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二時間ほどして作業場に戻ると、砂 灰 石灰が再び山のように積まれていた。
「ただいま」
「お帰り。薬瓶一万本できていたぞ。また次よろしくな」
「効率が悪いですね」
「それは大丈夫、別の三カ所の薬屋に頼んで作業場を借りたから、順番にそこに行って薬瓶作ってくれたらいい」
「え~え。移動するのですか。効率重視ですか」
「その通り。この方が早く薬瓶を作れるから効率がいい」
「そんなぁ~。移動するのなんて聞いていないよ~」
「それじゃ頼むぜ」
店主は店に戻った。ヒメジは、
「糞店主、こき使いやがってばかやろう~」
店主の悪態をつきながらオール クリエーションで薬瓶を作成した。作り終わると、今回は店主を呼ばずに店へ行った。
「あの、薬瓶を作ったから次の作業場に行きますが、どこにいけばいいですか?」
「おう! 次はここに行ってくれ」
ヒメジは、地図をもらって二カ所目の作業場所へ行った。そこで薬瓶を作ると三カ所目の作業場に行った。そこでも薬瓶を作ると四カ所目の作業場へ行った。そこでも薬瓶を作ると、糞店主のいる薬屋に戻った。このローテーションで回るのに一時間三十分かかった。その日は、ヒメジも疲れているので二周だけローテーションで薬瓶を作ると宿屋に戻り就寝した。次の日、午前六時から、薬屋巡りを、昼食を挟んで八周行った。そして、その次の日も同じように行い、すべての薬瓶を作り終えた。薬瓶作りで三日かかった。依頼を受けて四日目からは薬作りを行った。百八十リットル入る釜を用意されていた。その中に井戸から水をくみ上げて入れるのが面倒であった。真面目に桶を使って水くみだけで二時間はかかるだろう。ヒメジはブラックボックスを取りだして、
「水よ、入れ」
言って、一旦ブラックボックスに入れると、次に、
「水よ出ろ」
唱えて、釜の中に水を入れた。その後、イチレン草を釜に投入してオール クリエーションをした。できあがった量は二十ミリリットルに直すと九千本分にしかならない。ヒメジは
(効率が悪いな)
思いながら店主に、
「作りましたよ。作った薬を薬瓶に入れてもらわなくては次の薬を作ることができません。どうしたらよいですか?」
ヒメジが言ったら、
「次の店に行け」
店主は笑って言った。やはりそうなるのかと思い薬瓶づくりでまわった次の店に行くとすでに釜には水がくまれていた。イチレン草を釜に投入しオール クリエーションをして回復薬を作った。次の店のところも同じように釜に水が満たされていたので簡単に薬を作ることができた。四店目の薬屋も同様であった。この作業を約九周すると回復薬は作り終えた。翌日は、同じ方法で万能薬を作成した。一週間のところ五日間で終わった。
「終わったぜい。もうくたくた。もう回りたくない」
ヒメジが店主に言うと、
「お疲れさん」
店主がねぎらいの言葉を言った。
「どうしたのですか? 『お疲れさん』なんて優しい言葉をかけてきて。何か魂胆があるのですか?」
「よくわかったな」
「ええ、やっぱり、声をかけてくるなんておかしいと思ったのです。それはどんな魂胆ですか?」
「実はな、薬瓶と薬の追加の依頼が来ているぜ。何でも移動の際に割れた薬瓶があって六万本ほど不足しているそうだ。そこでだ、薬瓶をあと六万本と、薬が各三万本分頼みたいとさ。どうするよ、ヒメジさん?」
「『嫌だ』と断ったら?」
「パッスの件がどうなるだろうな。俺は知らないなあ~。とりあえず国王様にはそう伝えておくけどな」
(糞店主なんちゅうこと言ってくるのだ。まるで脅迫ではないか)
ヒメジは、ふつふつと店主に怒りを湧いてきたが、パッスがなくなると困るので、
「わかりました、『喜んでします』と言ってください」
答えた。
「そう言うと思って手配はしておいた」
店主はしてやったりの顔になった。
「え?」
ヒメジは慌てて作業場へ行くとすでに大量の砂 灰 石灰が置かれていた。ヒメジはその場で、
(糞店主、勘弁してくれ。もう、へとへとで動けない)
気力を無くしてへなへなへなと座り込んでしまった。
後ろから店主がヒメジの様子を見て疲れていると察したのであろう、
「今日は遅いから、続きは明日にしな」
