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 いつも読んで頂きありがとうございます。この話から事件が起きます。やっとですが、主人公が活躍する? 物語が始まります。ゆったりと読んで楽しんでください。

 ヒメジがセンター筋の出口にさしかかった時に、彼の腰に少年がドンとぶつかってきた。

「痛いなあ」

ヒメジは腰のあたりをさすっていると、何も言わずに眉毛の濃い十歳程度の少年が三つほどリンゴを抱えて走って立ち去っていった。そのあと、果物屋の若い店員が少年の後を追いかけていった。

「ドロボウ、まちやがれ!」

ヒメジは腰をさすりながら歩き始めると、少年が店員に追いつかれて、襟首をつかまれ頭を数発殴られていたのが目に入った。回りにも多くの人々が何事かとその状況を見ていた。

「ドロボウ、リンゴを返してもらうぞ。こんなこと二度とウチではするな」

店員は少年に罵声を浴びせた。ヒメジは自分には関係ないと思いつつ、そそくさとその場を立ち去ろうとしたが、つい少年の顔を見てしまった。少年はヒメジに助けてといわんばかりの悲しい表情で見返してきた。ヒメジはその顔がどうしてもニャーニャー鳴いている捨て猫のように哀れに思ってしまい、つい口を出してしまった。

「兄さん、ちょっといいですか?」

「何ですか。今、忙しいのですが」

「そのリンゴ全部でいくらですか?」

「え! お客さんリンゴを買ってくださるのですか?」

「ああ、いくらですか?」

「全部で鉄貨三枚です」

「じゃこれで」

ヒメジは店員に大鉄貨一枚を渡した。

「毎度、リンゴ三個と、つりの鉄貨七枚です」

「それからこの少年も預からせてもらうよ」

「いいのですかお客さん。そんな者と関わってもろくなことないですよ。今から警備団に連れて行こうとしていたところですよ」

「私が連れて行くから、任せておくれ」

「そうですか。それではお任せします」

「ありがとう。ほら坊主行こうか」

その場でヒメジは少年と一緒に店員と別れた。そして、ヒメジは警備団に行かずに少年を連れて宿屋に向かった。

   

 ヒメジと少年は宿屋に着くと食堂に向かった。席に座るとヒメジは少年に尋ねた。

「魚、肉、野菜料理の中で何が食べたい?」

少年は笑顔になりすぐに答えた。

「肉が食べたい」

そこで、ヒメジはエプロンを着けた元気の良い若い女性の店員に肉料理を一つ注文した。しばらくすると店員が料理を運んできた。ヒメジは料理を少年の前に置いて、

「さあ、遠慮しないで食べなさい」

少年に勧めた。

「ありがとう」

言ってガツガツ肉をほおばり始めた。

(数時間前の私とそっくりの食べ方だ。よほどお腹を空かせていたのだろう)

ヒメジはにこにこしながら少年の食べている様子を眺めた。そして少年が料理をすべて食べ終わると、笑顔で話しかけた。

「お腹いっぱいになったか?」

「うん、なった」

「まだ食べたいものはあるかい?」

「ううん。もうお腹いっぱいになったからいらないよ」

「そうか。それはよかった」

ヒメジは少年に事情を聞いてみた。

「ところで、どうしてリンゴを盗んだの?」

「昨日から何も食べてなかったから」

「昨日から? それはお腹が空いていただろう。どうして食べていなかったの?」

「ここから半日歩いた村から歩いてきたから」

「一人でかい?」

「そうだよ。野党に村が襲われてお父さんとお母さんが連れさらわれたの。他にも大勢の人が連れ去られて、僕だけ物陰に隠れていて見つからなかった。そして、野盗が立ち去った後、逃げ出してこの町まで来たの」

少年は悲しそうな顔をした。観音様のように笑顔で話を聞いていたヒメジではあるが、心の中では少年に関わったことを後悔していた。

(面倒なことに関わった。少年の両親を私が一人で盗賊から助け出せるわけがない。かといって、この少年をこれから育てる義理もないが、見捨てて放り投げるわけにも行かない。どうしたらいいものだろうか・・・。とりあえず冒険者ギルドに相談してみるか。相談? いやこの少年を冒険者ギルドに押しつけよう。そのために、もう少し少年から情報を聞いておこう)

ヒメジは、もう少し事件の様子を詳しく話すように少年に言った。


 「村長さん、今日もいい天気ですね」

少年の父親が村長に挨拶したとき、村の北側から土埃が立った。誰かが、

「野盗だ、グリーンクロウ団だ逃げろ」

叫ぶと同時に、村全員が南の方へ逃げ始めた。しかし、馬と人間との走る速さは違う。村の人々は次々にグリーンクロウ団が投げる網によって捕まっていった。少年の父親は少年を空の水瓶に入れてふたをすると、

「私がいいと言うまでは出るなよ」

言い聞かされて、少年は石のように丸く固まって動かなかった。息もこらえて少年は外の音を聞いていた。

「うわ~」

「やめて」

「助けてくれ」

少年は耳をふさいだが、それでも耳に入ってきた。

「ケイブ、ケイブ」

のかけ声が聞こえると、馬音が次第に南の方へ遠ざかっていった。そして、それ以降は人の気配を感じなくなったが、少年は父親の指示通りしばらく空の水瓶の中に潜んでいた。

(お父さんからの声かけがない)

少年は不安になってきた。

(お父さん、まだなの?)

