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いつも読んで頂きありがとうございます。この作品にお時間を割いて頂いていることを大変感謝しております。前回、討伐隊が活躍したので、今回はそれを受けて物語を進めています。それでは皆様ゆったりと読んで頂けたら幸いです。
「こんにちは」
ヒメジは冒険者ギルドの受付の細身の若い女性に声をかけた。
「ヒメジさん、こんにちは。ギルド長がお呼びですよ。『二階のギルド長の部屋まで来てください』と伝言を頼まれています」
「わかりました。それでは二階へ上がりますね」
「どうぞ、良い知らせだといいですね」
「ええ、期待しています」
そう言いながらも、ヒメジはネットで見ていたので討伐隊の成功の知らせだと確信していた。ヒメジはギルド長の部屋のドアの前に行き三度ノックをした。
「どうぞ、お入りください」
中からギルド長の声が聞こえたので、ヒメジはドアを開け部屋の中に入った。中には少年がいたが、ヒメジの顔を見るなり、
「ありがとう、おじさん」
お礼を言った。それを聞いたヒメジはギルド長に向かって、
「討伐隊はうまくいったのですね」
話すとギルド長は大きく頷いた。
「やったぁ~」
ヒメジはその場でガッツポーズをして喜んだ。
「良かったな、少年。もうすぐ両親に会えるぞ」
「うん、おじさんが誘拐された人の場所を教えてくれたおかげだよ」
「いや、討伐隊の人が頑張ってくれたおかげだよ。で、ギルド長さん討伐隊の人たちはいつ戻ってくるのですか?」
ヒメジはギルド長に尋ねた。
「そうだな、明日の昼頃にはこの町に到着するだろう。国王様の取り計らいで、とりあえず誘拐された人たちもこの町でしばらく暮らすことになった。落ち着いたら、少しずつ村の再建をしてもらうつもりだ」
「それは、よかったです。村人達は喜ぶでしょう。さすが、国王様ですね」
「ああ、慈悲深い国王様だからな」
ヒメジはギルド長の言葉を聞いて笑顔で頷いた。そして、少年の方を向き、
「少年よ、明日には両親に会えるぞ」
元気な声で言った。すると、少年はその場で立ち上がり
「やった~、万歳」
言ったので、ヒメジも立ち上がって、二人で、
「やった~、万歳」
ハイタッチを何度もした。
「ごほん」
ギルド長が咳払いをすると、ヒメジと少年はハイタッチをやめて顔を見合わせると、咳払いをしたギルド長の意図を読み取り、静かにソファに座った。
「ヒメジさん。お礼をしなければいけないな。何がいい」
「何もいりませんよ。と格好良く言いたいのですが、私は頭を打って記憶喪失なのです。ですから、いつか資金を貯めたら自分探しの旅をしたいと思っていますので、各国の冒険者ギルドにもご配慮をお願いしたいのです」
「よしわかった。ヒメジという冒険者が冒険者ギルドに着た時には、便宜を図るように伝えておこう」
「ありがとうございます」
「しかし、セブンス国とナインス国には気をつけなされ。その二つの国は内乱状態で国内が乱れておる。冒険者ギルドはあるが、治安が悪くて今は閉店している状態だ」
「わかりました。その国は通らないようにします」
「その方がいいだろう。ところでヒメジさんはこの後どうされる? 少年と一緒に村人を迎えに行かれるか?」
「いいえ、私はこれがないので少し稼ごうと思っています」
ヒメジは右手の親指と人差し指をつなげて丸い形を作ってギルド長に見せた。
「そうか。それなら掲示板にたくさん依頼が貼っているからたくさん稼いでください」
「はい、頑張ります。それでは、私はこれで失礼いたします」
「ああ、さようなら」
ヒメジは少年の方を向いて笑顔で声をかけた。
「少年よ、元気でな」
「おじさんもね」
二人は握手をした。五秒程度の握手であったが、少年はヒメジの手を強く握って、
「ありがとう」