声をかけてきたので、怒りを抑えて言われるとおり宿屋に戻って晩ご飯も食べずに眠ってしまった。六日目に店主に対する怒りを抑えて薬瓶作りを行った。七日目も店主に対する怒りを抑えて回復薬作りをした。次の日も一日中店主に対する怒りを抑えながら万能薬作りを行った。最終日、万能薬を作り終えてヒメジは大声を張り上げた。
「これで終わりだ。もう動けない」
約一週間動き続けて、五十代の年寄り? のヒメジには全身筋肉痛になっていた。目にもクマができており、いつ倒れてもおかしくない程、疲れていた。
「お前さん、情けない顔するな」
店主が声をかけてきたが、
「もう動けない。もう無理だ~」
情けない声を出すヒメジであった。
「まあ、よく頑張ったから、温泉でも行ってこい。この町から北に一日行ったところにあるから」
それを聞いて、お風呂に入るのが大好きなヒメジの目が輝いた。
「え! 温泉! 行く行く」
「定期便が明日出発するから行ってこい。これを北の町の薬屋に渡せば、世話してもらえるぞ」
「温泉、温泉、温泉」
「ほら、手紙を持って行け」
店主から手紙を渡されたヒメジは、店主に対してさっきまで怒っていた気持ちが感謝に変わっていた。
フォース国の国王は使者を待っていた。
「国王様、今、使者が戻ってきました」
家来が国王に報告した。
「すぐに通せ」
「はい」
しばらくすると、シックスス国へ派遣した使者が謁見の広間に入ってきた。
「国王様ただいま戻りました」
「ご苦労だった。で、首尾はいかがだった」
「返事がなく追い返されました」
「やはりの。おつかれだった、下がって休め」
「はは」
使者は部屋を退出した。
「父上、もう限界ですね」
「ショコラか、そうだな。返事がないとなると、そろそろ開戦になるだろう。準備に抜かりはないだろうな」
「はい、いつでも大丈夫です」
「それでは、その方の司令官の大任をまかせる。勝利に導いてくれ」
「父上、お任せください」
ショコラは国王に向かってお辞儀をした。その後謁見の間にいる将軍・隊長等の家来に向かって声を上げた。
「皆の者、シックスス国との開戦だ。英知をふるって我が国を勝利に導こうぞ」
「おう!」
謁見の間に力強い返事が鳴り響いた。一時間後城の一室でショコラを中心に将軍・隊長が集まり戦闘の作戦が立てられていた。
「今から会議を始める。シックスス国は東の山道から進軍してくるであろう。そこで食い止めなくては穀倉地帯に被害がもたらされる。まもなく収穫だから食い止められなければ被害は甚大になるぞ。何か策はないか」
ショコラが会議の口火を切った。ある将軍が
「逆にこちらから侵入すればいいのでは?」
「それでは、侵略されたという大義名分がシックスス国にできてしまう。まず、シックスス国に侵入させなくては」
ショコラは反論した。
「なら、山道で待ち伏せですね」
別の将軍が行った
「そうだな。配置はどうする」
ショコラが聞くと、その将軍は地図上に駒を動かし始めた。
「この布陣なら我が国に入り込んだ敵を包囲できます」
他の将軍・隊長は
「なるほど」
頷く者が多くいた。ショコラも基本的にはその布陣に賛成である。その後も数人の将軍の意見が出ると皆が頷き最後に、
「よし、それで行こう、それと全兵には回復薬と万能薬を一本ずつ持たせる。怪我をしてもそれを飲んで回復し、再び戦闘に復帰させることにより戦線を維持し、敵の消耗を図ることが基本方針である。好機が来たら、騎馬隊長が精鋭の騎馬隊を率いて敵中をかけまわり相手の隊形を混乱させる。そして全軍突撃で国境付近の敵を蹴散らすぞ。皆の者これで良いか」
ショコラが作戦をまとめた。
「賛成」
「異議なし」
の声が上がり作戦会議が終了した。会議が終わり将軍・隊長が解散した後で、ショコラは兵站隊長と衛生隊長に声をかけた。
「今回の戦いで、誰も死なせたくない。味方が倒されたら回復薬と万能薬で手当を行ってくれ。また、敵も倒れていたら、武具を取り上げた上で薬を飲ませて捕虜にしてくれ。戦争が終わって死者がいなければ、シックスス国を統治するときに都合が良い。これはとても重要な作戦だ。よろしく頼むぞ」
二人の隊長は何か言いたそうではあったが、王子様の言うことなので言葉を飲みこんで、
「わかりました」
だけ言った。




