50
いつも愛読ありがとうございます。商業ギルド証の二つ目のクエストです。楽しく読んでください。
ヒメジは薬屋のドアを開けた。
「こんにちは」
「いらっしゃい」
店主がヒメジをにこやかに迎えた。
「店主さんお願いがあります」
「なんだい、願いって」
「商業ギルド証の保証人になって欲しいのです」
「そりゃ無理だ」
「なぜです?」
「お前さんのことあまり知らないからさ」
「そんなこと言わないでくださいよ。薬屋の仲間から私のこと聞いているくせに。それに、前に頼まれていました薬をお持ちしましたよ」
アイテムボックスが通じているカバンから薬を出して店主に渡した。
「確かに上等のハイポーション 上等のイポイズンポーション 上等のハイナチュラルポーション 各十八リットルを三つずつ受け取った。金貨五十四枚だな」
(色をつけると行ったのにな。三日月、キツツキ、嘘つき)
ヒメジは金貨を受け取ると、カバンより巾着袋を取り出し金貨を入れて、再び巾着袋をカバンに入れた。
「ちゃんと約束を守りましたよ。これで、保証人になってください」
「信用できる人間だとは、これで確認できたが、保証人はちょっとまて。頼みたいことがある」
(ほらきた。薬屋の店主は必ず何か注文をつけてくるからな)
「北に半日行ったところにダンジョンがある。そこにしか生えない新月草を採取してきて欲しい。本数は五本だ」
(やっぱり)
「ダンジョンって、モンスターがいるところですよね」
「ああ、いるさ。しかし二階層しかないし、初心者用のダンジョンだから、お前さんでも大丈夫だろう。新月草はダンジョンの地下二階層にあるからよろしくな」
「いくとは、まだ・・・」
「保証人は? 嫌なら行かなくてもいいのだよ。こちらは全然困らないから」
「いきます。いきゃいいのでしょう。本当に人の足元を見てくる」
「そう、そう、素直でよろしい」
「行くまえにいくつか質問をしてもいいですか?」
「いいぜ、聞きたいことはなんだ?」
「戦闘レベルが低くても大丈夫なのですか? 私は初心者でも戦闘レベルはかなり低いですよ」
「スライムやゴブリンがいるだけのダンジョンだから多分大丈夫だと思うが、そんなに弱いのか」
「ええ、はっきり言って弱いです。スライムといい勝負ですよ」
「えらい自信を持って弱いと言い切るな。面白い方だ。まあいい、スライムと戦えるなら大丈夫だ。G級冒険者でも戻っているからな」
(この店主。人ごとだと思っていい加減なことを言ってやがる。何が大丈夫だよ。全然大丈夫じゃない。私はE級冒険者だが、戦闘に関してはZ級冒険者だ!)
ヒメジは少し亭主に腹を立てたが、文句を言いたいことをぐっと飲み込んで次の質問を店主にした。
「それでは、次にダンジョンではトラップがあるのですか?」
「知らん」
「知らないって、どういうことですか?」
「入ったことがないから知らんと言っているのだ」
(てめえ、一回ぶん殴ってやろうか。こっちは命がけでダンジョンへ行くのに、きちんとした情報を教えろよ。それを入ったことがないから知らないだと、けんか売っているのか)
ヒメジは、次第にヒートアップしてきたが、それでも言葉を飲み込んで次の質問をした。
「最後の質問ですが、ダンジョンと言えば宝箱ですが、そのダンジョンにも宝箱はあるのですか?」
「ある」
「やった~。宝物を手に入れるぞ」
「喜んでいるところ水を差す話をするが、宝箱はあっても宝物はないだろうな」
「どうしてですか? 宝箱があるのでしょう」
「簡単なダンジョンだから、他の冒険者が宝箱の中にある宝物を取っているだろう。だから、宝箱はあっても宝物はない」
「え~。そんな~」
「でも、心配するな。他の冒険者に見つかっていない宝箱があれば宝物が期待できるぞ」
「そんな宝物があるのですか?」
「知らん」
「また、また。人をからかっているのですか? 知らないって」
