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いつも愛読ありがとうございます。今回はショコラが活躍します。楽しんで読んでください。
夕方となりヒメジは宿屋に戻ると井戸でアイテムボックスに入っていた三つの寸胴を取り出して水を入れた。
「あの薬屋の店主に持って行く薬を作らなきゃ。商売人は信用が一番だからな。しかし、いまいち、薬屋の店主は信用できないな。本当に色をつけてくれるのかな」
ヒメジは、ぶつぶつつぶやきながら、アイテムボックスに水を入れた寸胴をしまい自分の部屋に戻った。部屋に入ると、
「薬屋の店主が泣いて喜ぶ薬を今から作るぞ」
そう言ってヒメジはアイテムボックスから水の入った寸胴を三つ取りだして、イチレン草、二レン草、ゴレン草をそれぞれの寸胴に四本ずついれた。そして一つの寸胴に両手をかざして、
「オール クリエーション」
唱えて回復薬を作った。同様に毒薬と蘇生薬を作ると、
「くたびれた」
ヒメジはぼやいた。朝からハイテンションだったので、薬を作ったとたん急にエネルギー切れを起こしたようだ。しばらくヒメジは放心状態になり、作った薬を眺めていた。
「薬屋の店主が喜ぶ薬を作ったが、十八リットルの薬瓶に入れるのが面倒臭い。だいたい薬屋の店主は、人使いが荒い。もう少し大事に扱ってもらえないかな。これでも、いい年なのだよ。年寄りはいたわらなくてはいけないのに、こき使いやがって」
店主は全然悪くないのに、つい愚痴を言ってしまうヒメジであった。
「文句を言っても仕方ない。十八リットルの薬瓶に入れようか。どっこいしょっと」
ヒメジは、U字管を使って作った薬を十八リットルの薬瓶に入れた。入れながらも、
「面倒臭い」
「鬱陶しい」
「店主の馬鹿野郎」
文句を言っていたが、入れ終わると、部屋の床に座り込んで薬瓶を見つめた。全部で回復薬が四つ、毒薬が四つ、蘇生薬が四つずつ十八リットルの薬瓶が並んでいる。五分ほど眺めて、
「これでOK、今日はもう何も作業しないぞ~」
ヒメジはごねながらアイテムボックスに道具をすべていれた。その後すぐにベッドに横になると目をつぶった。ヒメジはこのまま寝てやろうと思ったが、冒険者ギルド長の話を思い出して、フォース国とシックスス国の関係が気になった。
「よし、ネットで調べよう」
ヒメジは、
「ネット」
唱えて、
「フォース国とシックスス国の関係」
口頭入力を行った。
【フォース国とシックスス国の関係 最悪の関係。使者をフォース国からシックスス国へ二度送ったが二度とも無視された。三度目の使者を送る予定ではあるが、無視をされたら開戦もやむなしの声がある。すでに両軍は東の町の東側にある国境付近に大軍を集結させている。ただ、フォース国は、穀倉地帯の収穫時期前には戦端を開きたくない模様。フィフス国は静観中】
それを読み終わると、ヒメジは起き上がってベッドに座りながら考えた。
(なるほどな、フォース国は収穫前に戦端を開きたくないだろうな。フィフス国の動向が鍵になるな。ひょっとしてシックスス国と内密に同盟関係を結んでいないのか気になる)
「ネット フィフス国」
【フィフス国 国王制 国王・・・中略・・・フォース国とシックスス国との関係には静観している。現在の国王は老いて体が弱っている。そのため、内政を行うだけで精一杯で外交面まで目が向けられていない状況】
(そうか、外交面まで目が向けられていないのか。それじゃ、シックスス国と同盟が結ばれることはないな。それより老いている国王が死んだらどうなるのだろう。誰か後継者がいるのかな・・・。まあ、他の国のことはどうでもいいや。ついでに自分のことを調べよう)
「ネット ヒメジ」
【ヒメジ 異世界召喚されたうだつの上がらない 五十代男性・・・後略・・・】
「何だと、このハンサムボーイに対して、うだつの上がらないだと。糞・糞・糞」
ヒメジは座っていたベッドから立ち上がって地団駄をふんだが、書かれていることが訂正できないのでどうすることもできない。腹立たしく思いながらもお腹が空いてきたので食堂へ向かった。
食堂では、もうすでにショコラがビールを飲んでいた。
「お早い登場ですね」
ショコラはヒメジをからかった。
「ショコラさんの方がもうできあがっているじゃないですか」
女性が注文を取りに来た。
「ビールと野菜料理」
ヒメジが答えるとすかさずショコラが、
