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いつも読んでくださる皆様ありがとうございます。昨日人気のある作者の読者数を見ましたが、私と三桁ほど違いました。それでも、この作品を読んでいただいている方、ブックマークをつけてくださる方、感想を書いてくださる方がいると思うと嬉しくて、出来るだけ楽しい物語を読んでもらいたいと思っています。物語はまだ始まったばかりです。これからものんびり楽しんでください。
「おはようございます。・・・おはようございます」
ヒメジは冒険者ギルドへ依頼した家の前で元気に叫んだ。
「はい、はい、どちら様ですか?」
声が家の中から聞こえてきた。そして、玄関の扉が開くと腰が曲がった老婆が現れた。
「冒険者ギルドの依頼で参りました。ご依頼の倉庫の扉の修理をいたします」
ヒメジは再び元気に答えると老婆はにこりと笑った。
「元気のいい人じゃ。こちらへ来てくだされ」
ヒメジは老婆の後をついて行くと、家の裏側に木造の小屋があった。
「これじゃ。この倉庫の扉がとれてしまって、直して欲しいができるかのう」
「まず、修理箇所を見せてもらいますね」
ヒメジは扉を調べると、扉と倉庫を接続するちょうつがいの上部、中部、下部の三カ所のうち上部と中部が扉から外れていた。釘は扉についたままであったので、釘を抜いてちょうつがいを固定すれば直せる。
(これなら簡単にできそうだ)
「これは直せますよ。今から作業に取りかかります」
ヒメジは元気に言った。
「そうかい、それじゃ頼みましたよ」
老婆は喜んだ声で言うと家の中に入った。ヒメジは外れている二カ所の扉の釘を右手でかざしてオール クリエーションで外した。オール クリエーションで外した釘は、新品同様になりヒメジの左手に現れた。釘をいったん上着のポケットに入れた。次に、扉を倉庫に立てかけてちょうつがいを上部と中部の扉に合わした。上手く扉に合わせたことを確認すると、ポケットから釘を取り出してオール クリエーションを唱えた。すると二カ所のちょうつがいを釘で取り付けることができた。乱暴に扱っても、取り外せないほど丈夫についている。上手く取り付けられたので、それならついでにと少し緩みかけている下部のちょうつがいも同じ作業で取り付け直した。
「よしできた。ついでに倉庫側のちょうつがいも付け替えをしておこう」
ヒメジは、倉庫の柱側の全ての釘をオール クリエーションで抜いて新しくした。そのため柱から扉は外れたので倉庫に扉を立てかけた。ちょうつがいを見ると随分古くなって赤く錆びている。
「ちょうつがいも新しくしておこうか」
つぶやいたヒメジは、上部のちょうつがいに手を当ててオール クリエーションを唱え新品しにした。中部、下部のちょうつがいも同様に新品にした後、
「よし、倉庫の柱側にちょうつがいを取り付けるぞ」
ヒメジは、倉庫の柱部分に扉を立てて、新しくした釘を使ってオール クリエーションで上部のちょうつがいを取り付けた。続けて中部、下部のちょうつがいもオール クリエーションで取り付けた。
「できた、うまくいった」
自画自賛したヒメジは、何度も扉の開け閉めをして、扉の開き具合を確かめた。上手く動くことを確かめたヒメジは、
「おばあさん、修理しましたよ」
ヒメジは大きな声で老婆を呼んだ。しかし、老婆から返事がなかったので、ヒメジはもう一度大きい声で老婆を呼んだ。
「おばあさん、修理しましたよ」
すると老婆は驚いて家の中から出てきた。
「え? 本当にもう終わったのかい? ずいぶん早いね」
「ええ、終わりましたよ。ほら、扉が動くでしょう」
ヒメジはノブを前後に動かして扉を開けたり閉めたりして見せた。
「本当じゃ」
老婆も同じようにノブに手をやり動かしてみた。
「ありがとう、冒険者さん。以前よりも簡単に開けることができるようになった」
