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いつも愛読ありがとうございます。野盗の襲撃事件も終わって、のびのび旅をしている主人公です。のんびりほのぼのと読んでください。

「国王様、多くの町からの情報によりますとシックスス国が、我がフォース国の東の町地方を侵略する計画を立てているようです」

大臣が報告した

「そうみたいじゃ。あの穀倉地帯を奪われれば我が国の国力は半分に低下してしまう。是が非でも死守しなければ」

「もう、シックスス国のスパイが多数、我が国に侵入し、兵力や兵站物資などを探っている様子です。また、定期便を襲い、我が国の情報を奪おうとした事件も起きています」

「よし、一度シックスス国にこのことを質す使者を送れ」

「やってもいいですが、無駄になるかと思われます」

「そうかも知れないが、我が国としては今すぐの戦争を回避させたいのだ。せめてあと一ヶ月、穀倉地帯の収穫が終わるまでは」

「そうですね。収穫が終われば心置きなく戦えます。時間稼ぎで使者を送りましょう」

「また、東の町へ兵力も送っておけよ」

「いかほどいたしましょう」

「そうじゃのう、四万程動かせておけ。ただし秘密裏にな。シックスス国に悟られないように」

「承知いたしました。それではすぐに実行いたします」

「ところで、ショコラは何をしておる?」

「王子様はまた放浪の旅に出ております。秘密裏につけている護衛の者によると東の町を南下した村に滞在しております」

「あのお気楽息子め。できはいいのだが、放浪癖があって困る。そろそろ身を固めさせて国政を任せてみたいのだが」

「それはいい話ですが、ご本人がその気になりますでしょうか?

「それをなんとかするのが、そちの役目じゃ。それでは使者の件、始めてくれ」

「承知いたしました」

大臣は立ち去り、国王は一人苦虫をかみしめながら玉座に残った


シックスス国の城にフォース国の使者が到着したのは、ヒメジが異世界に来てから十一日目であった。書状を受け取ったシックスス国の国王は、読み終わるとすぐに破り捨てた。

「国王様、いかがなされました」

「おう、騎士団長か。フォース国からの使者じゃ。戦争の準備をしているとの噂があるが本当かと問い合わせの手紙だ」

「本当ですと答えるわけがないでしょう」

「そうだ。戦争の準備はいかがかな?」

「はい、滞りなく計画通りに進んでおります」

「そうか、それではあと一ヶ月もすれば侵攻できるな」

「はい大丈夫です。ただいま我が国の西側に五万の兵隊がいます。その後残りの五万を西に移動させ、一ヶ月後には十万の兵でフォース国に進行する予定です」

「うむ、兵站はどうなっておる」

「はい、すでに十万の兵が一年間戦える量を各地の城に蓄えております。これを輸送する人馬もそれぞれの城で待機しております」

「よし、では、兵の訓練や移動を急いで行わせろ」

シックスス国の国王は指示を与えると意気揚々と自室に戻っていった。


 ヒメジは予定通りの定期便に乗って次の村までのんびりと揺られている。今回は馬に乗った護衛が十名ほどいるので野盗に襲われても安心だ。それに定期便に乗っているのはヒメジ一人だけだ。まるで、国王の気分にヒメジは酔いしれていた。定期便が半分ほど来たところで護衛の一人が叫んだ。

