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本作品を今回も読んで頂きありがとうございます。皆様に読んでもらうことで励みとなり、十四話まで投稿することが出来ました。これからも、毎日読者の皆様に感謝しつつ、楽しい物語になるように作品をかいていきます。
冒険者ギルドを出ると再び市場の薬屋へ向かった。歩きながらカバンの中に手を入れて、
(アイテムボックス)
心の中で唱えて、そこから薬の入った二十ミリリットルと一リットルの薬瓶を取り出しカバンの中に置いた。
(カバンの中ではアイテムボックスからの出し入れをしても人に見られる心配が無い。さすがヒメジ、あったまいい)
自画自賛しながら薬屋に行った。薬屋に着いたときには夕方になっていたが、店はまだ開いていた。
「いっらしゃい」
「こ、こんにちは」
「おや、お前さんかい、もう薬はできたのか?」
「は、はい、持ってきました」
「透明じゃないだろうな。少し青くなっている物だぞ」
「そ、それが、少し青くなくて」
「なんだと、まさか透明じゃないだろうな」
「い、いえ、そ、その反対でして。も、ものすごく濃い青です」
「見せてみろ」
「こ、これです」
ヒメジは店主に二十ミリリットルの容器に入った薬を見せた。店主はそれを見たとたんに驚きの表情になった。
「これ本当にお前さんが作ったのかい?」
「そ、そうですがどうかしましたか?」
「こりゃたまげた。上等のハイポーションだ」
「そ、そうなのですか」
ヒメジも驚いた。
(鑑定)
心の中で唱えた、すると薬瓶の上に文字が出た。
【上等のハイポーション 蘇生以外の病気、傷を治療できる。価格は銀貨一枚から金貨一枚の範囲で売買される】
(なるほど、本当に上等のハイポーションだ。この店主、買い取り値段をいくらにするのかな)
ヒメジは店主の顔を見ると、店主もヒメジの顔を見て言った。
「大銅貨五枚!」
(安い!)
ヒメジはすかさず言い返したかったが怖くて何も言えなかった。しばらく黙っていると、店主が、
「ウチの店は上等のハイポーションを銀貨一枚で売るつもりだ。利益は折半だ。薬瓶代はウチが負担するから、どうだい。悪い話じゃないだろう」
自慢げに答えた。
「ほ、本当にそうですか?」
「これを見てみろ」
店主は後ろの壁に貼ってある薬の価格表を見せた。
「二十ミリリットル上等のハイポーション 銀貨一枚
二十ミリリットル中等のハイポーション 大銅貨七枚
・・・
二十ミリリットル中等のロウポーション 鉄貨五枚 」
になっている。亭主はヒメジにもう一度強い口調で促した。
「大銅貨五枚でいいな!」
「は、はい」
思わずヒメジは答えてしまった。それを聞いた店主は穏やかな顔になりヒメジに質問した。
「いくら作った? 十八リットルか? 全部うちで買い取るぜ」
(十八リットルは二十ミリリットルの九百倍。大銅貨五枚の九百倍は大銅貨四千五百枚。銀貨だと四百五十枚。大銀貨だと四十五枚。ということは金貨四枚と大銀貨五枚だ。すごい、大金持ちになれるぞ)
「あ、あのう、十八リットルお願いします」
ヒメジが答えると
「おう、この容器に入れて持ってきな」
亭主は十八リットル入る薬瓶とヒメジが見せたサンプルの薬瓶をヒメジに差し出した。ヒメジはそれを受け取るとカバンに入れて宿屋に急いで戻った。ヒメジは宿屋の井戸の前に行くとすぐにカバンから十八リットル入る薬瓶を出して、そこへ水とイチレン草を入れてオール クリエーションで上等のハイポーションを作った。そしてすぐさま、薬屋に持って行った。すっかり日が暮れていたが、店はまだ開いていた。
「こんばんは」
「おう、持ってきたか。お前さんが来るまで店を開けていたのだ。さあ、薬を見せて見ろ」
店主は少し興奮気味に行った。ヒメジは十八リットルの薬瓶を店主に渡すと、一日動き回っていたため疲れて、その場にしゃがみ込んでしまった。
「疲れた」
「ご苦労さんだったな。約束通りの値段で買い取るぞ、ほら金貨四枚と大銀貨五枚だ。それにしても、お前さんこれで大金持ちになったが、これからどうするのだ?」
ヒメジはしゃがみ込んだままお金を受け取ると答えた。
「くたびれて、いまは何も考えられない」
それを聞いた店主は、
「それじゃウチ専属の薬屋になれ。お前さんの腕なら、ウチは高く買い取らせてもらうよ。ウチも良い薬を人々に売って儲けられるから、お前さんもわしも客もWIN、WINだ。あ、は、は、は」
話しながら笑い出した。
「そうですね。よろしくお願いします」
