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 三階層では完全な迷路になっていた。不思議なことに五メートルごとに松明がもえて、周りを明るくしている。ヒメジは不要になったランタンをカバンの中に入れた。五分ほど歩くと二十人ほど冒険者がいる空間に到着した。

「今日はここで野宿にするぞ」

オニヨンはヒメジに言った。

「先には進まないのですか?」

「ここは安全地帯で、滅多にモンスターが来ない場所さ」

「それにしてもたくさんの人がいますね」

「そりゃそうだろう、ここで休息をとらなければ次の安全地帯は六階層までないからな。それより夕食にしようぜ」

「わかりました。少し待ってくださいね」

ヒメジはカバンからピザをとりだした。昨晩、オール クリエーションで作っていた料理の一つだ。

「うひょう~。ヒメジは不思議な人だね。いったいいつこんなものを作ったのだい」

「昨晩です」

「これは何という食べ物かな?」

「私の国でピザといいます」

「へえ、一つ食べてみるよ。いただきます」

オニヨンはピザを手にとって食べ始めた。

「お味はどうですか」

「うまい。うまいよこれ」

「それは良かった」

ヒメジも一口食べた。チーズは牛乳から、生地は小麦粉と塩と酵母から、ソースはトマトと塩と砂糖からつくった。本物の味にはほど遠いが、なかなかの出来栄えであった。

「この上に乗っているのはタマネギとニンジンとジャガイモだな。ヒメジは料理の才能があるな」

「そりゃ焼きたてのピザですから、おいしいこと間違いなしですよ」

「温かい食べ物がダンジョンの中では最大のごちそうだからな」

ヒメジはピザを二切れ食べたが、オニヨンはにこにこしながら六切れのピザを食べてしまった。周りの冒険者はみんなパンと干し肉をつまんでいた。何か言いたそうだったが、誰も二人には話しかけてこなかった。

「おいしかった。ヒメジ、先に寝るか見張りをするかどうする?」

「先に見張りをします。今日はオニヨンさん、戦闘が多くて疲れたでしょうから先に休んでください」

「わかった、じゃよろしく頼む」

オニヨンは横になると、すぐにいびきをかき始めた。

   

 他のパーティーも見張りを残して眠り始めた。起きているのはヒメジを合せて五人だけになった。ヒメジは大陸地図をとりだして広げた。それと同時にネットを出した。そして、大陸地図を見ているふりをしてネットの地図を見た。賢者の剣のダンジョンは十五階層あり、各階層の地図はダンジョンの入り口に広がる市場で売っていたが、高く売買していたので手がでなかった。そのため、ヒメジは六階層までの地図を頭にたたき込もうとした。

「ふう。なかなか覚えられない。若い頃は見たことが写真のように頭に残って忘れなかったのにな」

ヒメジは何度も見返して、一生懸命に覚えた。やがて、オニオンを起こす時刻となったが、覚えることに夢中になり約束の時刻を一時間過ぎてしまった。

「オニヨンさん、起きてください」

「ん? もうそんな時間か。ヒメジ交代だ」

「はい、お休みなさい」

ヒメジを寝かした後、オニオンはアイテムボックスから武器を取り出して布で拭きはじめた。

(思った通りだ。ヒメジは戦闘に使える。またアイテムボックスも持っている。他にも能力を持っているかも知れない。戦士としては物足りないが、使えるだけ使って絶対に賢者の剣を手に入れるぞ)

血糊の付いたショートソードをぴかぴかになるまで布で拭き取った。

(これで明日の戦闘もつかえるぞ)

すべての剣を磨き終わった頃に、ヒメジが起き出した。

「今日の朝食はパンと干し肉でいいですか?」

「ああいいよ。それにミルクもつけてくれるか?」

「はい、いいですよ」

ヒメジは、パンと干し肉と牛乳が入った一リットルの薬瓶をとりだした。牛乳があるだけで食事が豪華になる。周りの冒険者はパンと水で済ませる者が多かった。二人が食べ終わると、ヒメジが片付けて出発した。食事の時に、

「今日は私が先を歩きます。オニヨンさんは後をついてきてください」

ヒメジが言ったので、オニヨンもそれにしたがっている。歩き始めてから十分経つと一匹のトロールが二人の前に立ちはだかった。

「では、オニヨンさんお願いします」

ヒメジは先を譲ったが、

「何言っているのだよ。ヒメジが先に行くと言ったのだから、しっかり戦闘もしてくれよ」

オニヨンはヒメジを蹴飛ばしてトロールの前に出させた。

「ひえ~、オニヨンの鬼、悪魔」

文句を言いながら、ヒメジは震えながら毒の薬がついたダガーをとりだした。その時、トロールの棍棒は正確にヒメジの頭に命中した、はずがトロールはのけぞった。そのすきにヒメジは震えながら緩慢な動きでトロールの足下に移動して毒の薬がついたダガーですねに傷をつけた。トロールは毒が回り、

「ポン」

音がした後、棍棒だけを残して消えてしまった。

「やればできるじゃないか」

「オニヨンさん、何をするのですか」

「悪い、悪い。ヒメジがどれだけ戦闘ができるのか見たくてな。思ったよりは動きは悪いがプロテクトリングのおかげで守りは完璧だな。これなら私の背中は預けられる」

「年齢が年齢ですから、若い人のようには動けませんよ~だ」

「おじさんがひがんでも、何にもないぞ。むしろ見苦しいだけだ」

「ひがんで、ごめんなさいね」

(オニヨンだってもうすぐおばさんになるのだぞ。いや、もうばばあか)

「はい、はい、ヒメジ、ひがむのはそれぐらいにして、先に進もう」

オニヨンに言われてヒメジは先を進んだ。迷路でも道順をしっかり覚えているヒメジは、数回戦闘はあったものの、他のパーティーよりも早く四階層へ降りる階段を見つけることができた。


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