老婆は喜んで何度も動かしていた。
「それは良かったです。それではこの依頼書にサインしてください」
ヒメジが老婆に依頼書を渡した。
「はい、今、書いてきます」
老婆は依頼書を受け取ると家の中でサインを書いてヒメジのところに戻ってきた。
「はい、書類をどうぞ。ところで、お兄さんいい腕をしておるのう。名前を聞いてもいいかのう?」
老婆から依頼書を受け取ると、ヒメジは大きな声で言った。
「私の名前はヒメジです」
「ヒメジさんか。めずらしい名前じゃ。依頼を出したらまたヒメジさん頼むぞ」
老婆に褒められてすっかり有頂天になったヒメジは、今まで以上に声を出して返事した。
「はい、喜んで依頼を引き受けさせていただきます」
周りの住人が何事かと老婆の家の方をのぞき込んだ。その気配を感じた老婆は気まずさを感じて、
「次があるじゃろう。早く行きなされ」
背中を押してヒメジを家から立ち去らせた。
一件目の依頼を終えたヒメジは二件目の家に到着した。場所は受付の女性から地図を渡されているので迷うことがなかった。
「おはようございます。・・・おはようございます」
ここでもまた、ヒメジは元気な声で叫んだ。
「はい、どちら様ですか?」
妊婦の女性が玄関の扉から出てきた。
「冒険者ギルドの依頼で参りました。ご依頼の塀の修理をいたします」
「あら、助かったわ。ご覧の通りすぐ玄関前の右の塀が崩れてしまって、直そうにも今の私ではできないので困っていました。レンガはあそこにあります」
妊婦は玄関の右前にあるレンガの山を指さした。
「また、必要なものはその横に置いてありますので、ご自由に使ってください」
(モルタルの材料も用意されているのなら楽勝だ)
ヒメジはいつも通り元気に答えた。
「お任せください」
「それでは頼みましたよ」
妊婦は家の中に入っていった。材料を崩れた塀のところへ運び、誰も見ていないことを確認してから、
(塀をつくれ)
祈りながら、
「オール クリエーション」
唱えると、崩れた塀は元通りになった。新しい塀ができた代わりに、古いレンガや破損したレンガなどが新しい塀のそばにまとまって置かれていた。
(修理に出たがらくたは廃棄場に捨てることになっていたな。これはアイテムボックスに入れておこう)
ヒメジは全ての作業を終えると、玄関の方を向き大きな声で妊婦を呼んだ。
「できましたよ」
妊婦が慌てて外に出てきた。
「え? 嘘でしょ。もうできたの?」
「はい、直しましたよ。ほら見てください」
妊婦は右手で塀を触るとグイッと押し始めたが塀はびくともしない。
「あら、本当だわ。もう、できたのね。早いわ」
ヒメジが修理にかかった時間が五分も経っていないので、妊婦は口を開けて目をぱちくりさせた。ヒメジはそんな妊婦にはお構いなしに話しかけた。
「それではこの依頼書にサインお願いします」
妊婦は我に返って
「あ、そうでしたね。少しここで待っていてくださいね。それから、残っているレンガやその他の材料欲しければ全部持って帰ってもいいわよ。もう必要ないから」
言いながら家の中に入っていった。それを確認したヒメジは、まだ残っているレンガやモルタルの材料をアイテムボックスへ入れた。全部終わると同時に、妊婦は出てきて依頼書をヒメジに渡した。
「お疲れ様でした? でしょうか。ありがとうございました」
「こちらこそ、何かありましたら依頼を出してください。すぐに直します」
「よろしくお願いするわ」
ヒメジは廃棄場へ歩き始めた。二つ目の依頼の場所から近かったのですぐに到着した。ヒメジはアイテムボックスからがらくたを出して廃棄場に捨てると、三つ目の依頼の場所へ向かった。
三つ目の依頼は薬草採取なので町の外に出た。町には高い城壁に囲まれており、その東西南北の四方に門があり、人の往来は自由である。城兵はいないがシスターの話だと夜になると門を閉めるらしい。ヒメジは南の門から外に出た。外は草原になっており、草が膝の高さまでは生えていた。
