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読者の皆様いつも本作品を読んで頂きありがとうございます。新しい展開となり主人公の能力を活かしつつどのように事件を解決しようかと悩みながら作品を書いています。主人公は、ただのおじさんですので、ヒーローのように格好良い場面はありません。しかし、悪い人ではないですので、いい加減な言動も大目に見て頂ければ助かります。楽しんで読んでください。
ヒメジは用を足しながら、
(少年は今頃、何をしているのだろう。冒険者ギルドでいろいろ話を聞かれているのだろうな。そういえば少年が言っていたグリーンクロウ団って何だろう。『ケイブ、ケイブ』という言葉も気になる。でも、もう自分には関係が無いからなあ・・・。でもどうしても気になる。年を取るとお節介になってしまう。いけないことだな)
座りながら考えていると携帯が目の前に現れ、やがて消えると、
(ネット)
言葉が浮かんできた。
「ネット」
二十七型のテレビ程の大きさの画面が目の前に現れてインターネット? ができるようになった。
「グリーンクロウ団」
口頭入力をすると画面に文字が出てきた。
【グリーンクロウ団 フォース国の山林地帯に拠点を持ち誘拐して身代金や人身売買で収入を得ることを生業としている。団名は緑のマスクと胸にカラスの羽をつけているところから呼ばれるようになった。・・・(中略)・・・明後日、奴隷商人に奴隷を売るために、フォース国のサウス湖の南にあるフォース国最大の洞窟へ約百人の人を閉じ込めている】
「ケイブ」
口頭入力をすると画面に再び文字が出てきた。
【ケイブ シックスス国の言葉で一般に洞窟をさす。洞穴や穴の意味もある】
「フォース国の洞窟」
【フォース国の洞窟 約二百の洞窟があるその中で一番大きいのがサウス湖の南にある洞窟である。それ以外にもサウス湖の周りには五つの大きな洞窟があるが、・・・】
(なるほど、そういうことか。ん? こちらでもネットが使えるのなら、ネットショップで買い物もできたら便利だぞ)
「ネットショップ」
しかし、ネットショップが表示されない。画面には、
【ネットで買い物ができる店】
だけ表示されていた。いくら見ても表示は変わらず、
「え! ネットショッピングができないのか、糞・糞・糞。残念」
ヒメジは肩を落としてがっかりした。ヒメジはだすものをだすと、用を足すところから出た。そして部屋に戻ろうと歩いている時に、ネットで知った情報を冒険者ギルドへ伝えに行こうか、やめようか悩んだ。
(もう冒険者ギルドに任したのだから私には関係が無い。冒険者ギルドで上手く解決してくれるだろう。しかし、もし上手くいかなければ、少年は二度と両親とはあえなくなくなるのか。それはかわいそうだな。・・・。よし決めた。市場で助けたのも何かの縁だから、少年のためにもう一肌脱いでやろう)
ヒメジは、向きを変えて、冒険者ギルドへ歩き始めた。ただ、
「ネットで調べました」
なんて言っても信じてくれないので、上手く取りはからわなくてはいけない。歩きながらどのように伝えようかヒメジは考えていた。そしてヒメジが冒険者ギルドの建物前に来た時に、やっと、良い伝え方を思いついたので、
「よし」
かけ声を出して中に入っていった。
「こんにちは」
ヒメジが受付の細身の若い女性に話しかけた。
「あの、さっきの少年の件でお話があります」
「どうされたのですか?」
「急ぎの話です。『ケイブ』の意味がわかりました。また、さらわれた人たちの居場所も分かりましたので担当者に会わせてください」
「ちょっと待ってください。」
一旦席を外した受付の女性が戻ってきて、
「私と一緒にこちらまで来てください」
言って歩き始めた。受付の女性の後をついて行ったヒメジは、冒険者ギルドの二階にあるギルド長の部屋の前まできた。そして受付の女性に、
「この中にお入りください」
促されてヒメジはギルド長の部屋の中に入った。中には少年の他に頭髪が薄いギルド長、討伐隊の隊長格の人が三人ほどソファに座っていた。
「ヒメジさんかな?」
ギルド長が確認をした。
「はい、ヒメジです。この少年のことで伺いました。皆さんこの少年から話を聞かれましたね。その話に出てくる『ケイブ』の意味がわかりましたか?」
「シックスス国の言葉で『ケイブ』は洞窟だろう。そのぐらい冒険者なら常識だ」
髪の長い隊長格の男が言った。
「さすがですね。では、グリーンクロウ団はさらった人たちをどのようにしようとしているかわかりますか?」
シメジは語彙を強めて聞いてみた。
「そりぁ、人身売買だろうよ」
五分刈りの隊長格の男が言った。
「そうですよね。それではどこで人身売買をするかわかりますか?」
ヒメジは質問すると、
「それがわかれば苦労はしない。ヒメジさんはわかるのか?」
髪を七三に分けた男が言った。
「わかりますよ。洞窟です」
「そんなことならわしらも考えている。フォース国でわかっているだけでも二百の洞窟がある。その中のどの洞窟で売買をするのかわからないのだ」
ギルド長がいらだちながら言った。
「百人を監禁できる洞窟となるとかなり大きな洞窟ですよね。フォース国で一番の大きな洞窟はどれですか?」
ヒメジがギルド長に向かっていった。
「サウス湖の南にある洞窟だが。それより小さな洞窟でも百人なら監禁できるぞ」
ギルド長は答えた。ヒメジは大きく深呼吸してから、ゆっくりとそしてはっきりと話を始めた。
「そうですね。しかし、少年の証言で、グリーンクロウ団が北から現れて南へ去って行ったと考えられること。また、百人もの村人を連れて監禁するとなると、洞窟は限定されます。そこで考えられるのはサウス湖の周りの五つに絞られます。一つはサウス湖の少し北にある洞窟です。しかし人の通りが多くて目につきやすく、もしそこにつれていれば誰かに目撃された情報が冒険者ギルドに入るでしょう。しかし、現在、冒険者ギルドに目撃された情報が来ていないのでそこではないはずです。二つ目の洞窟はサウス湖のすぐ北にあります。そこは森林に覆われて人目はないでしょう。しかし、百人を入れるには狭くて監禁することはできないでしょう。三つ目の洞窟はサウス湖の東の山岳地帯にありますが、女、子どもの足では崖から足を踏み外して落下する危険があります。大切な商品をむざむざ失うわけにはいかないでしょうからそこも違います。四つめの洞窟はサウス湖の西の砂漠をこえたところにありますが、誘拐した人を歩かせるのにはやはり危険な場所でしょう。そうなると、人目につきにくく、安全に誘拐した人を連れて行き、監禁できる場所はサウス湖の南にある洞窟しかありません」
ネットからの情報をうまくまとめられたとヒメジは心の中で自画自賛した。
(決まった! 私って名探偵!)
