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いつも愛読いただきありがとうございます。人間は誰でも失敗があります。主人公がいくら五十代であったとしても失敗はつきものです。今回はドジで間抜けな主人公です。楽しんで読んでください。

 八日目は晴れだった。この時期は猫の盛りの季節のようだ。今日もあちらこちらから、

「にゃ~、にゃ~」

「にゃ~、にゃ~」

「にゃ~、にゃ~」

「にゃ~、にゃ~」

「にゃ~、にゃ~」

猫が鳴いている。

「にゃ~、にゃ~、にゃ~、にゃ~、言うにゃ~」

言いたいところを我慢して、目が覚めたヒメジは支度をすると一階に降りた。井戸へ行くと一匹の三毛猫がヒメジを見るなり、

「シャー、シャー」

言い始めた。何もしていないヒメジに威嚇してくる三毛猫。それでも大人として振る舞うヒメジは、知らないふりをして顔を洗った。そして食堂へ行くと朝食を食べた。歯を磨きに再び井戸へ行くと、同じ三毛猫が再び、

「シャー、シャー」

言ってくる。しばらくは無視を決め込んでいたが、井戸から水を汲んでいる時、相変わらず

「シャー、シャー」

「シャー、シャー」

威嚇してくる。あまりのしつこさに怒りがこみ上げてきたヒメジだが、子どもの時から猫には、

「シャー、シャー」

言われ続けているので、

(猫には嫌われているのだろう。いつも通りさ)

そう思うことで怒りを抑えた。しかし、歯磨きをしている間も、

「シャー、シャー」

口をうがいしている時も、

「シャー、シャー」

布で口を拭いているときでも、

「シャー、シャー」

(俺は何も悪くないぞ。なんで威嚇してくる。この三毛猫め)

いい加減、猫の威嚇にうんざりしたヒメジは、振り向いて猫に背を向けると、猫に向かって『プ~』と屁をかまして、その場からすぐに立ち去った。猫はその屁の匂いにまいったのか

どこかへ走って行ってしまった。

(私の屁はとても臭いから、あの三毛猫は逃げ出したのだろう。ざまあみろ)

大人気も無い行動を取ってご満悦のヒメジは、意気揚々と部屋に戻って出発の用意をした。

(今日はどこに行こうか。そうだ、この町は小麦が有名だからこれから市場へ行こう)

ヒメジは部屋の鍵を宿屋の亭主に渡すと市場へ向かった。


 東の町には市場の筋が四本あり、主に小麦中心のファースト筋、雑貨関係のセカンド筋、武具関係のサード筋、食料関係のフォース筋と言われている。ヒメジは、真っ先にファースト筋へ行った。小麦店に入ろうとしたときに、若い男に声をかけられた。

「おじさん、小麦を買いに来たのだろ。いい小麦あるぜ」

「いい小麦?」

「ああ、臼でひいた小麦粉さ。こちらに来てみてみろよ」

男はヒメジを呼び寄せると麻袋の口を広げて中に入っている小麦粉を見せた。

「いい小麦粉だろう。もし買うのなら大鉄貨五枚に負けとくよ」

(うさんくさいな。でも、ものはいい小麦粉だ)