「薬草はどれかな?」
ヒメジが薬草を探し始めるが依頼書に描かれている草はどこにも生えていない。十分ばかり探した後でその場に座り込んでしまった。
(疲れた。そういえばお腹も空いてきた。昨晩から何も食べていない。間もなく昼になるから、一度町に戻ってご飯を食べようか)
ヒメジが考え事をしていると、目の前にヒメジのメガネが現れ、目にかかると消えてしまった。そして、
(鑑定)
言葉が頭に浮かんできた。
「よし、鑑定」
ヒメジが唱えると目の前にたくさんの植物の名前が現れた。たくさん現れすぎて何がなにやらわからなくなってきた。
「ああ~ わからない。文字ばかりになり頭が痛いよ。よし試しに イチレン草 鑑定」
唱え直してみた。すると、ぽつぽつとイチレン草が咲いている場所に『イチレン草』と書かれた文字が現れた。ヒメジはイチレン草が広い草原に僅かにしか生えていないので、見つけるのが難しい薬草であることがよくわかった。
「これは便利な能力だ」
鑑定の能力を使えば五本採取することは時間がかからなかった。
「もう少し集めちゃおう。ひょっとしたら何か役に立つかも」
ヒメジは見える範囲のイチレン草を採集した。
「あっちにあった」
一本採集した。
「こっちにもあった」
また一本採集した。
「こっちには二本あった」
すべて取り終えると冒険者ギルドへ納品する五本以外に二十本ほど採集することができた。
(よし、このぐらいでいいだろう。冒険者ギルドへ戻るとしよう)
ヒメジは再び城壁の門をくぐり冒険者ギルドへ向かった。
晴天の昼下がり、老婆と妊婦が道ばたで立ち話をしていた。
「おばあちゃん、倉庫の扉、直ったの?」
「そうなのじゃよ、娘よ。ヒメジという大声を出す中年の男が あっという間に直してしまったのじゃ」
「そうなの。私の家の塀も、中年の男性が来てあっという間に直してしまったわ。お腹の子どももびっくりしていると思うわ」
「お前のところもか? ヒメジという男はできる男かも知れないが、声がでかくていかん。ああいう男は時間と場所を考えて行動していないので友達は作れないタイプだ。つまり空気読めない男、KY男だ」
「おばあちゃん、言い過ぎよ」
「ばかいえ、あやつはお前が思っているほど人づきあいの良い人ではない。少なくても女性にはもてるタイプではない」
「そ、そうかも知れないわね。声が大きくてご近所に迷惑かけていないかとはらはらしたもの」
「そうじゃろう、そうじゃろう。私の目に狂いはない」
「でも、おばあちゃんは相変わらず口が悪いわね」
「まあ、そう言うな。爺さんもヒメジに似てKY男だったからのう」
「じゃ、ヒメジさんはおばあちゃんみたいな気の強い人と結ばれるかも知れないわね」
「ばかもん。私も選ぶ権利があるわい。私は爺さん一筋なのよ」
「はい、はい。おあついこと。ところで、ヒメジさんは人が良さそうな人なのに、おばあちゃんにぼろくそに言われて気の毒な人だわ」
「気の毒なんかあるものか。事実を言っただけだ」
「あらまあ」
妊婦は返事をした時、お腹を触った。
「どうしたのじゃ」
老婆は心配になって声をかけた。
「お腹の子が、今蹴ったの」
「それは、ヒメジがモテない男だと腹の子が返事をしたのじゃ」
「おばあちゃんにとっては、ヒメジさんはよほどモテない男の代表みたいね」
「そうじゃのう。あやつは爺さん以上にモテない男だわ。あ、は、は、は」
「そうかもね。あ、は、は、は」
二人は立ち話をしながら思いっきり笑った。
この第七話は文字数を確認すると四千字以上あって、作者は「よく書いたな」と驚いております。今回は、五十代の頼りない主人公の元気な面を出そうと思い書きました。皆様は主人公のヒメジのイメージをどのようにお持ちでしょうか。第八話以降も主人公の新しい一面を描いて行きたいと思います。




