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 四階層へ降りるとすぐに石像が建っていた。二人がその前を通ろうとしたとたん、石像が持っていた斧槍をヒメジに振り下ろした。見事にヒメジの頭部に当たったが斧槍は刃こぼれした。ヒメジは当たった拍子に驚いて尻餅をついた。

「ヒメジ、生きているだろう、やっちゃいな」

オニヨンの声がすると、ヒメジは、

「嫌だ、怖いよ~」

泣きそうな声で言った。すると、オニヨンがヒメジの尻を重い気いり蹴っ飛ばして、

「情けないことを言うなよ」

怒った。ヒメジはオニヨンの怒った迫力に押されて、

「えい!」

立ち上がると石像の足に毒の薬がついたダガーで傷をつけた。石像と思っていたのはガーゴイルであったが、ヒメジの攻撃で、

「ポン」

音がした後、斧槍を残して消えた。

「急におしりを蹴らないでくださいよ。痛いじゃないですか」

ヒメジが文句を言ったが、オニヨンは、

「いいじゃないか、ヒメジが戦闘で怖がらなくなってもらわなくてはこっちが困るのだよ」

と言って、とりつく島も与えなかった。ヒメジはオニヨンが冷たい女に見えたが、オニヨンにしてみれば、

(情けない男だぜ。私に見る目がなかったのかな。とにかくヒメジにこのぐらいやってもらわなければ、先が思いやられる。二人とも十五階層から生きて戻るためにも、ヒメジがある程度怖がらず戦闘できるようにしたい)

考えてヒメジを鍛えていた。四階層はガーゴイル、サイクロプスが単体で出現したのでオニヨンに怒られながらヒメジ一人でも、なんとか倒すことができた。しかし、五階層になるとトロールとサイクロプスの混成隊や複数体のガーゴイルが出現し、二人で戦闘する場面が多くなった。その頃になるとヒメジは毒の薬がついたダガーや毒の薬がついた投擲用ナイフで嫌々ながらも戦闘に参加するようになった。しかし、心の中では、

(オニヨンのばかやろ~。怖いよ~)

常に思っていた。左右にガーゴイルが立っている場所では、

「ヒメジは右よ。右。あ~こら、逃げるなよ。私は左を倒すわ」

オニヨンが指示すると、ヒメジは嫌々ながら、

「は~い」

怖がりながら返事をした。ガーゴイルは斧槍でヒメジの胸を突いたが、プロテクトリングではね返されバランスを崩す間に、ヒメジはガーゴイルの足下に毒の薬がついたダガーですねのあたりに傷をつけて倒した。一方、オニヨンは斧槍が振りかざして頭に落とされる前に左に躱して心臓あたりにショートソードを突き刺した。刺されたガーゴイルは、

「ポン」

斧槍を残して消えた。オニヨンの怖い? 指示で次第に二人はなんとか連携ができるようになってきた。六階層へ降りる階段がある広場ではサイクロプスが八頭いた。

「ヒメジ、ほら頑張りな」

オニヨンの声援? いや、脅迫をうけて岩陰から毒の薬がついた投擲用ナイフを投げ、一頭の首筋に傷を負わせた。サイクロプスに毒が回り倒れると同時に、他のサイクロプスは棍棒で二人に攻撃を仕掛けてきた。ヒメジはもう一度やってくるサイクロプスの一頭に毒つき投擲用ナイフを投げて左腕に傷を負わせて倒した。

「やりましたよ。オニヨンさん」

「でかした、次は私の番だ」

オニヨンはサイクロプスにめがけて走り出すと、一頭のサイクロプスの前で跳躍しショートソードで首筋に斬り込んだ。その間にヒメジも怖がりながらひょろひょろとかけだし、一頭のサイクロプスに棍棒で叩かれながらも、プロテクトリングに守られて、毒の薬がついたダガーで腹部に傷を負わせて倒した。残りのサイクロプスは四頭になった。

「ヒメジやればできるじゃないか」

「それほどでも」

「それでは私もいいところを見せてやろう」

オニヨンはアイテムボックスからもう一本ショートソードをとりだして、跳躍し左右にいるサイクロプスの首筋を斬って二頭を一瞬で倒した。ヒメジはそれに見とれていると、いつの間にか二頭のサイクロプスが目の前に立っていた。二頭のサイクロプスは仲間をやられた分の復讐とも思えるがごとく、何度もヒメジを叩いた。

「ぎゃ~。怖いよ~。オニヨンさん、助けて~」

ヒメジは体を丸めてプロテクトリングで防いでいたが、そのすきにオニヨンは跳躍して一頭のサイクロプスの後頭部を左右のショートソードで叩いて倒した。それを見た最後の一頭は、オニヨンに向かって棍棒を振り下ろしたが、オニヨンはそれを右に躱して頭部をショートソードで突き刺した。戦闘終了後、オニヨンが、

「ヒメジやれば出来るじゃないか。よく頑張った」

褒めたが、ヒメジはドロップアイテムを拾いながら、

「怖かったよ~」

言うのが精一杯だった。それを見たオニヨンは、

「相変わらず気の小さいやつだな」

からかった。

「それは認めますが、怖いものは怖いのです」

「あ、は、は、は。正直な男は嫌いではないぞ、ヒメジ」

「どういう意味ですか?」

「良きパートナーだと言っておるのだ」

「情けないパートナーだと思っているのでしょう。それはそれでいいです。ところで、オニヨンさんはアイテムボックスを持っているのですね」

「ああ、持っている、しかし、ヒメジのカバンより入る容量が少ない。ショートソード六本と防具三つ持ったら一杯になる」

「そうなのですか。それは誰でも持つことができる能力ですか?」

「いいや、僅かな能力のある人間と召喚された人間ぐらいであろう。入る容量は人によって違うが、両者ともそれほど多く入る容量はないはずだ」

「じゃオニヨンさんは僅かな能力のある人なのですね」

「そうだが、それがどうした」

「いや、すごいなと思って」

「尊敬しているのなら、もっと私を尊敬しろ」

「尊敬はしていません。感心しているのです」

「感心とはなんだ、感心とは。もう少し尊敬しても良いだろう」

(怖いよ~、ここは適当に行っておこう)

「はい、尊敬しております。そして、感心もしております」

「そうか。そうだよな」

(適当に言ったのに納得している。良かった~)

ヒメジは安堵のため息をついた。それを見たオニヨンは、

「今、適当にごまかしてばれなかったから、『良かった~』と思っていただろう」

「そんなことないです。尊敬しています」

「嘘を言ってもバレバレだ。ヒメジの考えることなんかすべてお見通しさ」

突っ込まれたのでヒメジは素直に、

「ごめんなさい」

謝った。

「よし、それでいい。ところで、ドロップアイテムはもう拾ったか?」

「はい、全部拾いました」

「それでは次の階層に行くぞ、前を歩け」

「はい、分かりました」

ヒメジは完全にオニヨンの尻にしかれながら六階層へ向かう階段を降りていった。


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