感謝の気持ちを伝えた。ヒメジは照れてしまい、手を離すとすぐに少年に背中を見せて、
「どういたしまして」
言いながらギルド長の部屋を出た。部屋を出てギルド長の扉を閉めた時に、少年の役に立った自分自身をとても褒めて、
「やったぁ~。さすがヒメジ。よく頑張った」
再びガッツポーズを取った。その後、上機嫌で鼻歌を歌いながら、依頼書が貼ってある掲示板へ歩いて行った。
ギルド長の部屋から退出して掲示板で見つけた依頼は二件とも家の壁の修理であった。両方ともオール クリエーションを使って一時間ほどで終わらせて、冒険者ギルドに戻り、サインした依頼書を受付に渡して報酬の銅貨四枚をもらった。報酬をもらいながら受付の細身の若い女性に驚かれていた。
「さっき依頼書を持って出たばかりなのにもう二件とも終わったのですか? 本当にヒメジさんは仕事が早いですね」
「いいえ、依頼が簡単でしたからすぐにできたのですよ。たまたま良い依頼に巡り会いました」
「そうですかね。両方とも普通の人なら半日仕事なのですが・・・」
「修理と言ってもそれほど手をかけなくてもよかったものですから、もちろん、サボっていませんよ。依頼はきちんとこなしていますから、疑わないでくださいよ。ほら、サインもちゃんと書いてもらっているし」
「本当にサインをもらっていますね」
「でしょう。私はきちんと働いています」
(オール クリエーションで簡単に依頼を終わらせているから、疑われるのも無理ないか)
「まあ、いいでしょう。どのような手段を行っても依頼を済ませばいいだけですから」
「ですよね」
「くれぐれも、依頼者を脅迫して、依頼が終わっていないのにサインを書かせないでくださいね。もしそうした場合は、冒険者ギルドの信用を損なった罰を受けてもらいますからね」
「罰を受けるとは・・・」
「そうですね、死んでもらいます」
「死、死ぬのですか。罰金や牢屋に入れられるのではなくて」
「当たり前です。それほど依頼を受けることは大切なことですからね。くれぐれも依頼は真面目にこなしてください」
「も、もちろんですよ。私は今まで真面目だけが取り柄のおじさんですから、冒険者ギルドの信用を損なう行為は絶対にいたしません。信じてください」
「あんまり、新米冒険者をからかっちゃいけないよ」
横から受付の年配の男性が受付の細身の若い女性に声をかけてきた。
「済みません。あまりには早く依頼を終わらせたので不正をしないように釘を刺していました」
「気持ちは分かるが、この人冷や汗をかいて震え上がっているじゃないか。もうその辺でおしまいにしよう」
「そうですね」
「そろそろ交代の時間だ。下がって休憩しておいで」
「もうそんな時間ですか。それでは後を宜しくお願いします」
細身の若い女性は笑顔で立ち去っていった。ヒメジの受付の相手は、穏やかで優しそうな年配の男性に変わった。
「ヒメジさんでしたね。『死んでもらう』というのは彼女の冗談ですよ。しかし、冒険者ギルドの信用を損なった行為を行いましたら、その程度によって罪を受けてもらうのは本当です。罰金で済む場合や牢屋に入ることもありますし、国外追放もありますので気をつけてくださいね」
「はい、気をつけます」
「私はヒメジさんが、そのようなことを行わない人だと信じていますので、依頼を頑張ってこなしてください」
「はい、頑張ります。それから、助け船を出していただきありがとうございます」
「いいえ、どういたしまして」
「それでは私はこれで失礼いたします」
ヒメジは冒険者ギルドを出たが、その時にバケツに入った水を頭からかぶったように冷や水が全身から流れていることに気がついた。
「本当に主人公が活躍しない物語だな」と思われる皆様、その通りです。ドジでも間抜けでももう少し活躍する場面を設ければいいのですが、五十代のおじさんですからね・・・。これから、どうなるのか楽しみにしてください。




