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いつも愛読いただきありがとうございます。旅が始まって四回目ですが、今回は北の村というところに行きます。楽しんで読んでください。

 宿屋に着く頃には夕方になっていた。前金を払い部屋を借りると、カバンを部屋に置いてすぐに食堂へ向かった。今日はアルコールが飲みたかった。

「いらっしゃい。何にしますか」

太った中年の女性が注文を取りに来た。ヒメジはビールと言ってもわからないだろうと思い、

「麦芽とホップで作られた飲み物と野菜料理をください」

注文すると、

「ビールと野菜料理ね」

太った中年女性が言い直した。

(なんだ、ビールで通用するのかよ)

ヒメジは自分が配慮したことが無駄だったことにがっかりしたが、目の前にビールと野菜料理が出てくると、すぐに立ち直って、ビールを飲み始めた。

「ぐび、ぐび、ぐび、ぶは~。うまい!」

ヒメジはジョッキに入ったビールを一気に飲み干した。

「すみません、ビールをもう一杯ください」

ヒメジはビールがくるまで野菜料理を食べていると、

「北の村には近づかない方がいいぞ」

「ここから一時間ほど歩いた村か?」

「ああそうだ。なんだか得体の知れない病気がはやっているらしく、村人が全員寝込んでいるらしい」

「得体の知れないってことは?」

「ああ、今、流行の風邪の症状から始まり数日後に水泡が全身にできる病さ。死者も数名いるそうだ」

「それは、治療薬がない病じゃないか」

「上等のハイポーションなら治療できるようだが値段が高くて村人は手が出せない」

「気の毒に。私も病をうつされたら大変だからあの村には近づかないようにするとしよう」

「そのほうがいい」

二人の中年の男の話が耳に入ってきた。今、ヒメジにはその上等のハイポーションを持っている。

(世の中で村人を助けられるのは自分しかいない。そして助けるならいまでしょう)

ヒメジは酔いに任せて妙な正義感を持ってしまった。妙な正義感? いや、作者としては正確には、ストーリーを進めるためのご都合主義で、ヒメジが勇者になるためのふりのような深い意味は持っていません。

「おまちどおさま。ビールですね」

女性がビールを持ってきた。

「ありがとう」

ヒメジはおかわりしたビールを飲み、野菜料理を食べ干すと食事の代金大鉄貨一枚と鉄貨六枚を払って宿屋を出て村に向かった


 ヒメジは月明かりを頼りに、購入した小魚に細工をしながら西の町から北へ一時間ほど歩くと小さな村が目に入った。ヒメジは村の中で一番大きな家の前まで行き、その家の扉をたたいた。

「こんばんは」

「どちら様ですか」

男の声がした。それを聞いてヒメジは話を始めた。

「私は薬屋です。病気で薬が必要と聞いて参りました」

「野盗ならどうぞ入ってものをとってもいいですよ。ただし、病気をうつされてもいいのなら」

「私は本当に薬屋です」

「薬屋でも野盗でも今の私たちはどうでもいいことです」

「わかりました。それでは入りますね」

ヒメジはノブに手をやると、鍵はかかっておらず、簡単にあけることができた。

初老の夫婦が二人ベッドで横になり高熱でうなっている姿がヒメジの目に入った。

「大丈夫ですか」

「わしらはもう駄目かも知れない」

「どうぞこれを飲んでください」

ヒメジは初老の男に薬を飲ませた。するとみるみる初老の男の顔色が良くなり、全身に出ていた水泡が小さくなって病状が改善されていった。

「あなたもどうぞ」

ヒメジは初老の女性にも薬を飲ませた。初老の女性も症状が改善され穏やかな顔つきになった。

「本当の薬屋さんだったのですね。疑ってすみません。そして、病気を治してくださりありがとうございます」

初老の男はベッドから起き上がって言った。

「とんでもない、ところで村の人は全部で何人ですか?」

ヒメジが質問すると、

「はい、全部で三十六人です」

初老の男は答えた。

「それでは皆さんのお薬を用意しますので、お部屋をお借りできますか? それから、調合しているときに集中する必要がありますので誰も入らないようにしてください」

「分かりました。それでは、この部屋をお使いください。お声がかかるまでは私たちは居間にいますので、いつでも声をかけてください」

初老の男が自分の使っている書斎の部屋を貸してくれた。部屋に入ると、ヒメジはアイテムボックスから道具を取り出し、一リットルの薬瓶を持って二十ミリリットルの薬瓶に上等のハイポーションを注ぎ始めた。まだビールの酔いが少し残っていたので瓶から薬をこぼさないように慎重に作業を行った。そのため少し時間がかかったがなんとか村人分三十六本入れ終わることが出来た。それから、薬が入っている二十ミリリットルの薬瓶以外の道具はアイテムボックスに直して部屋を出た。

