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いつも愛読ありがとうございます。今回はちょっと格好いい主人公になってしまいました。楽しんで読んでください。
「こんにちは、誰かいますか? こんにちは、誰かいますか?」
何度かたたいた後、中からおそるおそる老婆が顔を出した。
「だれじゃ、もうこの村には食料など無いぞ」
怒鳴り声を出した。
「私は、東の町から宿屋の店主に頼まれてこの村を見に来たものです。何があったのですか?」
「お前さん、本当に東の宿屋の店主の知り合いか?」
ヒメジは、大きく頷いた。
「東の宿屋の店主は私の息子だが、お前さん本当に息子に様子を見てきてくれと頼まれたのか?」
「そうです。今、店がかき入れ時なので自分では見に来られないからとの理由でお願いされました」
「そうか、それなら話そう。実は、三日ほど前にシックスス国の連中が食糧調達だと言って、すべての食料を奪っていきよった。また、収穫前の小麦も根こそぎ持って行きよって、村には麦一粒も残っていない。男連中は、戦争の準備をするためといって全員連れて行かれたよ」
「皆さんはこの村から東の町へ避難しないのですか?」
「それはできない。どこに行っても助けてもらえる人がいない」
「お子さんのところでも避難すればいいでしょう」
「私だけならな。しかし村人全員となると無理じゃ、それに食料がない。もう村人は三日間も食べておらん。みんな空腹で体が動かない」
「それは私がなんとかします。とりあえず、町から持ってきた食料を食べてください」
ヒメジは食料をカバンから取り出し机に置いた。
「それから、私は、たくさん小麦粉と塩を持っています。パン酵母はありますか?」
「それなら、どの家にでも置いているじゃろう」
「では、皆さんに小麦粉と塩を渡しますのでパンや小麦粉の料理を作ってもらいます。それでしばらくは空腹がしのげるでしょう。皆さんに配布したいのでおばあさん、家を一緒にまわってください」
「いいじゃろう。しかし、カバンしか無いのに、村中に小麦粉と塩を配布できるのか?」
「このカバンはマジックバッグになっています。たくさん物が入るのです」
ヒメジはアイテムボックスを知られたくなかったのでごまかした。
「そうか。それならついてこい」
ヒメジは老婆の後をついて一軒一軒家をまわり、食料と小麦粉二十キログラム一袋、コップ一杯の塩をカバンから取り出し家に置いていった。そして、ヒメジは村人にこの村から避難するように声をかけた。しかし、村の人全員、
「やっぱり東の町には行けない」
「どうしてですか?」
「男連中が戻ったときに誰もいなければ困るだろう」
「でも、皆さんの命が危険にさらされますよ。いつまたシックスス国がやってくるかわかりません」
「そうかも知れないが、帰ってくる人がいるし、私はこの村で育っているから、この村が恋しい」
村を出ようとはしなかった。
ヒメジは肩を落としながら老婆と一緒に老婆の家に戻ってきた。
「村人はみな腹をくくっているようじゃ。お前さんが、町へ行って助けを呼んできてもらえるかの?」
老婆はヒメジに行った
「わかりました、町に行ってきます」
「今日はもう遅い、この家に泊まって明日の早朝に出発しなされ」
「いいのですか」
「ああ、食料を分けてくれたお礼じゃ」
「ありがとうございます」
ヒメジはひと晩泊めてもらうことにした。老婆は小麦粉を使って簡単な料理を作った。そしてヒメジが持ってきた食料と一緒に老婆と食べた。食事をしていると、いい匂いがしてきた。
「何の匂いですか?」
ヒメジは老婆に尋ねた。
「それぞれの家でパンが焼き上がったのじゃ。村中久しぶりにおいしい晩ご飯が食べられる。みんなきっと喜んでいるだろう」
「良かった。これで村人が飢えをしのぐことができて私も安心しました」
ヒメジは胸をなぜおろした。その時、ドアをたたく音がした。老婆は、
「誰じゃ」
外に呼びかけた。鎧を着た兵隊がドアの前に立っていた。
「フォース国の者です。畑がひどい有様でしたので様子を伺いに来ました」
老婆はドアを開けると、兵隊に三日前にシックスス国がやってきて食料を奪ったことを伝えた。
「なるほど。そうでしたか。しかし、もう安心してください。シックスス国に通じる道はこの先で閉鎖します。私たちがいいと言うまではこの村から東には行かないでください」
「わかりました。それから、村の男たちがシックスス国の者に連れて行かれました。助けてください」
