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いつも愛読ありがとうございます。主人公は再び野盗に・・・。さあどうなったのでしょうか。楽しんで読んでください。
十一日目の朝は、周りが明るくなった頃にヒメジは起きた。ベッドからすぐに降りると朝食も食べずに宿屋の亭主に部屋の鍵を返した。そして、銀貨三枚を亭主に握らせ、
「これで、昨日ここに来た十名の当分の間の宿と食事を頼みます」
ヒメジは店主にお願いした。亭主はお金を手にして、
「それはいいが、こんな大金を見ず知らずの人に使ってもいいのかい?」
ヒメジに質問した。ヒメジは、
「ええ、いいのです。皆さん、野盗に全財産奪われたので、今、無一文のはずです。それに、精神的にまいっているでしょう。ここでゆっくり英気を養ってもらい、各自これからどうするのか考えてもらいたいのです」
答えた。すると店主は怪訝そうな顔をして、
「なるほどな。お前さんの気持ちはよく分かった。しかし、それでもこの金額は多すぎるのじゃないか?」
尋ねると、ヒメジは笑顔で
「足りないより余った方がいいでしょう。よろしくお願いいたします」
答えると、亭主はなるほどと納得した顔になった。ヒメジは
「それでは急ぎますので、これで失礼します」
そう言って南の町へ出発した。宿屋の亭主はヒメジの背中に向かって、
「おう、まかせておけ。気をつけて行ってらっしゃい」
上機嫌で返事をした。
ヒメジは少し早歩きで南の町に急いだ。日差しは柔らかく、気温も暑いほどではない。多少頭から汗が出ているが、気にするほどではなかった。村を出てから二時間ほど歩いたところで、ヒメジの歩いている後方から多数の馬の足音が聞こえてきた。
「野盗かな。ついていないな」
ぼやきながら、ヒメジは隠れようとしたが片方は崖で、もう片方は谷になっており、隠れるところはどこにもなかった。やがて、ヒメジは馬に乗った野盗に追いつかれて囲まれてしまった。胸には白い羽がついていた。
「また、昨日の野盗さんですか」
「よう、またあったな。ひょろちょこ」
「ええ、何の用ですか? わたしは何も持っていませんよ」
「村におとなしくいれば、何もされなかったのに一人でのこのこ出歩くなんて馬鹿なのか」
「ええ、馬鹿です。大馬鹿者ですが、何か用ですか?」
ヒメジは昨日のように野盗を恐れていたが空元気で答えた。
「金目の物と例の物を持っていないか確認しろ」
野盗のリーダーが指示すると、一人の男が馬から下りてヒメジのカバンの中を確認した。しかし何もなかったので、その後頭の先からつま先まで丁寧に身体検査した。ヒメジはすべてアイテムボックスに入れていたのでカバン以外は何も持っていなかった。
「リーダー、こいつ本当に何も持っていませんぜ」
「どこかに隠しているかも知れない。はかせろ」
リーダーが言うと、男は左手でヒメジの胸ぐらをつかみ殴ろうと右腕を振り上げた。その時、恐怖のあまりにヒメジはとっさにカバンに手を突っ込み、アイテムボックスからダガーを右手でつかんで取りだした。そして、ヒメジは目をつぶって振り回すと、胸ぐらをつかんでいる男の左手に傷をつけた。つけられた男はすぐにその場に倒れた。
「貴様! 何をした」
別の男が馬上から叫んだ。ヒメジはダガーをカバンに突っ込んでアイテムボックスにしまい、代わりに投擲用ナイフを数本取り出し、
(殺される~。野盗なんてあっちに行け~)
思いながら野盗にめがけて力一杯投げた。数本の投擲用ナイフが野盗に飛んでいったがほとんどが簡単に回避された。ただ、運良く一人の野盗の足にかすり傷を負わせることができた。かすり傷を負った野盗は馬上から落ちて倒れた。ヒメジは、ダガーと投擲用ナイフに毒薬を塗りつけていたのだ。それを見た残りの野盗は、
「野郎どもやっちまえ」
「おう。こんなひょろちょこなんてすぐにあの世行きだ」
馬に乗ったまま剣を抜いてヒメジに斬りかかった。多数の剣がヒメジの体の至る所に斬りかかってきた。
(絶対に殺される)
ヒメジは目をつぶり、両手を顔の前でガードして体を丸めてしゃがんだ。野盗の剣が次々とヒメジに襲ってくる。