「お待たせしました。調合が終わりましたので皆さんに飲ませてください」

「ありがとうございます。なんとお礼を言えば良いか」

初老の男がヒメジに話しかけたが、ヒメジはそれをさえぎり、

「さあ、皆さんに飲ませてください。急いで」

初老の男女に薬を持たせて村中に回らせるように声をかけた。そして、初老の男女が村をまわっている間に、ヒメジは西の町に向かって歩き始めた。

「自分の名前も言わずに人助けするなんて、なんて私は格好良い人なのだ。ナイス ハンサムボーイ」

自分の行動に酔いながら西の町へ歩き始めた。ヒメジは機嫌良く歩いていたが、西の町まであと半分というところで、急に何者かに囲まれた。今度は人間ではない気配だ。前方に二つの目がヒメジをにらみつけている。右を見るとやはり二つの目がにらみつけている。左にも後ろにも全部で八つ目がヒメジをにらみつけている。そして前方の目から、

「ぐるるるるる」

うなり声を聞いた。

(オオカミだ! どうしよう。死にたくないよ~)

ヒメジは恐怖のため体が動かずにその場に立ちすくんだ。オオカミ達は、

「ぐるるるるる」

うねり声を立てながら一歩また一歩とヒメジにゆっくり近づいてくる。やがて、ヒメジに跳びかかろうとする寸前で、ヒメジはアイテムボックスに手を入れると、中から小魚を前方のオオカミの前に投げ出した。前方にいたオオカミは魚の匂いをかいでいたが、それが食料であることに気がついて食べ始めた。他のオオカミも、仲間のオオカミが魚を食べているところを見て、落ちている魚のところへ走って行き、魚を食べ始めた。ヒメジは食べている間に逃げだそうとゆっくり後ずさりしていると、魚を食べていたオオカミの一匹がヒメジをにらんできた。

「魚をあげただろう。私はおいしくないから、もう立ちさりな」

ヒメジはオオカミに声をかけたが、オオカミたちは聞く耳を持たない。再び、

「ぐるるるるる」

うなり声を立てながらヒメジにゆっくり近づいてくる。ヒメジは、

「もう駄目だ。襲われる~」

後ろを振り向いて逃げ始めた。この時にはビールの酔いが一気に冷めていたのでヒメジは全力で走った。それを見たオオカミたちは、勢いよく走り始め一匹のオオカミがヒメジの足に噛みつこうと飛び跳ねた瞬間、そのまま地面に落ちて口から泡を吹いて倒れた。他の三匹もばたばたと倒れて四匹とも動かなくなった。

「やっと効いたか」

ヒメジは魚に毒を含ませていたのだ。それを食べたオオカミは毒が全身に回って死んでしまった。

「あまり殺生はしたくはないが自分の命を守るためには仕方がないな。せめてお墓だけでも作ってやろう」

ヒメジは四匹のオオカミの亡骸を草むらにあるくぼみに放り込み、オール クリエーションを使って土を盛りお墓を作った。作り終わると、

「変な正義感を出して村人を助けた帰りがこのざまとは。私もほとほと運がないと見える。だいたい良いことをすれば因果応報で良いことが回り回って自分にやってくるはずなのに、なんでこんなに不運なのだ。だいたいこの異世界に来たときの場所も・・・糞、糞、糞」

ヒメジはぶつぶつぼやきながら、他にオオカミがいないか鑑定の能力を使い、用心深く西の町まで戻っていった。


いかがでしたか。はじめて戦闘? シーンを設けましたが、気の弱い五十代のおじさんですから、せいぜいこの程度しか戦えないかなあ~っと思っております。この後の物語はどうしようか現在思案中です。楽しみにしてください。

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