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いつも愛読いただきありがとうございます。今回から新しい場所での冒険が始まります。楽しんで読んでください。

 九日目の朝は猫の鳴き声はしなかった。前日あれだけうるさかったのに鳴き声がしないと、ヒメジは半分うれしさと半分さみしさを感じた。しかし、もともと猫は大好きというわけではないので、しばらくすると気にも留めなくなった。そして、宿屋を出る頃になるとすっかり猫のことは忘れて、金銭を手に入れるために依頼がないかと冒険者ギルドへ向かった。冒険者ギルドの掲示板にはたくさんの依頼書が張ってあったが、レベルが高い物ばかりでヒメジができそうな依頼はなかった。

「ヒメジさん、おはようございます」

後ろからショコラの声が聞こえた。ヒメジは振り返りショコラに向かって笑顔を見せた。

「おはようございます。ショコラさん」

「ヒメジさんも依頼を受けにこられたのですか?」

「はい。でも私のできそうな依頼はなさそうで。というより、ここの依頼はD級以上のレベルの依頼ばかりですね」

「ああ、それならE級以下は、あちらの掲示板に依頼書が貼ってありますよ」

「掲示板が違うってことですか?」

「そうですね。ここでは掲示板が二枚あり、ランクで分けられているようです。私はこちらの依頼を受けます。ヒメジさんも頑張ってくださいね。それではまた」

「はい、ありがとうございます。私はあちらの掲示板を見てきます。それでは失礼します」

ヒメジはショコラと分かれてもう一つの掲示板に向かった。

(え~っと、私にできそうな依頼はないかな?)

ヒメジは掲示板を上段の左から右に向けて視線を移動させた。その後、一段下げて右から左へ視線を動かせていったとき、Eランクだが薬草採取の依頼を見つけた。昨日、採取していたゴレン草が三本で銅貨三枚だ。

(よし、これにしよう。昨日採取した物を出せばいいからね)

