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 いつも本作品を読んでいただいている皆様ありがとうございます。今回から再び主人公のヒメジを登場させております。これからヒメジがどのような冒険をするのか楽しんで読んでいただけたら幸いです。

 王都の市場は三本の五百メートルの道の両脇に商店や露店が並ぶ賑やかな場所である。三本の道は右が食料品中心のライト筋 中央は雑貨中心のセンター筋 左が武具中心のレフト筋と呼ばれている。最初にヒメジはセンター筋の比較的大きな雑貨屋に入った。

「こんにちは」

「いらっしゃいませ」

店の中からかっぷくの良い三十代の男性が現れた。

「何にします?」

「回復薬を作ろうと思っています。少し大きめの鍋が欲しいと思っているのですが、どれか良いものはありませんか?」

「両手のついた直径二十四センチメートルの鉄製の寸胴はいかがですか。容量は十八リットルとちょうど薬瓶一本分の量を作れる量ですよ」

「ちょっと、量が少ないな」

「多い量の寸胴をお求めですか?」

「そうです。出来れば三十六リットル以上は入る寸胴が欲しいです」

「それでしたら寸胴が重たくなりますよ。一人で取り扱うには大変ですがいいですか?」

「ええ、大丈夫です。多い容量の寸胴をお願いします」

「それならこれはいかがですか? 両手のついた直径五十四センチメートルの鉄製の寸胴があります。容量は七十二リットル入りますよ。お客さんのご希望の品でしたらこれが一番大きな寸胴です」

「本当に大きいですね」

「ええ、水を入れると全部で百キログラムほどの重さになるので、一人では取り扱えませんよ」

「重さはともかく、容量は魅力的です。おいくらですか?」

「品が良いものなので銅貨二枚ですが、お兄さん初顔なので少し負けて銅貨一枚と大鉄貨九枚にしておきます」

「それ買います」

ヒメジは購入することに決めた。すぐに代金をかっぷくの良い三十代の男性に支払い商品を受け取った。受け取ったときにずっしりと重たく、よく見ると素人が作ったような、全体が分厚い鉄で覆われた寸胴であった。

(重たい。こんなもの宿まで持って帰れないよ)

ヒメジはぼやきながらも両手で重たい寸胴を引きずりながら店の入り口に歩き始めた。

「大丈夫ですか? 持てますか?」

かっぷくの良い三十代の男性が心配そうに尋ねてきた。

(大丈夫じゃないけれど、重たいことを承知で買ったのだから、自分でなんとかするしかない。そうしなければ、このかっぷくの良い三十代の男性に『ほれ見ろ、だから重いと言っただろう。欲張って大きな寸胴を注文するからだよ』と馬鹿にされた目で見られるからな)

そう思ったヒメジは、

「大丈夫です。一人でなんとか出来ます」

作り笑いをしながら返事をして寸胴を少しだけ持ち上げて扉まで運んだ。

「気をつけてお帰りください。ありがとうございました」

ヒメジの後ろからかっぷくの良い三十代の男性の声がしたが、ヒメジは寸胴を運ぶだけで精一杯だったので返事をせずに店を出た。

 店を出るとすぐに寸胴を地面に下ろして引きずりながら路地に入り、人目がないことを確認してからアイテムボックスに寸胴を入れた。

(重たかった。こんなに重いなんてこの時代の器具はあまり軽量を期待できないな)

店からわずか五メートルほど持ち運んだだけなのにヒメジの全身から汗がしたたり出て呼吸もゼイゼイと乱れていた。ヒメジは息を整えるためにその場に座り込んだ。しばらくはぼーっとして放心状態だったが、息が整ってくると、

(買い物をしていちいち商品を路地に運び、アイテムボックスに入れるのは面倒だ。何かいい方法はないか)

ヒメジは考え込んだ。路地から通りを歩いている人を見ながらしばらく考えていると、カバンを持っている人に目がとまった。

(そうだ、私もカバンを持てばいいのだ。大きいカバンがいいが、リュックタイプは品物の出し入れが面倒だ。ショルダーバッグでひったくりに盗られにくいものがいい。よし、カバン屋へ行こう)


 善は急げ。思い立ったが吉日。ヒメジはセンター筋へカバン屋を探しに行った。しばらく歩いていると比較的大きいカバン屋を見つけたのでそこに入った。そしてヒメジはいくつかの棚を周りながら品定めをしていると、中年の男性店員が声をかけてきた。

「どのような商品をお求めで?」

「肩からぶら下げられるカバンが欲しいのですが見せて貰えますか」

「それでしたら、これはいかがですか?」

棚に置いている白色の肩掛けカバンを取り出してきた。

「最近流行している品です。物がたくさん入るので、おもに男性の冒険者が旅をする時に使われています。町の中では、一部の商人が荷物を運ぶのに使われていますよ」

(学生用の白の肩掛けカバンに似ているが、それより一回り大きくていろいろな物が入りそうだ)

「手に取ってみてもいいですか?」

「いいですよ。どうぞ。肩掛けのひもはカバンに何重も頑丈な糸で縫い合わせていますのでとれることはないですよ。また、ひもやカバンの材質の布は柔軟性がありながらも丈夫で、ナイフを使っても簡単には切れることはありません」