「右から十騎ほどこちらにやってきます」

「おそらく野盗でしょう」

「よし、みんな隊形を組んで定期便を守るのだ」

「おう」

護衛の冒険者が武器を取り出して臨戦体勢に入った。遠くから野盗が馬を操ってこちらにやってくる。

「久しぶりの定期便だ。皆の者襲ってお宝をいただけ」

「おう」

定期便の周りで武器と武器がぶつかる音がする。

「キン、キン」

「キン、キン」

「カン、カン」

「カン、カン」

長身冒険者と小太りの野盗が剣と剣を交えている。

「野盗よ、素直にお縄を頂戴しやがれ」

「キン、キン」

「ちょこざいな、冒険者。お前達の方こそ、定期便を引き渡せ。そうすれば命は助けてやるぞ」

「キン、キン」

「命は助けてやるだと、そんな剣術で私に勝てると思うのか」

長身の冒険者は小太りの野盗に何度も剣を打ち込んだ。

「キン、キン」

小太りの野盗は剣で防いでいたが、やがて力尽きて、長身の冒険者が剣を強く打ち込んできた時に、

「キ~ン」

自分の剣をとばされてしまった。

「しまった」

小太りの男は、馬をひるがえして逃げ始めた。周りでも、冒険者に押されて数名の野盗は勝ち目がないと思って逃げ始めた。それを見た野盗のリーダーは退却の号令を発した。

「退却だ! 下がれ! 退却するぞ!」

野盗達は定期便を背にして逃げ始めた。

「追わずにこのまま定期便を護衛するぞ」

隊長格の男に声をかけられて、

「了解」

護衛の冒険者達は野盗を追わずに、定期便の周りに集まってきた。ヒメジは幌馬車の後ろから顔を出して集まってきた冒険者に、

「けが人はいますか。もしいれば回復薬を渡します」

声をかけた。すると、三人ほど腕や足に軽い傷がある冒険者がヒメジに薬をもらいに来た。

「ちょっとしくじって怪我をしてしまったので、薬をくれるかい」

「はい、これをどうぞ」

ヒメジが回復薬を渡すと冒険者はそれを飲み干して、自分の持ち場に戻っていった。全員が持ち場につきたことを確認した隊長格の男が、

「それでは出発しましょう」

号令を発すると、全員出発し始めた。幸いなことに次の村に着くまで野党の襲撃はなかった。久しぶりに定期便が来た村は喜んで迎えてくれた。

「定期便が来たぞ」

「手紙はあるかのう」

「私は酒を購入したい」

村人は定期便の周りに集まって、自分の目当ての物を購入したり手に取ったりしていた。定期便から降りると、村人に軽く会釈して、宿屋に向かった。宿屋ではまだ、野盗に襲われた人々が全員泊まっていた。

「ヒメジさん? ヒメジさんですよね」

一人の男性が声をかけてきた。

「はい、ヒメジですが。あ! 定期便に乗っていた方ですね」

「そうです。ヒメジさんに助けてもらった者です。それに、ここの宿泊費まで払っていただいてありがとうございます」

「お体はもう大丈夫ですか?」

「はい。野盗に襲われてから、精神的にショックで何も出来ませんでしたが、ここで落ち着いて過ごしているうちに治ってきました。南の町へ出発する定期便があればすぐに乗っていくつもりです」

「元気になってよかったです。他の方はいかがですか」

「皆さん、随分元気になっていますよ。そうだ、今日は夕食を皆さんとご一緒にいかがですか?」

「私は構いませんよ。皆さんとご一緒に食べることが出来るなんてとても嬉しいです」

「それでは、皆さんに声をかけておきますので、夕食時にまた会いましょう」

「宜しくお願いします」

ヒメジは、宿屋の亭主に代金を払い部屋の鍵をもらって自分の部屋に向かった。中に入ると、ベッドに横になって薬草の本を読み始めた。毎日少しずつ読んではいるが、なかなか全部は目を通せていない。それでも、薬草採取の種類は徐々に増えてきている。