「ああ、からかっているわけではないが、見つかっていない宝箱がないから、『あれば』と仮定形で言っただけだ」
(この店主、絶対私をからかっている。馬鹿野郎。一回死んじまえ。お前のおなかはデベソ・・・)
ヒメジは、ありとあらゆる罵詈雑言を心の中で吐いた後、笑顔で店主に聞いた。
「ダンジョンに行くまでの道のりを教えてください」
「それならこれを持って行け」
店主は東の町からダンジョンまでの地図を取りだしてヒメジに渡した。ヒメジは店主からそれを受け取ると、何も言わずに店を出た。
「よろしく頼むぞ」
店主の声がヒメジの後ろから聞こえてきたがもうすでに、独り言で
「糞店主」
「馬鹿野郎」
「保証人になってもらわなかったら、ぜ~ったい薬作りを引き受けないぞ」
薬屋の店主の悪口を宿屋に戻るまで言いまくっていた。
翌日はダンジョンに向けて早朝から出発した。ダンジョンまでの道中はトラブルに遭うことなく順調に進めた。それどころか、時間的にところどころで薬草採取を行うだけの余裕もあった。
「あそこにサンレン草、ここにはゴレン草」
などと鑑定しながらたくさんの薬草を採取することができた。やがて、ダンジョンが見えてきた。入り口は単なる洞穴である。ヒメジは入り口でダガーを装備した。また投擲用ナイフも数本ベルトに刺していつでも投げられるように準備した。
「いざ出陣」
気合いを入れてダンジョンに一歩足を入れるがすぐに引っ込めた。
「こわいよ~。入りたくないよ~。でも保証人が・・・」
ダンジョンの入り口でしばらく立ちすくんでいたが、覚悟を決めておそるおそる中へ入っていった。ダンジョンの中は洞穴ではあるが、松明が十メートル間隔で灯されている。そのため、ヒメジはカンテラを持たなくても遠くまで見通すことが出来た。しかし、ヒメジはモンスターに遭遇したくないので震えながらゆっくりと周りに気を配りながら歩いた。モンスターはダンジョンの壁から出現するのだが、いっこうに出てこない。
(あれ、モンスターがいない。どうしてだろう。よしネットで調べよう)
「ネット 新月草ダンジョン」
唱えると、新月草ダンジョンの地図が現れた。
(入ったところをそのまま降りていくと地下一階層になる。何だ、そこからモンスターが現れるのか)
洞窟のダンジョンの地下一階層の地図上に赤く塗られた三角形の印がいくつか動いている。
(赤い印がおそらくモンスターだ。これに会わないように、逃げ回って緑の点に進もう。緑の点がおそらく宝箱だ。自分の印はこの青い三角形の印だな)
ヒメジは、今自分がいる場所はモンスターが出てこないことが分かると安心した。そして、
ネットの地図を見ながら足取りも軽く地下一階層まで降りた。しかし、地下一階層まで降りると、ヒメジはネットの地図にしがみついて自分とモンスターの位置を確認しながら、会わないように避けていった。ダンジョン自身はそれほど大きくなく複雑でもないので、ものの二十分もあれば回りきれるが、ヒメジはモンスターを避けながら歩いていたので遠回りになり、十分かかって最初の宝箱の場所に着いた。ヒメジは喜んで開けようと近づいたが、もうすでに空いており、中は空っぽであった。
(やっぱり店主が言っていたように、先に来た冒険者がとっていったのだ。仕方ない、まだ、あと三つ緑の印があるからそこへ行こう)
ヒメジは気を取り直して、再びダンジョンを歩き始めた。やがて二つ目の宝箱を見つけたがそれも空だった。
(これも空、あと二つある)
三つ目の宝箱のある場所に行ったが、そこも空。そして四つ目も空だった。
(仕方ないよな。初心者のダンジョンだから、ほかの冒険者が先にとってしまって無くても当たり前か。さあ本命の地下二階層へ行こう)
いかがでしたか? 一人でダンジョンに挑戦の回ですがこれからどうなるのか楽しみにしてください。




