽物で、本物はこの隣にあるのです。ここを押してください」

ヒメジは見えている扉の左側にある石を指さした。オニヨンは両手を使って石を押すと壁が門のように前に動いて人が入れる空間が開いた。二人が中に入ると、前方には宝箱があったが、左右の側面にはリッチが一体ずつ立っていた。そしてファイアーボールの呪文を唱え始めた。

「まずい、攻撃が来るぞ」

オニヨンがヒメジに言うと、ヒメジは急に攻撃されたことで驚いて体が固まった。そして足が動かずに立ちん坊の状態になった。オニヨンは素早く左側にいるリッチに向かって動き、首をショートソードでたたき落としたが、右側にいたリッチは呪文を唱え終えてヒメジにファイアーボールを発射した。見事にその魔法はヒメジに当たり、ヒメジはその場に倒れた。

「くそったれ」

オニヨンは叫びながら右側にいたリッチの首をショートソードでたたき落とした。二体のリッチからスタッフがドロップした。オニヨンはヒメジに近づき、

「大丈夫か、ヒメジ」

声をかけた。

「もうだめかも知れません」

「そんなことはない。お前にはプロテクトリングがあるだろう」

「なんだか体が暑くて、死ぬかも知れません。死ぬ前に一つお願いがあります」

「なんだい」

「『ヒメジさん、怒ってごめんなさい』と言ってください」

「よし、言ってやる……、馬鹿野郎! いつまで寝ているのだ。ファイアーボールの暑さで少しのぼせただけだ。早く起きろ」

オニヨンは寝ているヒメジの腹を軽く叩いた。

「てへ、ばれてしまいましたね」

頭を掻きながらヒメジは立ち上がった。そして二人は宝箱のところへ行きふたを開けた。金の延べ棒や宝石がたくさんあった。すべて、ヒメジのカバンに入れたが、ここには賢者の剣のような財宝はなかった。宝箱があるところはここだけなので九階層へ降りる階段を探しに歩き始めた。そして、十数回戦闘をこなして夕方までには九階層に降りることができた。


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