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いつも読んで頂きありがとうございます。本日も投稿します。楽しんで読んでください。
ヒメジは宿屋の亭主に部屋の鍵を返して薬屋に向かった。まだ、雨が降っていたが、傘を持っていないので駆け足で店に行った。店に着いたときにはずぶ濡れになっていた。扉を開くと、
「いらっしゃい」
店主の声がした。
「おや、ずいぶん早いことで」
店主はヒメジを見ると驚いた声で言った
「昨日、ここに来いと行ったから来ましたよ」
少し自慢げにヒメジが返事をすると、
「お前さんは素直なやつだな。よし、裏の倉庫までついてこい」
店主はヒメジを倉庫まで連れて行った。倉庫は学校の教室ほどの広さで、理科準備室のように棚が所狭しと置かれていて、その中に薬や薬瓶などの売り物が整然と置かれていた。店主は中に入るとヒメジに、
「さあ、薬瓶をいくらでも持って行け。その代わり、良い薬を作ってくれよ」
驚くようなことを言った。薬瓶が置かれているところを見ると、二十ミリリットル。一リットル、十八リットルの空の薬瓶が山のように積まれていた。
「ただでもらってもいいのですか?」
ヒメジは店主に尋ねると、
「ああいいぜ。上等のハイポーションを作ってうちに卸してくれるのなら、このぐらいお安いことだぜ」
「いただけるのは嬉しいのですが、本当に何本でもいただいていいのですか?」
「ああ、いいぜ。といっても、そのカバンじゃそんなに持てないだろうな」
(ブブ~。残念。アイテムボックスがあるのでたくさん持てますよ~だ)
ヒメジは心の中で店主に間違いを指摘したかったが、能力をばれるとまずいので亭主の言葉に合せて返事した。
「そうかも知れませんね。まあ、持てるだけ持とうと思っています」
「そうしてくれ」
ヒメジが、どれから薬瓶を取ろうかと倉庫の中を見回していると、薬瓶の横にいろいろな色の薬が置かれているのが目に入った。
「店主さん、薬瓶もらう前に質問してもいいですか?」
「ああいいぜ。何でも聞いてくれ」
「それじゃあ、あの紫色の薬は何ですか?」
「あれは毒だ。水の中に二レン草を入れて煮ると出来るぜ。強力な毒だとドラゴンでも数十秒で倒すことが出来るぞ」
「なるほど。それではその横の、緑色の薬は?」
「あれは予防薬。あらゆる毒や病気を予防できる。サンレン草で作れるぞ。良い予防薬だと一度飲んだら効力が三日は持つぞ」
「じゃあ、あの白色の薬は?」
「一時的にステータスを向上させる向上薬だ。冒険者の必需品だな。ヨンレン草で作れる。この薬も良いものなら効力が一日中持続するぞ」
「最後に、あの飲みたくない茶色の薬は?」
「あ、は、は、は。確かに排出物に似ている色だな。しかし、これは貴重薬だ。ロウナチュラルポーションといって万能薬で回復薬・予防薬・向上薬の効果があり、限定的だが蘇生薬にもなる」
「蘇生薬?」
「肉体が存在していたら、死亡してから十二時間以内に飲ませると蘇生させることができる。ゴレン草で作れるが、他の薬と違って作るのが難しい。この薬は今までロウナチュラルポーションは上等までは存在しているが、それ以上は作られたことがない。もし上等のハイナチュラルポーションが存在するなら、灰になった人間でも蘇生させることができるといわれている」
「いろいろな薬があるのですね」
「そうだろう。お前さんもせいぜい頑張って上等な薬を作り、ウチをもうけさせてくれよ。それじゃ、店番するから薬瓶を勝手に持っていけ」
「ありがとうございます」
店主が倉庫から出て行くとヒメジは十八リットルの薬瓶からアイテムボックスに入れていった。百個ほど入れた後、一リットルの薬瓶を手に取りこれは二百個ほど入れた。最後に二十ミリリットルの薬瓶は少し多めに四百程入れて店に戻った。
「お、戻ってきたか? あんまりもっていないようだがいいのか?」
「ええ、大丈夫です。いい物を持っているので、たくさんいただきました」