(すぐに首を切られて、胸を突かれて、お腹を裂かれて・・・。あれ? 剣で斬られているはずなのに痛くないぞ)
ヒメジは始め自分の身に何が起きたのか見当がつかなかったが、指にはめているプロテクトリングを見て、
(こいつのおかげだ。助かった~。はあ~)
ヒメジは安堵のため大きく胸をなで下ろした。野盗は相変わらず斬りつけてくるが。プロテクトリングをはめているヒメジには剣先が当たらず全て跳ね返した。もし、プロテクトリングがなかったら、野盗の剣でヒメジはすでに十回はあの世に行ったであろう。
(よし斬られないなら、こちらから反撃だ。これでも食らえ)
ヒメジは座ったまま投擲用ナイフを斬りつけてくる野盗めがけて投げ始めた。狙いもつけずに適当に投げているので、当たることは期待していなかったが、下手な鉄砲数打ちゃあたるを実践したように、斬りつけることに夢中になって投擲用ナイフを避けそこねた二人の野盗の腕や足に傷をつけた。傷をつけられた野盗はその場で馬から次々に落ちていった。
「斬りかかっても剣がはね返される! 殺すことが出来ない」
「リーダーこいつは化け物だ!」
野盗がうろたえ始めた。
「貴様! 何者だ!」
野盗のリーダーが大きな声で問うてきた。
「天下の大将軍、大江戸平四郎であるぞ、頭が高い」
ヒメジは立ち上がり胸を張って、いい加減なことを言った。そして、再び、無茶苦茶に投擲用ナイフを投げ続けた。
「化け物め。いったん引くぞ」
リーダーの声で他の野盗は引き上げた。ヒメジは引き上げている野盗に向かっても投擲ナイフを投げたが一つも当たらなかった。そして、全ての投擲ナイフを投げ終えたところであたりを見渡すと、四人の野盗が地面に転がっていた。
「おいおい、仲間を残して逃げるのかよ」
ヒメジはつぶやきながら、籾柄の入っている麻袋を取り出した。中にある籾柄を捨てると、空の麻袋に手をかざし、
「麻紐になれ」
祈りながら、
「オール クリエーション」
唱えた。すると麻袋が一瞬光って麻紐に変わった。
「よし出来た」
ヒメジは麻紐で全員の両手両足を縛り逃げられないようにした。そして、一人の男に上等の万能薬をかけた。すると男の目が開き、息を吹き返した。ヒメジは無駄だとは思いつつ男に話を聞いてみた。
「あなたたちは、なぜ私を襲うのですか」
「野盗は物取りだ。金に決まっているだろう」
「しかし、金は昨日お渡しして持っていないことぐらい知っているでしょう」
「ひょっとしたら、村でお金を借りているかも知れないだろう」
「それにしても、一人の旅人を大勢で襲うなんて騒々しい」
「へん、お前なんかのひょろちょこなど、ひとひねりだ」
「いやいや、ひとひねりされているのはそちらでしょう」
「うるさい、殺すなら遠慮なく殺せ!」
「いや、一度殺して蘇生させましたから、二度目は殺しません。できれば、他のお仲間の人も助けたいと思います」
「俺たちは、野盗の誇りを持っている。お情けで助けてもらいたくない」
「そうですか。ただ、話し方から見るとフォース国の方ではないようですね。できれば出身国を教えてもらえますか。そうすればあなただけは助けてあげます」
「うぬぬ・・・シックスス国だ」
「そうですか、それでは何を取ろうとしていたのですか?」
「だからお金だと言っているだろう」
「これではないですか?」
ヒメジはアイテムボックスに繫がっているカバンからギルド長の手紙を取りだして男に見せた。その時、一瞬男の顔がかわった。
「これのようですね。ご協力ありがとうございます。それでは一度気絶してください。オール クリエーション」
ヒメジは男の頭に手をやると大きなたんこぶを作った。男はその場で気絶した。ヒメジは男を地面に転がすと他の野盗も同じように薬を与えて蘇生させ聞き出してみた。しかし、どの野盗も結果は同じであった。全員気絶させるとその場に転がせて、ヒメジは南の町へ向かった。後からまたあの逃げていった野盗達に襲われるかと思っていたが、襲撃されることはなく、その日の夕方にヒメジは南の町に到着した。
いかがでしたか? なぜか今回は主人公が活躍してしまいました。予定ではこんなはずではなかったのですが。まあ、ご都合主義ですので許してください。