立ち上がると、店から出ようとした。背中から、
「明日また来いよ」
の店主の声を聞こえたが、疲労困憊のため返事をしないですぐに宿屋に戻って、ベッドに潜り込んだ。
ヒメジがこの世界に来て三日目の朝は雨だった。ヒメジは日が昇ってから起きたが窓から外を見ると薄暗かった。早朝で小雨が降っていたため誰も外には出ていなかった。小腹が空いたのでヒメジは、アイテムボックスから昨日のパンの残りを取りだしてほおばった。口の中で水分がパンに取られてしまうので、飲み物が欲しかったが、昨日、作った薬しかない。それを飲むともったいないので、パンを何回もかみながら唾液で飲みやすくしてゴクリとのどを通した。二口目は、ほおばらずに小さくパンをちぎって口に入れた。 一口目より水分が取られず、よくかむとパンの甘みが出ておいしかった。次々とパンをちぎっては口の中に入れて、すべて食べてしまった。今まで慌ただしかったので、異世界に来てゆっくり食事をしたとはじめて実感した。ヒメジは食べ終わると自分のステータスが気になった。異世界にきた人間はステータスが現れて、自分の能力がわかるが、今まで見たことがないので自分の実力がわからない。以前読んだ本の中にある言葉を唱えた。
「ステータスオープン」
すると目の前に画面が現れた。
【ステータス 名前 ヒメジ 年齢 五十代 職業 おじさん ・・・】
しばらく画面を見ていたヒメジは首をうなだれた。
(職業 おじさんって何だ? 戦士とか魔法使いとかじゃないのかよ。それに生命力や精神力、魔法力なんて最低数値だし、他の能力スキルもほぼ無いに等しい。勇者として召喚されたのに戦闘要員としては役に立たないステータスなのはどういうことだ。そして最後には『加齢とともに能力値は下がるかも知れません』とご丁寧に注意書きまである。がっかり。ただ、事務能力と営業力、あと調整力が高いぞ。何の役に立つのだろう)
ヒメジはステータス画面を閉じてベッドに横になりながら自分のできることを考えた。
(剣士、魔法使い、盗賊、僧侶、射手などの戦闘系は全然駄目。工業系はオール クリエーションで多少はなんとかなるか。食堂や宿屋のようなサービス系は苦手だし、輸送系はアイテムボックスで大量には運べるが、野盗や魔物に襲われる可能性がある旅の道中が心配だ。芸術系はからっきしだから、後は鑑定・アイテムボックス・ネットを使って商業系や農業系ぐらいか)
ヒメジは考えるにつれて、だんだんへこんできた。
(何のために召喚されたのだよ。素晴らしい戦闘系の能力を持ち、敵をばったばったと倒して女性にもてるお約束の異世界物語ではないのかよ。これじゃ、何のお役にも立たないお荷物おじさん異世界物語ではないか)
ヒメジは、布団をかぶってふてくされていたが、
(まだまだ若いから? 努力して、商業系で大金持ちになってハーレムを築いてやるぞ)
そう考えることより、ヒメジは元気を出してベッドから降りて床に立ち上がった。
「よし、金持ちになるにはまず薬作りからだ」
一階に降りて宿屋の裏の井戸に向かった。空の寸胴が二つあるのでそれに水を入れるためだ。少し雨に濡れながら井戸水をくみ寸胴に入れていく。二つとも水を入れ終わると寸胴をアイテムボックスに戻して再び自分の部屋に戻った。部屋で二つの寸胴にイチレン草を四本ずつ入れてオール クリエーションで回復薬を作り、アイテムボックスに戻した。
「出来たぞ。私のハーレム王国を築く第一歩だ」
次に、昨日作った寸胴に入った回復薬を出し、空の二十ミリリットルの薬瓶に回復薬を入れた。その後アイテムボックスを確認した。その中には寸胴三つと薬の入った二十ミリリットルの薬瓶十本と一リットルの薬瓶一本。イチレン草が七本と金貨四枚、大銀貨五枚、銀貨一枚、鉄貨七枚である。
「これから、大金持ちになってやるぞ。目標は金貨一千枚だ!」
自分を奮い立たせるために言っているだけであって、簡単には大金持ちになれないことぐらいヒメジは分かっている。しかし、次第に落ち込みから回復して気持ちが落ちついてきた。
「ふう、やっと落ち着いた。まあ、戦闘系でなくてもなんとかなるでしょう」
気持ちを切り替えると、ヒメジはベッドから起きて身支度を始めた。
私たちは毎日一つの出来事だけでなく、いくつかの出来事が時系列に沿ってあります。この物語の主人公も同様ですので、いくつかの出来事を時系列に沿って書いています。あれ? あの事件はどうなったのかな? 思われる部分もあるでしょうが、必ず時系列で解決していきますので、時系列に沿って楽しんで読んでください。