「それも大丈夫です。私たちがなんとかします。ところで我々がここに来たことは秘密にしてください。いいですね」
「わかりました」
「それでは、これで失礼します」
フォース国の兵隊たち百名は東に向かっていった。ヒメジは窓からそれを見た。玄関から老婆が戻ってくると、ヒメジの顔を見て笑顔で行った。
「お前さんの助けがいらなくなったようだ。兵隊のおかげでしばらくはここで過ごせるようじゃ」
「戦争でも始まるのですかね」
「そうだろうな。でも、きっとフォース国の兵隊が守ってくれるだろう」
「そうでしょうね。きっと大丈夫でしょうね」
ヒメジはそう答えつつ、
(本当にそうだろうか。戦力的には五分五分。どちらが勝ってもおかしくない)
不安に思っていた。しかし、ヒメジ一人がじたばたしても始まらない。ヒメジは、自分のすべきことをやるだけであった。アイテムボックスが通じているカバンから次々と小麦粉の袋と塩を取り出して老婆の家に山のように置いた。
「これを皆さんと分けて、しばらく過ごしてください」
「すまないのう。その小麦と塩は商売物だろう。悪いねえ。これを持って息子に渡して欲しい。手紙じゃ。お前さんには感謝しているからよくしてくれと書いておる。必ず渡せや。それから、この村を少し西に行ったところの山林の中に開けたところがある。それを北に行くと鉱山がある。何の鉱山かは知らないが、良かったら行ってみな。ひょっとしたら、お前さんの役に立つかも知れない」
「ありがとう。おばあさん」
「お前さん、明日は早いのだろう。もしわしが寝ていても気にしないで出発してくれよな」
「お気遣いありがとうございます」
ヒメジは老婆のお礼を言って横になった。
翌日は老婆が言うとおり、村中が寝静まっている間にヒメジは旅だった。ヒメジが老婆の家の扉を閉めた時、
「ありがとう」
老婆が寝床でつぶやいた。刈り取られた麦畑の間を通り、山林に入ると野党やモンスターに襲われないように鑑定を使って用心深く進んだ。やがて、山林の中に開けた場所が見えてきた。
「よし、ここから北に向かって歩くぞ」
ヒメジは急いで老婆が言っていた鉱山へ向かった。三十分ほど歩くが山林から抜け出せなかった。
「おばあさん、勘違いしていたのかな?」
ヒメジは不安になってきた。それから十分ほど歩くと、木と木の間から開けた場所を見つけた。
「やったー。みつけたぞ!」
急いで開けたところまで走って行くと、あちらこちらに黒色で金属光沢のある鉱物が転がっていた。見たこともないものなので、ヒメジは鑑定の能力を使った。
【クロム鉱石】
(クロム鉱石? わからない。ネットで調べよう)
「クロム鉱石」
【クロム鉱石 クロムが主成分の鉱物 クロムは鉄と合せてステンレスを作る材料】
(元の世界で台所のシンクなどに使われていたステンレスか。便利だからいくつか持って行こう。)
「アイテムボックス クロム鉱石 入れ」
一瞬のうちに、転がっているクロム鉱石が入っていった。これだけ入れば十分だ、急いで東の町へ戻ろう。ヒメジは山林を抜け、小麦畑の広がる道を通って夕方には東の町の宿舎に到着した。
「亭主、戻りました」
「おうい、どうだった?」
「お母さんから手紙を預かっていますよ」
ヒメジは亭主に手紙を渡した。店主はすぐに封を切ると、手紙を読み始めた。そして読み終わるとヒメジに話しかけた。
「ヒメジさん、母親によくしてくれてありがとう」
「とんでもない、亭主によくしてもらったお返しですよ」
「それにしても、村ではいろいろあったのだろう。教えてくれよ」
店主が聞いてきたのでヒメジが知る限りのことは話をした。
「そうかい。戦争になる可能性があるのか」
「これは内緒の話だからね。秘密にしてくださいよ」
「わかっているよ。詳しく教えてくれてありがとう。ほら、サインするから商業ギルド証の書類をだしな」
ヒメジはカバンから商業ギルド証を出して亭主に渡した。亭主はサインすると商業ギルド証の書類をヒメジに渡した。
「もう一人の保証人は誰にするのだい?」
「薬屋の店主です」
「あの人か。保証人になってくれるかな?」
「なってもらわなかったら困ります」
「そうだな。しかし、彼は私より気むずかしいからな。何か頼まれるぞ」
「覚悟はしていますよ。それでは今から行ってきます」
「ああ、頑張りな」
亭主の声援を受けて、ヒメジは薬屋に行った。
いかがでしたか? 人助けの回になりました。商人が何の利益もないのに商売物の小麦粉を気っぷ良く配ることなんて普通は考えられませんよね。まあ、主人公は商業ギルド証のためにやってということでご理解ください。