「何袋ある?」

「いいね、おじさん。二十キログラム入った麻袋が千袋ある。どうだい。代金は全部で銀貨五枚だ」

「いいのかい。相場は二十キログラム入った麻袋一つで銅貨二枚だろう」

「大丈夫さ、農家から直接、卸してもらっているから、この値段になるのだよ」

「それにしても随分安いな」

「これでもこちらは利益があるから気にしなくてもいいよ」

「そうなのか、それでは千袋全部いただこうかな」

「毎度あり。品物は東の端の倉庫にあるからいつでも持っていきな。猫ハウスと書いてある倉庫だ。それでは代金を」

若い男は手のひらをヒメジに向けた。ヒメジはカバンに入った巾着袋を取り出し、そこから銀貨五枚を取り出すと男の手のひらに置いた。

「それじゃ、これで」

男は麻袋を持ってヒメジから遠ざかっていった。

「お買い得な買い物をした。朝からラッキ~」

そう思いながらヒメジはルンルンと上機嫌になった。そして、誰もいない細い路地に入るとネットを開いた。

「なるほど。この道をこうしてこう歩けば猫ハウスに行けるのか。ようし猫ハウスに行くぞレッツゴー」

ヒメジは小麦粉を安く手に入れたことが嬉しくて顔を時々にやけさせながら東の端にある猫ハウスに向かった。倉庫に着くと、

「よし、ここが猫ハウス倉庫だな」

扉を開けてヒメジは意気揚々と中に入り、麻袋の中身を確認しようと一袋持ってみた。

「あれ? 軽いぞ」

不安に思ったヒメジは麻袋の口を開けた。その時、背中に一瞬冷や汗が流れたように感じた。

「まさか。中身は・・・白くない。やられた!」

麻袋の中に入っていたものは籾柄だけだった。

「が、が、が、がび~ん。他の麻袋はどうかな?」

「これも、籾柄」

「これも、籾柄」

「これも、籾柄」

「これも、籾柄」

いくつか調べた麻袋の中はすべて籾柄だった。

「えええ~。うそだろう~。だ ま さ れ た ! 値段が安いのでおかしいなと思ったのだよ。あのとき疑っていたらこんなことにはならなかったのに。がっかり」

ヒメジは、その場でうなだれながら落胆した。顔にはたくさんの縦線が走り、誰が見ても落ち込んでいるのは明らかだった。

「糞・糞・糞。よくも騙してくれたな。あ~あ、銀貨五枚損した。腹立つ~」

ヒメジは地面にある小石を拾うと地面に向けた思いっきり投げた。小石は地面に跳ね返ると、ヒメジの右足のすねに当たって、ヒメジは、

「痛い~」

大声を上げてその場に座り込んだ。すねが次第に腫れてずきずきしてきた。どうやら骨が折れたようだ。ヒメジはアイテムボックスから二十ミリリットルの薬瓶に入った回復薬を取り出すと、一気に飲み干した。悶絶していたヒメジもしばらくすると足の痛みが治まり、やがて立つことが出来るようになった。

(ふう、痛みが治まってきた。それにしても泣きっ面に蜂だな。プロテクトリングを指にはめているから怪我することないのにおかしいな)

ヒメジがプロテクトリングを身につけている右手を見るとリングがなかった。

(え? プロテクトリングがない。ない。ない。どこにやったのだろう。まいったなあ~)

再びヒメジの顔が真っ青になった。ヒメジは上着のポケットの中に手を入れたがそこには何もなかった。続けてズボンに手を入れると、右のポケットにリングが入っていた。すぐにとりだして右手にはめるとリングが指より大きくてぶかぶかだった。そこでヒメジは、左手を右手にかざして、

(プロテクトリング、私の指にぴったり当てはまって入れ)

祈りながら

「オール クリエーション」

唱えた。右手につけたリングが一瞬光って収まると、プロテクトリングが一回り小さくなった。そして、ヒメジが左手でプロテクトリングを抜き取ろうとしても、簡単には取り外すことが出来なかった。

(よしこれで大丈夫だ)

ヒメジはほっとして気持ちが落着くと、目の前にある籾柄をどうしようか考えた。そして、

(仕方ない。この籾柄、いつか役に立つ時が来るかも知れないから、全部アイテムボックスに入れておこう。それにしてもこれだけの袋を手で入れるのは面倒だしうっとうしいなあ~。・・・どうしよう。よし、ダメ元でいいから試してみよう)

ヒメジはアイテムボックスを開いて、

「麻袋よ、アイテムボックスに入れ」

唱えた。すると、千袋の麻袋が勢いよくアイテムボックスに入って行った。作者とすれば、汗をかきながら荷物をアイテムボックスに入れたかったのだが、そうすると若くない主人公をこき使って過労死にしてしまうので、ご都合主義で、アイテムボックスに吸い込まれる機能を付け加えることにした。

(よし、上手くいったぞ。これで、たくさんの品物も簡単にアイテムボックスに出し入れできる。ナイスアイデア、ヒメジ。よく考えた)

ヒメジはその場でガッツポーズをした。


いかがでしたでしょうか。この主人公は勉強して人には騙されないように気をつけたいものですが、本当に治せるのか作者でも分かりません。どうなるのか楽しみにしてください。

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