しかし、部屋にいる人々は腕組みをして考えたり首を横に振っていたりしてヒメジの言葉を信じていない。髪の長い男は、
(馬鹿め。討伐隊を動かして誰もいなかったら単なる恥さらしじゃないか。もっと確かな情報が必要だ)
口には出さなかったが、納得していなかった。五分刈りの男は、
(あくまでも推測に過ぎない。得体の知れない男の言うことなど聞けるか)
苦虫をつぶした顔をして首を振った。髪を七三の男は、
(素人が。簡単にわかれば苦労はしない)
腕と足を組み、ヒメジを馬鹿にした態度でにらみつけている。部屋ではしばらく無言が続いたが、それを破ったのがギルド長であった。
「隊長の皆さん、ヒメジさんの指摘には賛成しかねるところもあるが、我々も結論が出ていなかったことだし、ダメ元でサウス湖の南の洞窟に行ってもらえないだろうか?」
三人の隊長格の人々は何か言いたそうにしていたが、ギルド長に頼まれたとあっては、
「わかりました。すぐに出発しましょう」
答えるだけであった。
「ありがとう。何かあればすぐに報告してください」
ギルド長が笑顔で話すと、三人の隊長格の人々は、
「わかりました」
答えた後、ヒメジの顔をにらみながらソファから立ち上がり扉から出て行った。その間、ヒメジは蛇ににらまれた蛙のように固まったままその場に直立不動で立っていた。
(ひえ~、今の人たち怖かった~。殺されるのではないかと思っちゃった~)
ヒメジが動かないことにギルド長が気づくと、
「ヒメジさん、そう固まらずにソファにお座りなされ」
声をかけた。ヒメジはその声かけで呪縛が解けて体が動かせるようになったので少年の横に座った。ギルド長はヒメジが座ったことを確認すると、
「ヒメジさんはこの国の人ではないようですな。どちらの国の出身ですか?」
「それが、頭を打ったので記憶が無いのです。昨日この町に着いて、教会の神父様にお世話になり、冒険者ギルドを教えてもらったばかりです」
「そうですか、それは気の毒に。しかし、よくフォース国のことご存じですね」
「それは神父様から地図をいただいたのでそれを見ていましたら、ふと気づいただけです」
「なるほど、冒険者ギルドに売っているこの地図ですな」
ギルド長はソファから立ち上がると自分の机上にある地図を持ってヒメジに見せた。
「そうです。それです。ところで、討伐隊はいつ頃サウス湖の南の洞窟へ到着するのですか」
ヒメジは質問すると、ギルド長はソファに座りながら答えた。
「そうですね。今から出発すれば、明日の昼頃には到着するでしょう。もし、誘拐された人々がその洞窟に監禁されていれば、明日の今頃は解放されたと早馬で冒険者ギルドに知らせが入るでしょうね」
「良かったな、少年よ。もうすぐご両親に会えるぞ」
「おやおや、ヒメジさんは気が早い。まだ、その洞窟に監禁されているとは決まっていませんよ」
「ギルド長さん、間違いないですよ。私の読みは外れませんから!」
「心強いお言葉ですね。とりあえず、また明日の今頃、冒険者ギルドにお越しください。その時に結果をお知らせいたします」
「わかりました。それでは私はこれで失礼いたします」
ヒメジはギルド長に挨拶した後、少年に体を向けて、
「少年、また明日」
声をかけた。
「うん、おじさん、また明日」
少年もヒメジに返事をした。それを聞いたヒメジはソファを立ち上がると部屋を出た。
五十代の男性としては頼りない主人公ですが、これが主人公の個性だと思ってください。それにしても、作者から見ても情けない主人公です。もう少しジェントルマンのつもりで書くつもりでしたがどこでどう間違ったのか・・・。それでも、かわいい息子のように大切に育てていきます。皆様もこれからも主人公を優しく見守って頂きますよう宜しくお願いします。




