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草原でヒメジは仰向けになってそれを眺めている。オニヨンはその横に座っている。
「オニヨンさん。今日は気持ち天気ですね。こんな日は、日向ぼっこをするのが一番です」
「そうだな、ヒメジ。この花、綺麗だぞ。見てごらん」
オニヨンは目の前にある黄色い花を摘んでヒメジに見せた。
「これはタンポポですね。オニヨンさん、タンポポの花言葉を知っていますか?」
「知らない。教えてヒメジ」
「いいですよ。タンポポの花言葉は『真心の愛』です。我々二人にぴったりではありませんか」
「そうだな。私たち二人にぴったりな花言葉だ」
「…………」
「オニヨンさん」
「オニヨンさん、起きて」
「オニヨンさん、起きて。オニヨンさん、立って」
「なんだ、ヒメジ」
オニヨンは目を覚ました。
「そうか、蛇に噛まれて気を失っていたのか。早く薬を飲まなくては」
オニヨンは、手に持った万能薬を口に持っていった。ケルベロスは、倒れているオニヨンを見て、残っている二つの顔の口から火炎を吐いた。オニヨンの体に火炎が届く寸前でオニヨンは立ち上がると、後方へジャンプして躱した。
「ふう、間に合った。痛っ」
オニヨンは左足を見ると、すねのあたりに火傷をしていた。再度、アイテムボックスから回復薬を出して、素早く飲むと、ケルベロスに向かって走り始めた。ケルベロスはオニヨンに二つの火炎を吐いた。しかし、オニヨンは一つ目の火炎を右に、二つ目の火炎を左に躱して、ケルベロスの足元に近づくと、賢者の剣でケルベロスの右前足を斬った。斬られた右前足の傷口から血しぶきが出て、二つの頭は
「グォォォォォ」
大きな叫び声をだした。オニヨンは間髪を入れず左前足を斬った。今度は胴体から左前足は永遠に離れると、ケルベロスはバランスを崩して左にゆっくりと倒れた。ケルベロスの体からオニヨンに毒蛇が再び襲ってきたが、オニヨンはそれを後方に移動してケルベロスから距離をとって躱した。オニヨンはアイテムボックスから十本の投擲用ナイフを取り出すと、ケルベロスの残っている二つの頭に向けて二つずつ連続で投げた。九本は外したが、最後に投げた二本のうち一本が真ん中の頭の右目に当たった。
「グォォォォォ」
真ん中の頭が叫んだ。
「よし、今だ」
オニヨンは再度、倒れているケルベロスに近づくと、真ん中の頭に剣を振って切り落とした。二つの首と左前足がなくなったケルベロスはやがてぐったりとして動かなくなった。
体の体毛のようにあった毒蛇は全て地面に落ちて、残った頭の両目も瞼を堅く閉じた。
「やった~。倒したぞ」
オニヨンは倒れているケルベロスの傍でガッツポーズをしながら喜んだ。
「よし、門に戻るとし……。」
そこまで言ったときにオニヨンの体が急に空中に上がった。それと同時にオニヨンは腹と背中に激しい痛みを感じた。
「グハ」
オニヨンが口から血を吐いた。薄目を開けながらケルベロスを見ると、そのしっぽから大蛇が伸びてきオニヨンを噛んでいた。
「しくじった。私としたことがしっぽの大蛇を失念していたとは」
オニヨンは、目をつぶって、持っていた賢者の剣を地面に落とした。
ヒメジは砂漠を一人で歩いている。今度は履いている右靴の紐が、ぷつりと切れた。それを見てヒメジは再び不吉な予感がした。これで二度目だ。
「オニヨンさん、生きていてください」
「く、くそ~」
オニヨンは薄目を開けて、最後の力を振り絞って、アイテムボックスから石化の薬を取り出すと薬瓶のふたを開けて、
「こ、これでもくらえ」
残っている力の限り薬瓶を大きく振りながら大蛇に石化の薬をかけた。かかったところから石化したが、ほとんどが表面の鱗だけで、大蛇の体には影響がなかった。
「もはやこれまでか」
オニヨンは目をつぶり、死を覚悟した。
(死ぬ前にヒメジに自分の気持ちを伝えたかった)
オニヨンは、後悔をしながら死を待っていたときに、がくんと体が地面に落ちた。ゆっくりと、目を開けると大蛇が石化していた。どうやら、オニヨンがかけた薬が効果を出したようだ。オニヨンは、最後の力を振り絞ると、アイテムボックスから万能薬を取り出してそれを飲んだ。腹や背中の傷口がふさがって、オニヨンの顔にも生気が宿ってきた。オニヨンは上半身を起こすとケルベロスの亡骸を見た。
(鱗にかかった石化の薬は効果が無いのに、どうして大蛇は石化したのだろう……。ん? 目が石化している。そうか、薬のひとしずくが目に入り、そこから石化したのか。本当にぎりぎりの戦いだった。ヒメジ、ザイン死ぬなよ。この試練はかなり厳しいぞ)
ザインが門を入ると中は、草原であった。空は雲一つない晴天で、風も心地よい。ザインは入った扉から真っ直ぐに歩いた。十分ほど歩くと、ザインの目の前に、人間の五倍はある両開きの大きな鉄の扉が見えた。
「あれは何だ? 何の扉だ」
ザインは扉に近づいていった。ザインは草で覆われて気がつかなかったが、地面に書いている魔方陣を踏むと、一瞬それが光り、ザインに強風が吹いた。
「なんだ、この強風は。体がとばされる」
ザインは顔の前に腕をクロスして、両足を風で飛ばされないように踏ん張った。小石が吹き飛ばされ、いくつかはザインの腕に当たった。やがて強風がおさまると、
「ギイイイイ」
音が聞こえてきた。ザインは音の方向を見ると、先ほどまで閉じていた大きな鉄の扉が手前に開いていた。
「扉が開いた。どんな試練が起きるのか」
ザインは剣の柄をつかんで身構えた。すると、扉の向こうから
「ギイ~、ギイ~」
鳴き声が聞こえてきた。
「何の鳴き声だ。こんな鳴き声は聞いたことがない」
ザインは、扉が開いた空間をじっと見つめた。
「ギイ~、ギイ~」
先ほどより大きな鳴き声が聞こえると同時に、大きな羽ばたいている音が聞こえてきた。
「鳥か? それもかなり大きな鳥のようだ」
「バッサ、バッサ」
大きな羽ばたきのあと、大きなモンスターが扉から出現した。
「あ、あれはワイバーンだ」
ザインは、剣を鞘からき、魔法の呪文を唱えた。
ワイバーンは、すぐにザインを見つけると口から火炎を吐いた。火球になってザインに向かっていった。ザインは詠唱が終わると、『ウインドウオール』を発動した。ザインの周りには強風が壁のように舞った。それに火球が当たると、爆発して火球は霧散した。
「こんな火球では私を倒すことは出来ない」
ザインには別の魔法の呪文を唱えた。詠唱が終わると、『アイス・ランス・レイン』を発動した、ワイバーンの上空から氷の槍が雨のように降ってきた。ワイバーンはそれを右に急旋回しながら避けようとしたが、いくつかの氷の槍がワイバーンの体や羽に命中した。
「よし、やったぞ」
ザインは喜んだが、ワイバーンは、
「ギイ~、ギイ~」
泣きながら何事もなかったように飛び続けた。ザインの魔法では、針が刺さった程度の傷しか与えることができなかった。
「ワイバーンになると、頑丈な体をしている。かくなる上は、直接剣で攻撃するしか倒せる方法はないようだ」