「それは頼もしいカバンですね」

「いかがでしょうか? お気に召しましたでしょうか?」

「はい。ところでこのカバンいくらですか?」

「お安くなっており、銅貨一枚です」

(安くて、望みにぴったり合う品物だ)

ヒメジはうれしそうに

「これください」

即答で返事した。

「ありがとうございます」

代金を店員に支払うとカバンを受け取り肩にかけた。

(これで、怪しまれずに荷物の出し入れが出来るぞ)

ヒメジはカバン屋を出ると大きな声で、

「よっしゃ~」

叫んだら通りを歩いている人たちから変人を見るような目で見られた。あまりにも多くの人から見られたので、ヒメジは恥ずかしくなり顔を真っ赤にして、その場から急いで離れた。しばらく人々の目から逃れるために早歩きで移動しライト筋に来たときには、ヒメジを見る人は居なくなり、普段と変わらない人々の往来している風景がヒメジの目に入った。

(ここまで来ればもう大丈夫だ。さて、次はどこへ行こうか。・・・そういえば回復薬を入れる薬瓶が必要だな。よし決めた。次は薬屋だ)


ヒメジは薬屋を探した。いろいろ歩いているうちに薬瓶と薬草が描かれている看板がある薬屋を見つけた。ヒメジは、すぐにその中に入った。

「こんにちは」

「いらしゃい」

筋肉むきむきで厳つい顔の五十代の店主が現れた。

(店を間違えちゃったかな。薬屋はかわいい女の子が店員をしているイメージなのに)

ヒメジが店に入った後、後ずさりしかけていると店主が声をかけてきた。

「なにを買う?」

「あ、あのう、薬、薬瓶、見、見せて、く、ください」

「それならここにあるぜ」

店主は三種類の薬瓶を取り出した。

「はじめに約二十ミリリットル入る一回用薬瓶。おもに使いきりで、その場に捨てられることの多い瓶だ。値段は鉄貨三枚」

(どことなく試験管ショットグラスのような形をしているな)

「次は約一リットル入る薬瓶。使い切った一回用の薬瓶に薬を再度入れるための補充用の薬瓶だ。値段は大鉄貨二枚」

(これは平底フラスコの様な形をして、二十ミリリットル入る薬瓶に入れやすい形になっている)

「最後は薬十八リットル入る薬瓶。薬を作った時に入れる薬瓶だ。値段は銅貨一枚」

(持ち手の付いた大きい平底フラスコだ)

「さあどれにする」

店主の厳つい声にヒメジは『いりません』とも言えずに

「あ、あのう、に、二十ミリリットル入る、や、薬瓶を十本と、い、一リットル入る、や、薬瓶を一つ、く、ください」

「それでいいのか」

「え、ええ」

「本当にそれでいいのだな」

(ひええ~、怖いよ~)

「は、はい、お、おねがいします」

「よし、全部で大鉄貨五枚だ」

ヒメジは店主に代金を払い、品物を受け取りカバンにいれた。その後、ヒメジは、店主が怖いけれども、大切なことを聞くことにした。

「あ、あの~」

「なんだ」

「こ、この店では、つ、作った薬を、か、買い取りして、く、くれますか?」

「もちろんだ。しかし、ど素人が持ってくるものは買い取らないぜ。せめてロウポーションの中等からだ」

「ロ、ロウポーションの、ちゅ、中等とは、ど、どの程度の、こ、効力ですか?」

「少し青みのかかった液体で二、三ミリメートルの切り傷が即座に治る効力が目安だ。二十ミリリットルなら鉄貨三枚で引き取るぜ。間違っても透明な薬は持ってくるなよ。それよりその言い方なんとかならないか。俺のこと怖いのか?」

(そうです。でも、そんなことは言えないから)

ヒメジは大きな声で、

「こ、怖くないです」

店主に話した。

「じゃあ、普通に話をしろ。俺は優しいから、怖がらなくてもいい」

(本当かな。とりあえず、びびってかまないように話をしよう)

ヒメジはそう考えると、一度、深呼吸をしてから店主に質問した。

「と、透明な薬とは、な、何ですか?」

「そんなものも知らないのか。下等のロウポーションのことだよ」

「な、なるほど、わ、わかりました」

おっかなびっくりの返事をしていたヒメジの態度を見て、店主はにこりと笑った。

「お前さん、見かけない顔だが、この町ははじめてかい」

店主の優しい表情をみて、ヒメジの緊張が少し和らいだ。

「はい、昨日来たばかりです」

「そうかい、この町は商業の町だが、結構ぼったくりの店も多いから気をつけな。うちは良心的な店だから安心しなよ。もし、薬ができたら俺に見せてみろ。アドバイスしてやるぞ」

「あ、ありがとうございます。ま、また、明日来ますのでお願いします」

「おう、来いよ」

ヒメジは自分が少しふるえていることを自覚しながら店に出た。

(明日も来る羽目になってしまったぁ~)

自分で口にしたことを後悔しながら宿屋に向かって歩き始めた。


第十一話いかがでしたでしょうか? 店回りのヒメジしか書いていないのでつまらなかった。(すみません)。いいわけ作者のいいわけですが、この物語は市場での売買も大事な冒険ですので、これから時々出てきます。その場面も、何を買うのかな、何を売るのかなと楽しんで読んでいただければ嬉しいです。

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