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いつも愛読ありがとうございます。この作品も第四十話を超えました。続けてこられたのも皆様に読んでいただいたおかげです。感謝しております。
ヒメジは次に魚屋に向かった。店先には淡水魚が並べられていた。
「大将、新鮮な魚はいらないかい?」
「ほう、いい魚かい」
大将は素人が、川で捕まえた魚を持ってきたなという顔つきで聞いてきた。
「これですが、一箱いくらで買います?」
アイテムボックスが繫がっているカバンから西の町で買った箱詰めの小魚を取りだして大将に見せた。アイテムボックスに入れているので新鮮そのままだ。
「こりゃ海水魚じゃないか。こんな代物はこの町では滅多に手に入らないぞ」
「いくらなら購入します?」
「そうだな。この町ではこの魚は珍しいから、一箱銅貨四枚でどうだ」
「いいですよ、その値段で。ところで何箱買います?」
「何箱あるのかい?」
「結構持っていますよ」
「それじゃ四箱ほどもらうとするよ。あるかい?」
「ありますよ」
ヒメジはカバンから魚の入った箱を四つ出して魚屋の大将に渡した。
「改めて見ると、今、釣れたような新鮮な魚だな。どうやって運んだのだ?」
「それは企業秘密ですよ」
「そうかい、それでも、この町で海水魚が見られるなんて、こりゃうれしいね。まだ他の種類の魚があるなら売ってくれないか?」
大将は銅貨十六枚をヒメジに渡しながら尋ねた
「いいですよ。マグロのような魚やアワビのような貝がありますが買いますか?」
「是非見せて欲しい」
「はい。いい品を出しますよ」
ヒメジはアイテムボックスが底に繫がっているカバンから魚や貝を出すと、
「こりゃたまげた。本当に新鮮な魚や貝が多種類ある。全部いただくぜ」
大将は目を丸くしながらも、喜んで魚を購入した。
「ありがとうございます」
「代金はいくらだい?」
「計算しますから少し待ってください」
ヒメジは買値の四倍の値段を言うと魚屋の大将はその値段で買った。ヒメジは、
(大もうけだ。商売の基本、「安く買って高く売る」の言葉通り上手くいった。よし他の魚屋にも行ってみよう)
ほくそ笑んで、別の魚屋へ数件まわった。どこへ行っても、高く買い値がつき、仕入れた魚はすべて売り切れて大銀貨二枚分の利益が出た。
ヒメジが魚屋の次に向かったのは武具屋である。ヒメジが昨日の野盗との戦闘で投擲ナイフを全部使ってしまったので補充するために買いに来た。
「こんにちは」
「いらっしゃい。何をご入り用で」
「投擲用ナイフが欲しいのですが、ありますか?」
「それならここにあります。見てください」
今まで使っていた物とは違うが、手に取るとヒメジの手にフィットした大きさで使い易かった。
「これいいですね」
「そうでしょう。小さいですがそれなりに重いので投げやすいですよ。一本大鉄貨一枚と大変お安い品物ですよ」
「そうですね・・・これをください」
「ありがとうございます。何本購入されますか?」
「百本ください」
「承知いたしました」
ヒメジはお金を支払い、商品を受け取ると、カバンに入れた。ここでも、店主に、
「よく入るカバンですね」
言われて、ヒメジは
「ええ、便利なカバンです」
愛想笑いを行った。店を出ると昼だった。ヒメジは、宿屋の食堂で昼食を食べると午後からは南の町の東の門から外に出て薬草採取をした。
夕方、約束通りに冒険者ギルドへ行った。受付には年配の女性がいた。
「こんにちは」
「ヒメジさん、こんにちは。昨日はありがとうございました。討伐隊の人たちが夜に道で転がっていた野盗を捕らえて戻ってきました。今取り調べをしているところです」
「それは良かったです」
「ヒメジさんのおかげですよ」
「私は、襲われたので、ちょっと反撃しただけですよ。ところでギルド長さんはいますか」
「そうでした。ギルド長は今、外出しております。代わりに私からから手紙を渡すように言われています」
受付からヒメジは手紙を受け取った。
「確かに受け取りました」
「ヒメジさん、東の町へ向かう定期便は明日の朝出発しますから、気をつけてくださいね」
「はい、気をつけます」
「ところで、ここのウイスキー飲みましたか?」
