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いつも愛読ありがとうございます。今回は主人公にとって大きな事件が起こります。楽しんで読んでください。

 ヒメジの十日目の予定は、定期便に一日中乗って次の村へ移動することであった。ヒメジは、昨日までと打って変わって黙ったまま幌馬車に揺れながら座っていた。

(ショコラ、今頃どうしているのかな~。はあ~。一人で退屈だな~)

のんきなことを考えていたヒメジであったが、いつの間にか、うとうとと眠り始めた。しばらく寝ていると、幌馬車が大きく上下に揺れた。その拍子にヒメジが目を覚ますと、顔をあげてあたりをきょろきょろと見渡した。幌馬車がスピードを上げて走っているのが体感で分かった。そして、ヒメジは馬に乗った十数人の野盗が、

「まて、こら~」

声を出して幌馬車の後ろから追いかけてくる姿を見た。少しずつ距離が迫っているのが目でわかる。追いつかれると、全員無事では済まされない。

「お前ら二人は左右から回り込め」

野党のリーダーが仲間に声をかけた。幌馬車に乗っている客は振り落とされないように幌の梁の部分にしがみつくだけで精一杯だ。ヒメジはダガーや投擲用ナイフを持っているが怖くて何もできない。

(ひえ~、こわいよ~。こんな時にショコラさんがいてくれたら)

そう思うだけで、ヒメジは他の乗客と同じように幌馬車から落とされないようにしっかり幌の梁の部分を持つだけであった。やがて、左右に回り込んだ野盗が幌馬車の前で立ちふさがった。騎手がそれを避けようと右に舵を切った。

「ヒヒ~ン」

鳴きながら幌馬車の六頭の馬たちは、立ちふさがった馬にぶつからないように急に右に曲がった。その時、地面に埋まっていた大きな岩が運悪く左側の後輪にぶつかって、幌馬車は左側が浮いたかと思うと、少し右側に傾いた。騎手はなんとかスピードを緩めて元に戻そうとした。その隙に後ろから追いかけてきた野盗が幌馬車を取り囲んだ。

「幌馬車を止めろ。そうすれば乗客の命は助けてやる」

野盗からの呼びかけがあった。幌馬車の騎手は、逃げられないことを悟り、

「本当に乗客の命の保証はしてくれるのですね」

尋ねた。

「ああ、約束する」

「分かりました。今、止めます」

騎手は手綱を引いて馬を止めた。

「それでいい」

完全に幌馬車が止まると、野盗は幌馬車の馬の拘束具を刀で切り始めた。

「それはやめてください」

騎手は地面に降りてやめさせようとしたが、

「邪魔だ」

野盗の一人に後ろから刀の鞘で頭を強く叩かれてその場で気絶してしまった。やがて、全ての馬の拘束具を外した野盗は、

「ほら、どこでも好きなところへ行きやがれ」

馬のおしりを叩いた。馬たちはばらばらになりながら道沿いに走って、遠くへ行ってしまった。次に野盗は、残された幌馬車の乗客に向かって、

「おい、全員馬車から降りろ」

叫んだ。幌馬車の乗客は、一人一人後ろから降りていった。

「こっちに来て、手を頭の上に置いて膝をついて座れ」

野盗の一人に指示された通りに乗客は動いた。ヒメジは何もできずに黙って言われるとおりに動いた。

(なんと情けない男だ)

勇気がない自分が悔しかった。全員が降りると、見張り役の三人を除いた残りの野盗が幌馬車の中に入り、荷物を全部持ちだした。一人の男性が立ち上がり口を開こうとした時、見張りの男が刀を振り上げて斜めに下ろした。口を開こうとした男には刀が当たっていなかったが、威嚇となり、男は黙って座った。ヒメジはすべての荷物をアイテムボックスに入れており、懐の巾着袋には銅貨数枚と少額の貨幣が入っているだけだ。

「荷物はこれだけだ、リーダー」

「よし、お前立て」

ヒメジが最初に指示された。素直に立つと頭、胴体、足の順で体中を触ってくる。荷物を持ち出した野盗は、次に一人一人身体検査を始めたのだ。そしてヒメジの懐に巾着袋を見つけた野盗は、巾着袋をひっくり返して貨幣を夜盗の手のひらにだした。

