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洞窟に足を踏み入れると、辺りは暗くなっていった。ヒメジがランタンをカバンからとりだしオニヨンは魔法でそれに火をつけた。あたりは明るくなり、視界も五メートル先まで見えるようになった。逆に、モンスターもこちらを発見しやすくなるわけで、早速、ゴブリン三匹と遭遇した。

「ヒメジは下がっていろ」

言い終わらない間に、オニヨンはショートソードを抜いて三匹のゴブリンに斬りかかった。三匹とも胸に一太刀もらうと、

「ポン、ポン、ポン」

消えてしまい、後にはゴブリンの斧だけ三つ残った。

「後はヒメジよろしくね」

「はい! 任せてください」

ヒメジはゴブリンの斧を三つ拾ってカバンに入れた。当然カバンの中にはドロップアイテムを入れるためにブラックボックスを入れている。そのためカバンは軽い。

「さあ、先に進むよ」

オニヨンのかけ声とともに二人は先に進んだ。次は宝箱を見つけたが、さすがにこの場所の宝箱は他の冒険者に開けられているため中は空っぽだった。更に進むとホブゴブリン一匹とゴブリン二匹の混成隊であった。オニヨンは先ほど同じように前に出て、一太刀で倒してしまい、ヒメジはドロップアイテムを拾う係であった。一階層はほぼ一本道で迷うことなく、一時間ほどで二階層へ降りることができた。その間に数回戦闘があったが、オニヨンはモンスターを赤子の手をひねるように簡単に倒してしまった。

 二階層も洞窟で、ところどころで行き止まりの場所があった。いくつかの行き止まりで戻り始めた時に、

「チェ。ここも行き止まりかよ」

オニヨンはぼやき始めた。そして、

「ヒメジ、あんた疫病神が付いているのではないでしょうね?」

「まさか、オニヨンさんの方こそ、たくさん付いているのではないですか?」

「言ったわね。こんな美女に疫病神が付くわけがないでしょう」

「私も、ハンサムボーイには付かないですよ」

言い争いをする始末。しかし、

「ウオー」

モンスターのひと言でそれは終わった。オークが六匹いつの間にか二人を囲んでいた。オニヨンはショートソードを構えたが、一人で六匹全部を相手にすることができない。そのためヒメジも震えながら毒の薬がついたダガーを構えた。オニヨンは三匹のオークをすれ違いざまに剣を左右に振って一瞬で切り倒した。ヒメジは三匹のオークの攻撃を緩慢な動きで左右によけながら毒の薬がついたダガーを一匹のオークの腕に一撃加えた。実際にはオークの攻撃は全部ヒメジにあたっているがプロテクトリングのおかげではじき返され、オークがよろけた。そこへ、ヒメジは毒の薬がついたダガーを無茶苦茶に振って、たまたま一匹のオークの腕に当たっただけだ。毒のためオークは倒れた。残り二匹のオークはオニヨンが三匹のオークを倒した後にヒメジがいる方向へ体を反転させて切りかかり、二匹とも倒してしまった。

「ヒメジ大丈夫だったか? 攻撃全部当てられたように見えたが」

「だ、大丈夫ですよ。うまくよけることが来ました」

「そうか、無事なら良かった」

オニヨンは震えながらドロップアイテムを拾っているヒメジの背中をポンとたたいた。その後、オーク、オーガの混成隊に幾度となく出会いオニヨンの攻撃で撃退することができた。そして、二時間後に三階層へ向かう階段を発見したが、その前を九匹のオーガが立ち阻んでいた。

「ヒメジ、前に出るからちょっと待っていてね」

オニヨンは、にこりと笑うとショートソードを片手に持って走り出した。まずは先頭のオーガの胸を一突きで倒すと、その後ろにいたオーガの腹めがけて剣で斬り裂いた。次のモンスターに斬りかかろうとしたとき、剣は幾多の戦闘で血糊がべっとり付いていた。

「もう、使えないな」

オニヨンは剣を見ながらぼやいた。一方、ヒメジはオニヨンの後方に回り込もうとしたオーガを後ろから毒の薬がついた投擲用ナイフを五本ほど震えながら投げた。幸い、その中の一本が偶然背中に命中した。そして、ナイフの毒がオーガの体を回ると、オーガは倒れた。

「や、やった~。あたった~」

ヒメジは喜んだ。その間にオニヨンは血糊の付いた剣をアイテムボックスの放り込み、新しい剣をとりだすと、目の前からやってくる二匹のオーガの間を走り抜けながら剣を振った。走り抜けた後、胸に斬り傷を受けた二匹のオーガ達は倒れた。残りの四匹のオーガは二匹ずつに分かれてオニヨンとヒメジに向かって攻撃を仕掛けた。一匹のオーガは大きな剣を振りかぶって下ろしたがオニヨンの素早さには適応できていない。これも腹を刺されて倒されてしまった。もう一匹のオーガも、大きな剣で水平に振り回しオニヨンを倒そうとしたが、オニヨンが後ろに跳躍してそれを避けた。そして、ショートソードをオーガの頭にたたき込んで倒してしまった。一方ヒメジは、

「ぎゃ~。怖いよ。オニヨン助けて~」

叫びながらダガーをめちゃくちゃに振り回していた。その間、何度もオーガの大きな剣で叩かれながらも、毒の薬がついたダガーを振り回して偶然に足や腕に傷をつけて、なんとか二匹のオーガを倒すことができた。ここでもプロテクトリングがなければヒメジは三回ほど死んでいたはずだ。

「ふう、怖かった~。なんとか倒すことができました」

ヒメジが苦笑いをしながら言うと、オニヨンが不思議そうな顔で質問した。

「ヒメジ、生きているよな?」

「はい、ほらぴんぴんしているじゃないですか」

「でも、オーガの攻撃が何発も当たっていたぞ」

「そうですか、全部うまくよけたつもりですが」

「おかしいな、ヒメジが避けてもオーガの剣が当たっているはずなのだが……」

「それはもう、かっこよく避けたのですよ」

「……わかった。このリングだ!」

「え?」

「聞いたことがある。プロテクトリングだろう。何だ! そういうことなら、ヒメジも戦いに参加しろ。死ぬことはない」

「へ? 嫌ですよ」

「なんだと、嫌だって言うのかよ」

オニヨンは少しドスのきいた声になった。

「嫌です。怖いですよ」

「意気地無し、それでも男かよ」

「あ~、それジェンダーフリーに反しますよ」

「ダンジョンの中では関係ない。二人の間では、私の言うことが法律だ!」

「そんなのおかしいですよ」

「うるさい、私が決めたことだから覆らない。さあ文句を言うな。次の階層へいくぞ」

「そんなぁ~。鬼、悪魔、オニヨン」

ヒメジがぶつぶつ文句を言っていると、オニヨンが右手に拳骨を作りヒメジに向かって振り上げた。

「うるさい。戦えと言ったら文句言わずに戦え」

「わかりました、分かりましたよ。もう何も文句は言いません。でも次の階層へ行く前にドロップアイテムを拾いましょう」

「おう、わかった、ヒメジ早く拾え」

二人はオーガのドロップアイテムの両手剣を拾って三階層へ降りていった。


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