「ええ、堪能させてもらいました。すっかり気に入りました」
「そうですか。それは良かったです。ここのウイスキーは最低でも五年間は樽に寝かせておく必要があるからおいしいのは当たり前。この町の一番大きな酒屋のお酒も二十五年以上の物ばかり。でも今日全部買い込んだ金持ちがいましてね。町中でその話で持ちきりですよ。背の高い五十代の男性だそうです」
「そうですか。すごい人がいますね」
「ん? ヒメジさんも五十代で背が高いですね。まさか?」
「いえ、いえ、私ではないですよ。私は旅人ですよ。大量のウイスキーなど持ち運びできません」
「確かにそうですね。金貨をお持ちの旅人なんてあまり聞いたことがないですし、違いますよね」
「あ、は、は、は」
(金貨を持っていて悪いか)
ヒメジはひがみ心を持ったが、すぐに気を取り直し、
「それでは、これで失礼いたします」
その場から離れた。背中から、
「さようなら、手紙をお願いします」
聞こえてきたので、格好をつけて右手を挙げた。
ヒメジが冒険者ギルドから外に出ると同時に、背中に何かが突きつけられた。ヒメジは振り向きかけた時、
「後ろを見るな、ナイフで刺すぞ」
男の声が後ろからした。
「誰だ?」
「誰でもいい、黙ってまっすぐ歩け・・・次の角を右に・・・その角を左に・・・」
ヒメジは男に言われるがまま歩いた。そして暗い路地に連れて行かれると、
「冒険者ギルドで受け取った手紙を渡してもらおう」
ドスのきいた声がした。
(もうやめてくださいよ。善良な気の小さい五十代のハンサムボーイを脅して)
考えながら、右手を真上にあげて。
「アイテムボックス」
唱えると、右手の上にアイテムボックスが現れたのでヒメジはジャンプしてその中に入った。軽くジャンプしただけだがヒメジは『すう~と』その中に入って行った。男は、ヒメジが急にジャンプしていなくなったため、慌てふためき、あちらこちらを探し始めた。
「まさか屋上に跳んだか」
男は、近くにあるはしごを使って屋根まで登ってあたりを見回した。そのすきに、ヒメジはアイテムボックスから出た。
(よしチャンスだ、今のうちに遠くへ逃げるぞ)
ヒメジは路地から大通りに出て走って逃げた。ヒメジは旨く人混みに紛れたので安心していたが、屋上から見れば、大通りに出で走っていると目立ってしまう。屋根に登った男は大通りに出たヒメジをすぐに見つけて、男は屋根から飛び降りた。十メートルはあるかと思う高さであったが、着地した時、男は両足の膝を軽く曲げて地面をしっかりと踏ん張った。そのあと、何事もなかったようにヒメジを追いかけて走りはじめた。ヒメジは、
(うそだろう。あの高さから無事なんて化け物か)
驚いて、更にスピードを上げて逃げた。しかし、五十代の男性がいくら一生懸命逃げても体力訓練をした男にはかなわない。すぐに追いつかれてきた。男は、
「待て」
とは言っていないが、無言で、
「待て」
との圧力を後ろから送っている。ヒメジは、
「待てないよ」
ぼやきながら幾度となく足を絡ませながら必死で走って逃げた。
ヒメジは男から逃げるために道路の交差点を右に曲がると薬草と薬瓶の薬屋を見つけたのでそこに飛び込んだ。
「こ、こんにちは。ゼイ、ゼイ」
ヒメジは店の入り口から奥に入った。
「おい、どうした? 息が上がっているじゃないか」
店主がヒメジに尋ねると、
「ゼイ、ゼイ、へ、変な男に追われています。た、助けてください。ゼイ、ゼイ」
息も絶え絶えに答えた。その時、店の中にヒメジを追いかけてきた男が入ってきた。店主は、
「いらっしゃい。何をお求めですか?」
男に尋ねると、筋肉質で黒服を着た男は、室内を見回した後、
「それだ」
ヒメジを指さした。
「この人は売り物ではないですよ」
「男に用はない。この男が持っている手紙に用があるのだ。男よ、素直に手紙を渡してもらおうか」
「ゼイ、ゼイ。いやです。ゼイ、ゼイ」
ヒメジは断った。
「断るなら、やりたくはないが、少し痛い目を見なくてはいけなくなるぞ」
男は両手を組んで指をポキポキ鳴らした。
「お客さん、ウチの店の中でごたごたはやめてください。それにこのヒメジさんはウチの上顧客ですから乱暴もやめてください」
「それでは、素直に手紙を渡すよう店主からもその男を説得してみろ。もしできたら、何もせず立ち去る」
