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いつも読んでくださっている皆様ありがとうございます。感想や評価、ブック、レビュー等して頂けるととても励みになります。さて、書き始めた作品がやっと四話目になります。楽しい作品を早く皆さんに読んでもらいたいと思いながら制作しています。しかし、なかなか思うように書けなくて何度も書き直しをしながら投稿しているので時間がかかってしまいます。私の能力不足ですが作品ともどもおおらかに見守ってください。
「チュン、チュン」
スズメのさえずりがヒメジの耳に届いてきた。
「コ、コ、コ、コケコッコー」
(ん? ニワトリの鳴き声も聞こえてきた。もう朝か)
ヒメジは目を覚ますと、礼拝堂の長いすに座り直し、両腕を上に伸ばして上半身を背伸びして大あくびをした。
「ふあ~、よく寝た」
ヒメジは周りを見渡すと礼拝堂の中はまだ薄暗い。しかし、徐々に日は礼拝堂の中を明るく照らし始めている。ヒメジは両腕を顔のあたりまで下ろすと両目を両手の人指でこすり始めた。そして、
「さて、何をしようか」
独り言を言いながら、その場に立ち上がると、数歩離れて置かれている、壊れた長いすに近づいた。そのいすは背もたれに穴が空いている。ヒメジがまわりを見渡すと礼拝堂の隅に、
「処分」
張り紙がつけられている長いすが目に入った。ヒメジはその長いすまで歩いて、それに手をかざした。
(長いすの材料になれ)
祈りながら、
「オール クリエーション」
唱える。すると、長いすが分解され、その場に板きれとそれを固定していた釘が現れた。すべてをいっぺんに持ち運ぶのは重たいのでヒメジは、
「アイテムボックス」
唱えた。目の前にアイテムボックスの空間が開くと、少しずつ板きれとそれを固定していた釘を放り込んでいった。
(あれ? 荷物が軽い。アイテムボックスに入れるときには、全部の材料を小指一本で入れることができた。本当に便利な特殊能力だ)
ヒメジは自分の特殊能力に感心しながら、すべての材料をアイテムボックスに入れると、背もたれが壊れた長いすへ戻った。そしてアイテムボックスから一本の板と数本の釘を取り出すと壊れた長いすの上に置き、
(長いすよ、なおれ)
祈りながら、
「オール クリエーション」
唱えた。すると、長いすは新品同様に修理された。
「よし、この調子で長いすを修理していこう!」
ヒメジは材料を壊れた長いすに置いてオール クリエーションで手際よく直していった。足が折れている長いすや、穴が開いている長いすなど、長いすを八脚ほど直したところで分解した材料がなくなった。
(一晩泊めてもらったお礼だからこんなもんでいいだろう)
ヒメジが自己満足に浸っていると、奥から扉の鍵を開ける音がした。
「神父様かな?」
ヒメジは扉に目をやると、扉から神父とシスターが現れた。
「ヒメジさん、おはようございます。よく眠れましたか?」
「神父様、おはようございます。おかげさまでよく眠れました」
「それは良かったです。こちらはシスターです」
神父と同じ年代で、小太りの女性が自己紹介をした。
「初めましてヒメジさん。シスターです」
「こちらこそ、初めまして。一晩の宿をありがとうございます」
「いいえ、どういたしまして」
三人とも笑顔で挨拶していたが、神父が真顔で話し始めた。
「ヒメジさん、突然ですがあなたが昨日着ていた服を譲ってもらえないでしょうか?」
「なぜ、私の服が欲しいのです?」
「もうお気づきかとは思いますが、この教会は寄付が少なく資金繰りが苦しいのです。壊れた長いすや教会の壁の修理もできない状態です。あなたの持っている他国の服は高く売ることができます。勝手なお願いだとは思いますが、お金がどうしても必要ですので、お願いしている次第です」
昨日ヒメジが宿泊を懇願している目と同じように、神父はヒメジに懇願の目を向けている。
(神父様、そんな顔をしないで。紺のスーツを着ていたら、おそらくこちらの人々に白い目で見られるだろうし、どうせ既製品で安く購入できたものだから、宿泊のお礼であげてもいいや)
ヒメジがそう考えて神父へにこやかに答えた。