「お前、結構持っているじゃないか。まだ持っていないか?」

野盗はヒメジに聞いたが、ヒメジは怖くて首を横に振るのが精一杯だった。

「そうかい、じゃ仕方ないな。巾着袋はかえすぜ。ほらもういい、座りな」

終わると巾着袋を返され膝を曲げて座らされた。女性でも容赦がなく、

「やめて、おねがい」

嘆願しても身体検査を行い、宝石の付いた指輪やネックレスなどの金目の物を取り上げていった。全員の所持品を奪うと、野盗の一人がリーダーの男に話しかけた。

「リーダー、金目の物以外は誰も例のものを持っていませんでした」

「そうか、違ったか」

「そのようで。一体誰が持っているのでしょうか」

「まあ、初めてだしな。最初から上手くいくわけがない。しかし、こうやって定期便を襲えばいつかは手に入る」

「そりゃそうですね、ところでこやつら生かしておいてもいいですか?」

「俺たちは金品と例のものを手に入れるだけでいいのだ。それ以外をやっても何のメリットもない。ましてや、人をあやめても刀が錆びるだけでもったいない。それに、この連中を見ろよ。誰も俺たちに刃向かうことができるやつなんていないぜ」

「そうだな、リーダー。全員うつろな目になっている。こりゃ刃向かってこられねえぜ。あ、は、は、は」

「よし、今日はいい収穫だ。皆の者さあ帰るぞ」

リーダーが野盗全員に向けて声を発した。他のメンバーも、

「ヤッホー」

「やったぜ」

「ピューピュー」

各自、威勢のよい声を上げた。そして、リーダーが先頭で強奪した荷物を持って馬を走らせると、他の者も馬を走らせた。山道に十名の男女を残して。野盗が立ち去った後、ヒメジは騎手が倒れている場所まで走った。

「大丈夫ですか?」

ヒメジが騎手に声をかけると、騎手は気がついた。そして、

「頭が痛いです」

返事をした。

「気がついて良かったです。これを飲んでください」

ヒメジはアイテムボックスから回復薬を取り出し騎手に飲ませた。騎手はみるみる回復し、上半身を起き上がらせるまでになった。ヒメジは騎手に話しかけた。

「大丈夫ですか? 気分はいかがですか?」

「まだ頭は少し痛いですが、薬のおかげでずいぶん良くなりました」

「それは良かった」

ヒメジは安堵の顔をした。それを見た騎手はヒメジに尋ねた。

「あの、野盗はどうしましたか」

「私たちの荷物を奪うと立ち去っていきました」

「そうですか。乗客は?」

「全員無事です。ただ、軽傷の人が何人かいます」

「その程度の怪我で済んだのなら良かった。私も薬のおかげで良くなりました」

そう言うと騎手はゆっくり立ち上がった。それを見て今度はヒメジが騎手に尋ねた。

「それなら質問してもいいですか?」

「大丈夫です」

「ここから次の村までどれくらいですか?」

「歩いて一日のところです」

「あなたは歩けそうですか?」

「はい、歩けます」

「よかった。あなたはこの道をよく知っていますから、ゆっくりでいいですので私たちを村まで連れて行ってください」

「承知しました」

ヒメジは騎手の返事を聞いて頷くと、乗客の方へゆっくり歩き出した。騎手もその後を追って歩いた。やがて、二人は、腰を下ろして途方に暮れている男女の目に立った。そこでヒメジは

「皆さん、怪我をしている人には回復薬を差し上げますので声をかけて下さい。休憩してから私は騎手さんと一緒に次の村まで歩いて行きます。ここからおよそ一日のところだそうです。来たい人は一緒に行きましょう。強制はしません。ただし、ここに残っていても当分の間は誰も助けは来ないでしょう。代わりにまた、あの野盗がやってくるかも知れません」

声をかけた。すると、

「私に回復薬をください。回復したら一緒について行きます」

「私も」

「残っても仕方がない、回復薬を飲んだら一緒にいく」

乗客は次々に立ち上がり、全員が歩いて村へ行くことになった。


いかがでしたか? この後、主人公は助かるのでしょうか。作者はこの後のストーリーを悩んでいるところです。楽しみに待っていてください。

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