「さあて、今日はⅡの途中からだったな」

読み始めるとヒメジは夢中になる。

「この薬草は腹痛に効くと書いてあるが、別の薬草も腹痛に効くとかいてあった。どう違うのかな?」

疑問に思うと、ヒメジはすぐにネットで調べる。

「・・・なるほど、この薬とこの薬は、とれる場所や季節が違うだけで同じ効用があるのか」

納得すると次の薬草のページに目を移す。そうしている間に、ドアを、

「トン、トン、トン」

叩く音がした。

「はい、どちら様ですか」

「ヒメジさん、夕食の時間です。お迎えに来ました。もう皆さん、食堂で待っていますよ」

「済みません、すぐに行きます」

ヒメジは戸を開けると、男性と一緒に食堂へ向かった。

「さあ、ヒメジさんが来ました」

男が他の人にヒメジを紹介した。

「今晩は」

「この間はありがとう」

「ヒメジさん元気だった」

全ての人に拍手されヒメジは歓迎された。それを見て、ヒメジは襲われた皆さんが元気になってとても嬉しかった。

「さあ、こちらへどうぞ」

男に言われて、ヒメジは騎手の隣に座った。

「ヒメジさん、何を呑みますか?」

騎手に聞かれたので、

「ビールをお願いします」

答えた。ヒメジのビールが運ばれてくると、男が乾杯の音頭をとった。

「それでは皆さん、カンパーイ」

「カンパーイ」

ヒメジはビールを

「ゴクン、ゴクン」

と半分ほど呑んだ。

「プハ~、こりゃ上手い」

「ヒメジさんお元気そうで何よりです」

「騎手の方ですね。その節はありがとうございました。あなたの案内がなければ、ここにいる人たちはどうなっていたか分かりません」

「それを言うならヒメジさんだって、私を助けた上、貴重な薬を皆さんに分け与えただけでなく、この宿代も全員分出していただいてみんな感謝していますよ」

「そう言っていただけると、皆さんのお役に立ててよかったです」

「ついでにと言ったら失礼かも知れませんが、助けてもらいたいことがあります」

「どうされたのですか?」

「実は、野盗に荷物を全部足られて、皆さんここを出たくても出られないのです」

「そうか。お金がないのですね」

「そうなのです。私は、定期便が来ればそれに乗って仕事が出来るのですがほかの方は、定期便に乗るお金がないのです」

「分かりました」

ヒメジは残ったビールと口に運んだ。

「ゴクン、ゴクン」

全部飲み干すと、騎手に話し始めた。

「私は今記憶喪失なのです。ですから、この世界のことがほとんど分からないのです。いろいろな国の話を聞けばもしかすると記憶が戻るかも知れませんので、皆さんに世間話を聞きかせてもらいたいのです。だから、皆さんの話を大銅貨一枚で買いたいと思います。どんな些細な話でも構いませんので、教えてください」

「そんなことで大銅貨一枚とは太っ腹ですね」

「私にとって情報はそれだけの価値があるのです」

「なるほど。それなら私が順番に呼んできますので話を聞いてください」

「ありがとうございます」

「それでは始めに隣の女性から聞いてください」

騎手はそう言って隣の女性を自分が座っていた椅子に座らせた。そして、事情を説明して、ヒメジに話をするように勧めた。女性は喜んでフォース国の話を始めた。

「ご存じかも知れませんが、フォース国は小麦粉やウイスキーが有名な国です。特にウイスキーは他の国に持って行くと三倍以上の値段で売ることが出来ますよ」

「三倍以上ですか? それはすごいですね」

「ええ、それだけこの国のウイスキーは世界中でおいしいと認められています。ウイスキーと言えばフォースウイスキーと言われていますのよ」

「なるほど、よいことを聞きました」

「それからもう一つ、この国の皇太子は優秀な方と聞いていますが、城でじっとするのが嫌いで、あちらことらに旅をしているそうですの」

「皇太子が・・・ですか?」

「そうなの。結構ハンサムといわれているけれど、あまり人前に出たことがないので顔を知っている人はご家族と城に勤務されている方だけと言われているわ」

「それではあなたも見たことがないのですね」

「そうなの、『もしその人と恋に落ちたら皇太妃になって、城の中で高雅な暮らしが出来るのになあ』って若い女性ならみんな思っていることだわ」

「へえ~。皇太子がどんな人か楽しみですね。良いはなしを二つもありがとうございます。これ少ないですが、教えていただいたお礼です」

ヒメジは女性に大銅貨一枚を渡した。

「こちらこそありがとうございます。これで南の町へ行くことが出来ますわ」

女性はヒメジの両手をきつく握りしめてお礼を言った。

「それでは次の方と交代しましょう」

騎手は女性の方に手をやって、椅子から立たせた。そして元の席に座らせた後、その隣に座っていた男性を呼んできた。こうして順番に九名の男女に話を聞いた。どれも有意義な話でヒメジは満足した

(これで大銅貨一枚とはお安いな~)

思ったほどである。逆に話をした人たちも大銅貨をもらって命拾いをしたような顔をして何度もヒメジの方を向いて礼を言っていた。

「ヒメジさん、ご配慮していただきありがとうございました」

「とんでもない。騎手さん。私も話を聞けて大変助かりました」

「お食事がまだですが何がよろしいですか?」

「私は、皆さんの話を聞いてお腹いっぱいになりました。少し飲み過ぎたようですので、これで失礼いたします」

「確かに、話を聞きながらビールばかりをおかわりしていましたからご無理なさらないでくださいね」

「はい、酔いがまわったようなので部屋で休みます」

「気をつけてくださいね」

「はい、気をつけます。お休みなさい」

「お休みなさい。ゆっくり休んでくださいね」

ヒメジは自分の部屋に行くと、ベッドに倒れ込みそのまま寝てしまった。


いかがでしたか? 最近作品を書いていて、主人公が酒飲みになってしまっています。アルコール中毒にはしていませんが、少し呑ませすぎかな~。でも、五十代おじさんは、毎日晩酌をしているイメージがあるので・・・。まあ、物語として許してください。

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