「わかりました、私が着せてもらっている服と交換ならいいですよ」
「本当にいいのですか?」
「はい、構いませんよ」
「ありがとうございます。よかった。これで、少しはしのげます」
神父とシスターは深々と頭を下げた。ヒメジはすぐにでも紺のスーツを渡すつもりだが、アイテムボックスをこの二人に見せるわけにはいかなかった。
「神父様、服を渡す前にトイレに行かせてもらえますか?」
「いいですよ、奥の扉の向かいにある扉を開けるとそこがトイレです。しかし、他には入らないでくださいね」
「もちろん、お約束します」
ヒメジはトイレに入るとアイテムボックスから紺のスーツとズボンそしてカッターシャツを取り出した。取り出した後すぐにトイレから出たが、この時代のトイレはボットン式なので入っている間は呼吸を止めていた。トイレ全体が臭いため、匂いを吸ってあの苦い経験を思い出したくないためだ。
「はあ~、はあ~。お待たせしました、神父様どうぞ紺のスーツとズボンそしてカッターシャツです。お譲りいたします」
ヒメジは神父にスーツとズボンそしてカッターシャツを渡した。
「ヒメジさんありがとうございます。本当にありがとうございます。それでは、私はこれから呉服屋に行きますので失礼いたします」
神父は少し慌てて教会の扉を開いて出て行った。シスターは神父を見送るとヒメジへ顔を向けた。
「ヒメジさん、本当にあんな高級品を譲っていただいてよろしかったのですか?」
「あれが高級品なのですか?」
「やはりご存じないようですね。あなたの着ていた服は遠い国の衣服と聞いています。珍しい繊維で風通しも良く着心地がいいので一部の国王か貴族しか着ていないという代物です」
(確かに今、着ている服はごつごつして着心地が少し悪い。しかし、慣れれば問題ない)
「シスター様、いかほどの値打ちがあるのでしょう」
「そうですね銀貨五枚はくだらないでしょう」
「銀貨五枚?」
ヒメジはきょとんとした。貨幣価値が分からないので、銀貨五枚が大金なのかそうでないのか判断できないからだ。ヒメジの表情を見たシスターは彼が困惑しているのを察して、お金について話し始めた。
「そういえばヒメジさんは記憶をなくされているのでしたね。少し説明させていただくわ。リンゴ一つが鉄貨一枚。鉄貨が百枚で銅貨一枚。更に銅貨百枚で銀貨一枚。銀貨百枚で金貨一枚になるわ。四人家族でひと月に銅貨が四十枚あれば不自由しないで生活できる程度の金額ですよ」
シスターは笑顔でそう答えた。ヒメジも笑顔でいるが、紺のスーツとカッターシャツを譲与した後悔で苦笑いしているためだ。
(なるほど、知らなかったとはいえ、しばらく遊んで暮らせる金額を手に入れ損なってしまった。糞・糞・糞。仕方ないもう少しシスター様にこの世界のことを聞いて情報を集めておこう。何か役に立つかも知れない)
「あの、シスター様。この国の名前を教えてくれますか?」
「ええ、いいわよ。この国は フォース国といいます。といっても単純に四番目の国という意味です。ヒメジさんもご存じの通りこの大陸は十三の国があって建国順にファースト国、セカンド国、・・・トゥエルブス国、最後の十三番目の国だけニューカントリーと呼んでいるわ」
「地図なんかあったりします?」
「あるわよ。欲しいなら後で差し上げます。でも、大まかな地図だから役に立つかしら」
「無いよりありがたいです」
それから、ヒメジはシスターからここがフォース国の王都であることやこの世界の文化、政治、慣習などをいろいろ聞くことができた。立ったままではお互いに疲れるので、前後の長いすに座って、ヒメジが前の長いすに座り後ろを向いて話を聞いていた。シスターの説明は要点を簡潔に伝えてくれるため、ヒメジには大変わかりやすかった。一時間ほど話をしていると、教会の扉が開いた。
ヒメジを聖人君子や質実剛健というようなヒーローとして書くつもりはありません。どことなく、どこにでもいそうなお人好しのおじさんといったところを描きたいと思っております。今回の話に所々そのような人柄を入れたつもりですがいかがでしたでしょうか。皆さんのアドバイスをお待ちしております。よりよい作品を作っていきたいと思っておりますのでご協力お願いします。




