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 二人は夕食を終えると交代で睡眠をとることにした。今日もオニヨンが先に眠りについた。その間にネットを使って六階層、七階層のマップを覚えていたヒメジであったが、気になっていたことを思い出して薬草の本を取り出した。

(アンデッドモンスターには聖水が効くと言われている。その聖水の代わりの薬を作る草が……。あった、あった、やっぱりロクレン草だ。しかし、私は持っていない。どこに生えているのか調べてみよう)

「ネット ロクレン草」

【ロクレン草 聖水代わりの水を作る。アンデッドモンスターに効果あり。群生地はダンジョンの森林地帯や魔族国に生えているといわれている。ただ、実際に見たものはごく少数である】

(なるほど。ダンジョンの森林地帯ならこの階層で見つけられるな。隅から隅まで探し回るのに一日はつぶれるが八階層からアンデッドモンスターのことを考えると必要だ。オニヨンに頼んでみよう)

やがて交代の時間となった。

「ヒメジ交代だ」

「そんな時間ですか。それではお休みなさい」

ヒメジはすぐにその場所で寝てしまった。オニヨンは八階層からの下の階層のことを考えていた。

(アンデッドモンスターとは戦うすべがない。ヒメジを囮にして先を進もうか? いやだめだ。大切なパートナーだし、うまい料理を用意できるのは彼だけだ。となるとどうすればいいか。あまり私の性格には合わないが逃げ回るしかないか。それも腹がたつ。せめて、一太刀浴びせられたら、逃げることも我慢できるのだが……)

オニヨンはふとヒメジの寝顔を見た。

(おっさんの顔だが、子どもっぽいところがある男だ。それにしてもこの男の使っている毒は上等のハイポイズンポーションのようだ。どこで手に入れたのだ。プロテクトリングもあるし、本人は自覚が無いが最強の防御と攻撃を持つ冒険者だぞ。ひょっとすると、この男なら、アンデッドモンスターに対する攻略方法も用意しているかも知れんな)

オニヨンはヒメジに期待を込めていろいろと考えていた。やがてオニヨンは武器や防具の手入れを始めた。しばらく熱心に行っていると気がついたときには、出発の時刻が近づいてきた。

「おい、時間だ、起きろ」

「あ、おはようございます」

「出発の準備をしろ」

「その前に、一つお願いがあります。今日はこの階層でロクレン草という薬草を採りたいのです。つきあってくれますか?」

「なんだ? そのロクレン草とは?」

「この薬草は、アンデッドモンスターの攻撃に効果のある薬の材料です。この森林地帯に群生しているので手に入れたいのです」

「そういうことなら、今日はそのロクレン草を採りに行こうぜ」

「はい」

ヒメジはにこりと笑って朝食の準備をした。フランスパンに干し肉とトマト、レタス等の野菜を挟んだ簡単なサンドイッチを作ったが、ヒメジが思ったよりもオニヨンには好評だった。

「これは上手い。上手いぞ。どうしてこんな料理が今までなかったのだ。ヒメジ、お前は本当に料理の天才だな」

「いや~。そう言われたら照れるじゃないですか」

「照れていいぞ。私をうならせる料理だからな」

オニヨンはしばらくガツガツと口を動かした後で、

「あ~、おいしかった」

言いながら、指についたソースまでねぶって全て食べ終わった。

「満足していただいて良かったです・

「うむ、それでは出発するぞ」

オニヨンのかけ声で二人は六階層の攻略を始めた。ヒメジには昨日にネットで調べているのでどこにロクレン草の群生があるのかわかっている。そこへまっすぐに向かった。十分ほど歩いたときに、ローパーが突然現れて襲ってきた。蔓を伸ばして攻撃してくる植物のモンスターだ。動きが遅いヒメジは何度も蔓で叩かれているのだが、プロテクトリングのおかげで怪我一つ無い。オニヨンは自慢の素早さで蔓を上下左右に躱しながらローパーに近づき、次々とショートソードでダメージを与えていく。やがてオニヨンが全ての蔓を叩き落とした後で、ヒメジがローパーの幹の部分に毒の薬がついたダガーを刺した。するとローパーは枯れてしまい、ロープをドロップした。ヒメジはロープを回収していると、運良く枯れたローパーのすぐそばに白い花を咲かせているロクレン草を三本見つけた。ヒメジはそれを丁寧に採取するとカバンに入れた。

「おい、ヒメジ。その草がロクレン草なのか?」

オニヨンが尋ねた。

「そうですよ。今日はたくさん手に入れたいので、オニヨンさんも見つけたら教えてください」

「よし、わかった。アンデッドモンスターを攻略するためだ。任せとけ!」

ロクレン草を採取したところからしばらくまっすぐ行くと、やや開けたところに二十本ほどのロクレン草があった。二人で採取して次の場所へ移動しようとしたとき、トレントが一体近づいてきた。木の形をしたモンスターだ。そのモンスターは枝を腕のように伸ばして石をつかみ二人に投げてきた。相変わらずヒメジは避けるのが下手でぶつけられているが、オニヨンは素早く避けて攻撃の体勢に移った。ヒメジは、毒の薬がついた投擲用ナイフをトレントに投げたが、枝ではじき返されてしまった、しかし、たまたま刃先が枝を傷つけたのでトレントは、その傷つけられた枝から枯れ始めた。そして一分後には体全体に毒が回りトレントは倒れて堅くて丈夫で長い木の柱をドロップした。ヒメジは木の柱を回収してオニヨンと一緒にロクレン草を再び探しはじめた。こうして、午前中に六階層の半分を探検して五十本ほどロクレン草を見つけたが、戦闘も十回以上は行った。ただ、六階層ではモンスターが単体で攻撃してくるので、オニヨンとヒメジは反撃しやすかった。

 やがて昼になったので、二人は川が流れている傍で昼食をとることにした。朝食と同じサンドイッチであったが、ミルクと一緒だったのでオニヨンは喜んでいた。ヒメジはその間に寸胴をカバンからとりだし川岸に置き、小さな寸胴に水をくんで大きな寸胴の中に入れた。何度か水を入れると大きな寸胴の中は水で一杯なった。そこで、オール クリエーションを行い、浄化して飲める水にした。その後、ロクレン草を四本採りだして寸胴の中に入れてオール クリエーションを行い、聖水を作った。作った聖水を十八リットルの容器と二十ミリリットルの容器に入れてカバンになおした。ヒメジが作業を終えたとき、オニヨンがヒメジのところにやってきた。

「何しているのだ?」

「あ! 飲める水か確認していました」

「で、飲めそうな水か?」

「濾過したら飲めそうですが、時間がかかりそうなので今回はやめておきます」

「そうなのか。まあ、ヒメジがそう言うのなら間違いは無いだろう」

「信用していただき、誠に光栄でございます」

ヒメジは右手を腹に当てお辞儀した。

「ヒメジよ、くるしゅうない。良きに計らえ」

「承知いたしました」

軽く言葉遊びをした後、二人は笑った

「あ、は、は、は」


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