ヒメジは、その依頼書を受付に持って行った。

「これにします」

「薬草採取ですね、頑張ってきてください」

受付の男性が言った。ヒメジはすぐにカバンからゴレン草を取りだして受付の男性に見せながら、

「いま、ゴレン草を持っていますのでお渡しします」

話をした。

「おや、もうお持ちだったのですか」

「ええ、昨日採取していたので依頼があってちょうどよかったです」

そう言って、ヒメジは昨日話をした受付の若い男性に依頼書とゴレン草三本を渡した。

「確かに依頼の品は受け取りました。これでヒメジさんもE級冒険者ですね。おめでとうございます」

ヒメジは受付から依頼料をもらった。受付はヒメジに依頼料を渡しながら、

「ところで、ヒメジさんギルド長からの依頼があるので頼めますか?」

尋ねた。ヒメジは、

「はい、私でできることでしたらいいですが、何でしょうか?」

答えた。

「簡単なことです。この町から幌馬車で南へ三日ほど行った町の冒険者ギルドへ手紙を渡して欲しいのです」

そう言った後、受付はヒメジに耳打ちした。

「多分、ヒメジさんがこの町に持ってきた手紙の内容と同じだと思います」

「ああ、ギルド長が食事会をする内容ですね」

「三人は仲がいいですから、時々、こうやって連絡を取り合い、食事会を行っているのです。食事会と言っても、ほとんどの時間は酒を呑んでいますが」

「面白いギルド長さんたちですね」

「そうでしょう。依頼をお願いできますか?」

「はい、喜んで」

ヒメジは気軽に引き受けた。

「それでは、これをどうぞ」

ヒメジは受付から手紙を手受け取った。

「南に向かう定期便は、南の門から三十分後に出ます。それから、この依頼は、王都に戻ったときに、まとめて払うことになっています」

「承知いたしました。それでは行って参ります」

「いってらしゃい」

ヒメジは受付に言われた通り急ぎ足で南門へいくと、ぎりぎり定期便に間に合った。幌馬車に乗るとショコラが乗っていた。

「おや、奇遇ですね」

「ショコラさんも冒険者ギルドの依頼ですか?」

「そうなのです。次の停車場の村の近くでゴブリン退治です」

「ゴブリンですか?」

「そうです。最近、数匹のゴブリンが、農家のニワトリや山羊を襲って食料にしているので、人助けと思い依頼を引き受けました」

「偉いですね。私は単なる手紙の運搬係です。これも大切な仕事ですが、ゴブリン退治のようなランクの高い依頼は引き受けられません」

「いいえ、ランクなんて関係ないですよ。人のために役に立てば、立派な冒険者ですよ」

「ショコラさん、ありがとう。そう言われて嬉しいです。私も誇りを持って依頼をこなしますよ」

「そうしてください、ヒメジさん。頑張ってくださいね」

二人が話をしている間に、定期便は出発した。空は晴天でそよ風が吹いている。定期便の中にも心地よいが風が吹き抜けていた。

「ショコラさん、今日もいい天気で、風が気持ちいいですね」

ヒメジは、心地よい風を堪能していた。

「本当にそうですね。気持ち良い風が吹いていますね・・・。ところで、ヒメジさんはダンジョンをご存じですか?」

「ええ、聞いたことはあります。いくつかあるそうですね」

「ええ、この大陸にはダンジョンがたくさんあって、お宝がたくさん眠っているらしいですよ」

「でも、私はダンジョンが苦手です」

「そう言わないで力試しだと思って、簡単なレベルの低いダンジョンから挑戦してみてください」

「力試しだなんて、戦闘力がほとんどないですから無理ですよ」

「そんなことないですよ。パーティーを組んで攻略することだってできます。ヒメジさんは優しいから戦闘力のある女性と組んだらいいと思いますよ。上手くいけば、その女性といい関係になるかも知れませんね」

「ない、ない。からかわないでください。いままでモテたことがないのですから、絶対そんなことはないです」

「そう言いますが、パーティーを組んで結婚した冒険者は山ほどいますよ。ヒメジさんもチャンスはありますから悲観しないでください」

「それは若くてイケメンでかっこいい冒険者でしょう。こんなおじさんに言い寄ってくる女性の冒険者なんていませんよ」

「『蓼食う虫も好き好き』と言いますから、それはわかりませんよ。まあ、仮定の話は、置いといて、ファースト国で有名なダンジョンは・・・」

二人が夢中になってダンジョン話で花が咲いている間に、定期便は次の停車場である村に到着した。


 「あしたは、午前八時には出発しますので、ご用の方は乗り遅れないでください」

騎手は言って立ち去った。その後、二人は村の食堂兼酒場兼宿屋で酒を飲みながら、ダンジョンの話の続きや小麦商にだまされたことや猫ににらまれたことなど会話を楽しんだ。二人がそれぞれの部屋に入ったのは夜が更けた頃であった。それぞれが眠りにつこうとベッドで横になった時、突然、酒場の方から大きな物音が聞こえた。

「ガタン ゴロゴロ」

ヒメジとショコラは同時に部屋を飛び出して酒場に向かった。他の宿泊客も酒場までやってきた。二人が酒場を見ると、女性が頭から血を流して倒れていた。周りにはいすが転がっていた。女性は息をしているが意識がない。

「とりあえず、回復薬を飲ませなくては。だれか、薬を持っていますか?」

ショコラは叫んだ。その横でヒメジが、

「私、持っています。今から部屋までとってきます」

二階の自分の部屋まで駆け上がった。そして、自分の部屋でアイテムボックスから二十ミリリットルの上等のハポーションを取り出すと、一階まで持って降りていった。

「これを飲ませてください」

ヒメジはショコラに薬を渡した。ショコラはそれを受け取ると、女性の口に薬を近づけて流し込んだ。しかし、女性は気を失っているのでうまく飲むことはできない。そこで瓶に残っている薬を、怪我をしている頭部にかけた。頭の傷はみるみるうちに回復したが、女性の意識はまだ戻らなかった。


いかがでしたでしょうか。新しい場所では事件が起こりました。べたべたの物語なので皆様はこの後のストーリーは想像できると思います。次回は予想したとおりになっているのか確かめながら読んでくださいね。

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