「といっていますぜ、ヒメジさん。どうする」
「ゼイ、ゼイ、嫌だと言ったら嫌だ、嫌だ、嫌だ~」
ヒメジは三歳の子が物を欲しがってだだをこねるように言った。
「と、いうことです。俺はだだっ子は苦手なので、あなたを相手しますぜ」
店主はヒメジの前に立ちふさがると、男をにらみつけた。ヒメジはアイテムボックスからボウガンを出して、男に向けて矢を発射した。もちろん当たるはずがなく、男は左手でその矢の柄の部分をつかんだ。そしてボウガンの矢を両手で真っ二つにおると、店の隅に投げすて、店主に向かって男は持っていたナイフを懐から取りだした。その時、急に男は無言で倒れた。
「ハア、ハア。なんとか毒が効きました」
ヒメジは答えた。店主は、
「毒?」
不思議そうに言った。ヒメジは深呼吸して息を整えてから話した。
「ボウガンの矢のすべてに毒をしみこませていたのです。柄の部分は少しささくれさせておいたので、傷をつけやすくなっています。そのため、左手でボウガンの矢をつかんだときに手のひらに僅かな傷ができてそこから毒が体内に入ったのでしょう。素手でつかんでくれたので運が良かったです」
「なるほどよく考えたな。ところでお前さん、この男をどうするのだ。このままにしておけないだろう」
「町の警備隊に突き出します。店主さん、運搬手伝ってもらえますか」
「いやだ、といっても店の中に置いておくわけにいかないからな。引き受けた」
店主が男を右肩に担ぎ上げると、二人は町の警備隊本部へ歩いて行った。町の人の目が二人に降り注いでいるが、二人はお構いなしに会話を行った。
「お前さん、なんでこの男に狙われているのだ」
「ギルド長さんから預かった手紙を欲しがっているようです」
「ギルド長からの手紙ねえ。内容はわかるか?」
「いや、そこまではわかりませんが、最近シックスス国がこの国にスパイを放っているとの話がありますし、定期便を襲った野盗もシックスス国の連中でしたし、それが何か関係しているのでしょうね」
「そうだな、東の町の兄貴もシックスス国が不穏な動きをしていると手紙に書いてあったから、何か起きるかも知れないぞ」
店主はなぜかわくわくした顔になっていた。十分ほど歩くと、薬屋の店主が立ち止まった。
「さあついたぞ、警備隊本部だ」
「こんにちは」
ヒメジは警備隊員に声をかけた。
「何者だ」
門番の警備隊員が尋ねてきた。
「ヒメジといいます。この人は薬屋の店主さんです。暴漢に襲われたので気絶させて連れてきました」
店主は暴漢を地面に下ろした。警備隊員は男の両手両足を縄で縛り身動きがとれないようにしたが、そのとき隊員の一人がヒメジに質問をした。
「息をしていないが、死んでいるようだぞ。お前殺したのか」
(はい、そうです。なんて言えないから)
「薬を飲ませれば気がつきます」
ヒメジは万能薬をカバンから取り出し半分男の口に流し込み、半分顔にかけた。すると、男は大きく深呼吸しながら目を開けた。
「それでは、事情を聞かせてもらおうか」
奥から警備隊の隊長が現れた。男は黙ったままであったが、ヒメジは今までのいきさつを事細かく説明した。
「なぜ、ギルド長の手紙が必要なのか教えてもらおう」
隊長が男に質問をしたが、男は黙ったままであった。
「まあ、聞かなくても見当はついておる。ヒメジさん、店主さん、お疲れ様でした。後はこちらで対応します。今日はお引き取りくださってかまいません」
「そうですか、それではよろしくお願いします」
警備隊本部から出た二人は店に向かって歩き始めた。ヒメジは薬屋の店主にお礼を言った。
「今日は、助かりました。ありがとうございます」
「どうってことないぜ。それでもお前さん疫病神がついているのではないか」
「多分十柱ぐらいはついているでしょう。お清めに飲みに行きませんか?」
「おう、いいね」
「今日は私がおごります」
「それなら、安くて酒がうまい酒場を知っているからそこにするぜ」
「はい、お供します」
二人は深夜まで酒を飲みながら、シックスス国のこと。薬屋の兄弟のことなどを楽しく話をした。
いかがでしたか? 主人公が襲われました。どうなるのでしょうか。これから楽しみにしてください。(作者はこの後のストーリーをまだ考えていません。どうしましょう)




