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 二人とも深夜まで飲んでいたので、翌日は二日酔いになり昼頃まで宿屋で寝ていた。それからショコラは自宅へ帰り、ヒメジは薬屋に足を運んだ。

「こんにちは」

「おう、やっときたか」

「戻ってきましたよ。パッスはどうなっています?」

「それがな、仕事の出来が悪かったから無しだとよ」

「うそだろ~。あれだけ働いたのだから・・・」

ヒメジはその場でへなへなヘなとしゃがみ込んだ。

「嘘だよ。落ち込むな。王様はすごく喜んでいらっしゃった。ほら褒美のパッスだ」

亭主はヒメジにパッスを渡した。ヒメジは立ち上がるとパスを受け取った。

「びっくりしたな。でも、やった~。これで好きな国へ行けるぞ」

「お前さんどこの国へ行きたいのだ?」

「まずはセカンド国へ行きたい。燃える水の話を聞いたから見てみたい」

「なるほど」

「それからサード国やファースト国にもいって見聞を広めたいな」

「じゃ、フォース国から時計回りに移動することになるな」

「へ? そうなのですか?」

「地図を見ていないのか、ほれこれやるぞ」

店主は新聞紙ほどの大きさの地図をヒメジに渡した。

「これは何ですか?」

「大陸の地図だ」

「じゃあ、この地図は?」

以前神父からもらった地図帳を見せた。

「お前さん地図をあまり見ていないだろう。これはフォース国の地図帳」

「そうだったのですね。こりゃ失礼いたしました」

店主は大陸の地図を指した。

「この地図を見てごらん、ここがフォース国で、セカンド国はその隣さ。セカンド国はフィフス国とファースト国に隣接している。ファースト国の隣がサード国さ」

「なるほど、店主の言うとおり時計回りで移動することになっている」

「まあ、気をつけて行ってこいよ。それからお前さん、これを持っていきな」

「これは?」

「我が薬屋協会の会員証さ。どの国へ行っても薬屋にいってこれを見せれば力になってくれるぜ」

店主はヒメジにコピー用紙のB六の大きさの木材で作った会員証を渡した。

「そのようなものがあるのか。ギルド証のようなものですか」

「まあ、そんなものだ。薬屋の結束は固いから、ギルド証よりは使い道があるぜ。効果は使ってからのお楽しみってことでな」

「お楽しみって、店主はいつも私をからかって楽しんでいるじゃありませんか」

「悪い、悪い。面白いからついからかってしまうのだよ。許してくれ」

「一つ聞いてもいいですか?」

「なんだい?」

「フォース国の薬屋はみんな似ている顔をしていましたけれど皆さんご兄弟なのですか?」

「そうだ、王都、西の町、東の町、南の町、北の町は順に長男・次男・三男・四男・五男で五つ子さ」

「五つ子。どおりで顔も性格も似ていると思った」

「そうだろう。薬屋の世界では全員イケメンだと有名だぜ」

「嘘でしょ~」

「お前さん、人をからかうのもうまくなってきたじゃないか。おっと、一つ肝心なことを忘れていたぜ、ほらよ」

店主はヒメジに金貨三十枚を渡した。

「国王から特別報酬だと。誰かさんが作った薬のおかげで、フォース国では死傷者がいない戦争になったお礼にだとよ」

「本当に良かったです。誰も死んで欲しくないですから」

「そうだな」

「それじゃ出発します」

「気をつけて」

「店主さんもお元気で」

ヒメジは薬屋を出た。


 午後三時頃ヒメジは教会へ行った。もう少し早く来たかったが無理矢理薬作りをさせられたり、温泉巡りをしたりしたため尋ねるのが十日ほど遅くなったしまった。

「こんにちは」

「え? ヒメジさん。お久しぶりです。お元気でしたか?」

神父とシスターが出迎えてくれた。

「ええ、神父さんこそお元気でしたか?」

「私らはヒメジさんのおかげでなんとか教会を運営しています」

「あ! そうだ、これ寄付させてもらいます」

ヒメジはカバンから巾着袋を取り出し、中から金貨一枚を神父さんに渡した。

「これは私から教会へのご寄付です。教会の運営のためにお使いください」

「こんなにもですか? いいのですか?」

シスターは目を丸くして言った。

「はい、記憶喪失になって最初に助けてくれたところがここですから、私にとっては一番お世話になったところです」

「それはこちらもおなじです。ヒメジさんの服がなければ私たちも困っているところでした」

神父は申し訳なさそうに話をした

「それでも、寄付は寄付ですから受け取ってください」

「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」

「ところで、修理するところはありませんか?」

「大丈夫です。ヒメジさんが来てくれてから、不思議に寄付が増えてきたのです。最近では戦争で死傷しないようにとお祈りをして寄付をされる方が増えて、礼拝堂は見違えるほど綺麗になりました」

ヒメジが見ても、修理されて綺麗になっていることが分かる。

「それは良かったですね」

「ヒメジさんは私たちにとって、幸運をもたらした人ですよ」

「そう言われると照れてしまいます」

「ところでヒメジさんは、しばらくこの町にいるのですか?」

「いいえ、明日セカンド国に向けて出発します」

「それでは一泊止まっていきませんか。礼拝堂でよろしければ」

「いいのですか? それは願ってもない話です」

「私たちにとっては。ヒメジさんは大切な方ですから、晩ご飯もご一緒にいただきましょう」

「是非お願いいたします。ところで神父様はこっちの方はいかがですか?」

ヒメジはお酒を飲むふりをした。

「大好きです」

「それではとっておきのウイスキーというお酒が手に入りましたのでご一緒にいかがですか?」

「私の大好きなお酒です。お願いします」

「ヒメジさん、あまり飲ませないでくださいね。神父様は、お酒は好きなくせに弱いのですから」

シスターは心配そうな顔で話した。

「分かりました、それでは少しだけにしておきます」

そう言いつつ、神父に小声で、

「一リットルの容器に入ったウイスキーを差し上げますので、シスターに見つからないように飲んでください」

こっそり神父に渡した。神父もそれをシスターに見つからないように、自分のタンスの中に隠した。その日は晩ご飯を挟んでヒメジの冒険話や、シスターの失敗話など楽しい時間を夜遅くまで三人は過ごした。翌朝ヒメジが出発する時に、神父とシスターは教会の前で見送ってくれた。

「ヒメジさん、くれぐれもお体には気をつけてください」

「神父さん、シスターさんも気をつけてくださいね」

ヒメジは教会から出ると定期便乗り場に向かった。セカンド国には北の町から定期便が出ている。ヒメジは北の町に向かう定期便に乗って王都を出発した。


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