「おう、そうかい。それならその駄賃というわけではないが、ここから西に歩いて一日のところにある隣町の薬屋にこの手紙を渡してくれ。同じ看板の薬屋だからすぐにわかるぜ」
ヒメジは店主から手紙を受け取ると、
「いいですが、今日は行けませんよ」
「ああ、急に頼んだのだ。すぐには行けなくていいよ。二、三日の内に行ってくれれば助かる」
「わかりました。それでは」
「ああ、よろしくな」
ヒメジは店を出ると、店の看板を見た。看板には薬瓶とその横に薬草の模様が描かれている。
(昨日来たときに見たが忘れていた。この模様の看板の薬屋を探せばいいのか。よし覚えたぞ。それにしても、年をとったおかげで最近では物を覚えてもすぐに忘れてしまう。記録を残す良い方法はないかな。たとえばネットにスマホの写真機能があればいいのだが)
ヒメジは人通りのない路地に入ると、ネットを表示して記録機能がないかいろいろ調べた。しかし、どこを探しても写真機能はなかった。
(残念。あれば便利なのに、そう世の中上手くいかないな~)
「薬瓶と薬草の模様の薬屋か」
ヒメジが独り言をつぶやくと、ネットの画面に、
【薬瓶と薬草の模様の薬屋】
と口頭入力されて、王都のマップに薬瓶と薬草の薬屋の場所が小さな赤丸で表示された。
(なるほど、マップ機能もあるのか。これは使い方によっては超便利な機能だぞ)
ヒメジは、欲しかったおもちゃを買ってもらった子どものように、
「よっしゃ~」
その場でガッツポーズをして喜んだ。しばらく喜びをかみしめた後、ネットを閉じて、何食わぬ顔をしながら通りを歩き始めた。
雨は上がって曇り空だが、いつ雨が降り出すかわからない天気である。それでも、ヒメジは薬屋で薬品を見せてもらったので、早く自分もいろいろな薬を作りたくて薬草採取に出かけた。
北の城壁の門を超えるとヒメジは鑑定の能力を使った。草原にイチレン草からヨンレン草まで表示が出た。門の近いところから生えている順番に二レン草、サンレン草、イチレン草と採取していった。一秒でも薬草を劣化させないために、採取してすぐにアイテムボックスに入れるので、薬草は採れたて新鮮そのものである。しばらく薬草を採取しているとヒメジは、
「腰が痛い」
いいながら、右手をグーにして腰の辺りを叩き始めた。
(腰を曲げて同じ姿勢を続けていると腰痛になってしまう。若い頃は平気だったのに、はあ~。年を取ってしまったな~)
心の中でぼやきながらも、再び腰を曲げてヒメジは無我夢中で薬草を採取していった。表示されていた薬草を全て採取した後で、薬草を数えると、イチレン草が二十本、二レン草が十六本、サンレン草が十八本、ヨレン草が十四本であった。しかし、ゴレン草はなかった。そこでヒメジは、何度も鑑定の能力を使って辺りを見回して確認した。しかし、いくら探してもゴレン草の表示は出なかった。
「ゴレン草がない。万能薬が作れない。どうしよう」
ヒメジはしばらく考えた後、
「そうだ、ネットで調べればいいのだ」
ネットを開いた。
「ゴレン草が生えている場所マップ」
ヒメジが口頭入力をすると、王都とその回りの郊外がマップで表示された。それを見ると、地図の左側に赤丸の小さな点がついていた。
(地図の上が北だから、左側は・・・西だ)
ヒメジはゴレン草が生えているところを見つけて、
「よし、今度は西門だ」
元気な声を出した。そして、雨が降らないことを祈りつつ、走って西門へ移動した。年甲斐もなく走ったので、西門へ着いた時には息も絶え絶えだった。それでも、
「ぜえ、ぜえ か、鑑定」
草原にイチレン草からゴレン草まで表示が出た時には、
「や、やったあ~」
ヒメジは、大きな声を出して喜んだ。ヒメジは喜々としながら表示されている薬草をすべて採取した。ここではイチレン草が十七本、二レン草が十九本、サンレン草が二十一本、ヨレン草が二十三本、幸運なことにゴレン草が三本も見つかった。全てアイテムボックスに入れると急にお腹が、
「グー、グー、グー」
と鳴った。薬草採取に夢中になりすぎて、もう昼になっていた。
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