少年は父親からの声かけがないので、しびれを切れして水瓶のふたを少しあけてそっと外を見ると、村には誰もいなくなっていた。

「お父さん。お母さん」

少年は両親を呼んだが返事はなかった。そこで、少年は助けを求めて水瓶から出て町に向かって歩き始めた。飲まず食わずで歩いて、半日かけてやっとこの町に着いた時にお腹が空いていたので我慢できずに、盗みを働いてしまった。


 要約するとこのような内容を少年は語った。ヒメジは、

「『ケイブ、ケイブ』ってなんだい」

聞いたが少年は、

「わからない」

首を横に振った。これ以上聞くのはかわいそうだと思いヒメジは立ち上がった。

「今から冒険者ギルドへいくよ」

ヒメジはそう言って少年と一緒に食堂を出た。


 冒険者ギルドへ到着すると、ヒメジは受付の細身の若い女性に声をかけた。

「こんにちは、村がグリーンクロウ団に襲われた少年がいるのですがお話を聞いてくれる人はいますか?」

「グリーンクロウ団ですって。フォース国から国民をさらって、他国で人身売買している野盗だわ。近くの村が襲われたので、今、グリーンクロウ団の討伐隊が編成されているところよ。ギルド長が情報を欲しがっているわ」

(ラッキー。冒険者ギルドも情報を欲しがっている。討伐隊が編成しているということは、この少年の両親を助けることが出来るぞ)

「そうですか。よかった。襲われたのはこの少年の村です」

ヒメジは受付の女性の前に少年を立たせた。受付の女性は少年の腕をつかむとヒメジに向かって、

「ではこの子を今からギルド長に会わせますのでお預かりしますね」

そう言って、連れて行こうとした。

(どうぞ、どうぞ。その少年からじっくり話を聞いてください。短い間だったけれど少年と一緒に過ごして、この子をどうしようかとどきどきしたよ。これなら、この少年を手放しても大丈夫だ。最後に少年を元気づけておこう)

「ちょっと待ってください」

ヒメジは受付の女性を呼び止めた。

「はい? どうかしましたか?」

「少しだけ少年と話をしてもいいですか?」

「いいですよ」

受け付けの女性が許可をしてくれたので、ヒメジは少年に向かってにこやかに話し始めた。

「少年よ、私に話をしてくれたように、冒険者ギルドの方にもしっかり話をするのだぞ。そうすれば、ご両親はきっと助けてもらえる」

「うん、僕、しっかり話すね」

少年は元気よく答えた。

「そうだ。その調子で言えば大丈夫だ。それから、話をしているときにお腹が空いたらこのリンゴを食べなさい」

ヒメジはリンゴを三つとも少年に渡した。

「おじさん、ありがとう」

少年がにこやかな顔でお礼を言った。

「少年よ、ご両親な会えることを祈っているよ。元気でな」

ヒメジもにこやかな顔を少年に返した。


 午後三時頃、宿屋に戻ったヒメジは亭主に宿泊を依頼した。前金で一泊大鉄貨三枚支払うと、二階の一人用の部屋の鍵を渡された。部屋の中に入るとヒメジはアイテムボックスから雑貨屋で買った鉄の寸胴をとりだした。

「このままじゃ重たくて使えない。もう少し鉄を薄くして軽くしてみよう。ひょっとしたら寸胴を複数個にすることができるかもしれないしね」

(薄い軽い寸胴)

祈りながら、

「オール クリエーション」

唱えると、光った後に三つの寸胴が現れた。三つの寸胴を順番に持ち上げるが、どれも薄くてヒメジが片手で持ち上げられるほどの軽さである。ヒメジは三つともアイテムボックスに入れると一階の食堂まで降りて、亭主から水をもらうことにした。

「あの~、水をもらえますか」

「裏に井戸があるから好きなだけ使いな」

「ありがとう」

そういってヒメジは裏にある井戸まで行き、アイテムボックスから寸胴を取り出すとそこに井戸からくみ上げた水を入れ始めた。寸胴を水いっぱいに満たすと、アイテムボックスからイチレン草を四本取り出し寸胴の中に入れた。両手を寸胴にかざして、

(回復薬を作成)

祈りながら、

「オール クリエーション」

唱えると、寸胴の中の水の色がみるみる青くなっていった。そして、濃い紺色で反応が終るとイチレン草は水に溶けて? なくなっていた。ヒメジは、サンプルとして二十ミリリットルと十本と一リットル用の容器一本に回復薬を入れた。そして、それらと寸胴に入っている回復薬をアイテムボックスにしまった。

「よしこれでOK。明日、あのおっかないおっさんにサンプルを見せるだけだ」

すべての容器をアイテムボックスに入れると、軽い腹痛がしてきた。昼にたらふく食べてから便が出たがっている。そこで食べたものを消化して出す行為をする場所に行った。


 事件が始まりました。冒険者ギルドに任せっぱなしのヒメジではありません。ヒメジが出来ることでこの事件を解決に導きます。ただ、金田一耕助や明智小五郎や名探偵コナンのように主人公が活躍して解決はしません。どのように物語が進むのかは楽しみにしてください。

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