「いよ、草食系」
と茶化してきた。確かにヒメジは女性には奥手で草食系ではある。それに文句を言おうとしたところ、隣の席から二人に声をかけてくる男がいた。
「お二人さんに良い話をもってきたけど聞くかい」
「なんだい、お兄さん」
ショコラが答えた。
「いい小麦があるのだ。損はさせないよ」
「へえ、どんな小麦だい」
「これさ」
男は懐から布袋を出すと、その中から人差し指と親指で白い粉をつまみ出した。
「どうだい見てみな。いい小麦粉だろう」
「いいねえ。でいくらだい?」
「二十キログラム銅貨一枚だ」
「安いね」
「そうだろう」
「でも、そんな値段じゃ、もうけなんて無いだろう。むしろ赤字じゃないか?」
「いいのだって。みんなに喜んで欲しいから負けているのだよ」
「それじゃ、あるだけいただこうか。しかし、こんなところじゃ店の邪魔になるから、この町の警備本部に持ってきてくれるか。警備隊に知り合いがいるので、確認してから受け取るようにいっておくから」
「いや、こちらもそんな人手はない。東の倉庫、猫ハウスに千袋ほど置いてあるからそちらで持って行ってくれ」
「駄目だ、この話無かったことにしてくれ」
ショコラはきっぱり断った。
「いいのだな、こんなうまい話なんて二度と無いぞ」
「店を持っていない商人が一般の人に商売をするときには商業ギルド証が必要だ。それを持っているか?」
「うぐ」
ショコラはビールを一口飲んでから、強い口調で言った。
「無いだろうな。普通はこのような商売の話をするときには商業ギルド証の提示をしてからすることは常識だ」
再びビールを口に入れると、今度は穏やかに言った。
「闇販売は禁止されている。今日は見逃してやるから二度とするなよ」
男の顔がだんだん赤くなってきたが、ショコラが冒険者の格好をしているので腕力には勝てないと悟り、
「今日はこのぐらいでゆるしてやるわ」
お決まりの台詞を言って立ち去った。
「ショコラさんお見事ですね」
「ヒメジさんが以前だまされたと聞きまして。同じ手口なので少しからかってやりました」
「やっつけてくれて愉快です」
「それは良かったです。それでも、商業ギルド証はもっておいた方がいいですよ。無いと、店の商売人としか交渉できません。一般の人に売るときには商業ギルド証が必要になります。商売をするときの信用の証となります」
「どうすれば商業ギルド証を手に入れられるのですか?」
「簡単です。商業ギルドで発行してもらえればいいのです。しかし、保証人が二人必要になります」
「じゃあ、ショコラさんなってください」
「私は無理です。保証人になるには店を持っているのが条件です」
「店を持っている人か・・・」
ヒメジは当たりを見渡した。すると、宿屋の店主が目に入った。
「よし、いい人を見つけた。一人はここの宿屋の店主さんに頼むとしましょう」
「そうだね、それがいいと思うよ。それでもう一人は誰にするのだい」
「う~んと、誰がいるかな・・・」
ヒメジは腕を組みながら目をつぶって店を持っている人を考えた。そして一人心当たりをみつけると目を開けて叫んだ。
「みつけた」
「誰だい?」
「いつも贔屓にしてもらっている薬屋の糞店主がいる。その人に頼んでみます」
「あ、は、は、は、糞店主ってことは、その店主にずいぶんこき使われているのだね」
「いやこの町のだけでなく、全部の町の薬屋の店主にですよ」
「こりゃいいや。あ、は、は、は。どんな薬屋だい?」
「薬瓶と薬草の書いた看板のある薬屋です」
「ああ、あの薬屋か。厳つい親父のいる」
「そうそう、その店」
「でも、その店の店主なら信用できそうな人物だな」
「ああ、信用はできますよ。薬の価格も良心的ですが、人使いは荒いです」
「そうなのか。ヒメジさんがそこまで言うのならそうだろうね」
ショコラは笑いながらそう言った後、独り言で、
「薬屋ね」
そう言うとショコラは少し考えてから急に立ち上がった。
「ちょっと用事ができたから外出するわ。しばらく会えないかも知れないけれど、またヒメジさんに会いに行くから心配しないで」
そう言って、ショコラは宿屋から飛び出ていった。
いかがでしたか? ヒメジは全然活躍していないので本当に主人公なのか、と思われるかも知れませんね。五十代の気の弱い男性ですから痛快な活躍はあまり出来ないのです。しかし、これから頑張りますので楽しみにしてください。




