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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五話 その二人の婚約を彼らは知りたくなかった
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その哀れな獲物がどうなったのかを、僕は知らない

「こっちこっち」


 アニアに案内されるまま、僕らは森を彷徨っていた。

 というか、本当にこいつに付いてきてよかったのだろうか?

 なんかどんどん森が深くなってるんですが。


 まぁ、アルセは楽しそうだし、ネフティアがいれば問題はないか。

 今のところ、僕に攻撃できる武器は無いのでネフティアと逸れたりしたらもう、逃げ一択しかないんだよね。大丈夫かな。


 しばらく行くと、何やら笑い声が聞こえて来た。

 無数の笑い声。

 妖艶でいて不気味な声に、僕らは思わず足を止めていた。


「ああ、大丈夫だよ。アレはドライアドの笑い声だから。ドリアデスっていう幼体に人間やエルフの男性を案内させてその精力を奪い取っちゃうの。多分バカな冒険者が引っ掛かってるんだよ」


 その引っかかってる冒険者、身内な気がしますっ!!

 僕はアルセを抱え上げると声の方角向って走り出す。

 気付いたネフティアも僕を追って走って来た。


「えええっ!? 飛んだ!? ドリアデスみたいな生物が空飛んだ!? 何アレ何アレ!? 羽もないのに空飛んでるっ! 弾丸飛種の一種だった!?」


 なんだその弾丸なんとかってのは?

 まぁいいや。それより声の先にいる哀れな贄の方だ。もしかしてカインたち……

 そこにいたのは……一人の男エルフでした。

 気付いた瞬間、僕はアルセを降ろして近くにあった葉っぱをちぎるとアルセの両目を塞ぐ。

 あんなもん見ちゃいけませんっ。


 なんていうの、ものっ凄い美形のエルフさんが涎塗れで大木に抱きついてました。

 なんかもう発情期のウサギみたいな危ない顔でうっとりと木を撫でまわしています。

 危ない人です。アレはヤバい。

 ってこら、ネフティアさん。なぜそこでグッドマーク? GJグッジョブじゃないですよ全く。


「うっわぁ。何時見てもドライアドの幻覚に落とされたオスは見るに堪えないなァ。私が男だったらと思うとおぞけがするぜぃ。じゅるり」


 そこでなぜ舌舐めずりをするアニア。

 ハニー素敵だよ。マイハニーとうわごとのように繰り返す男エルフ。

 これ以上ここにいるとなんかアルセの教育に悪いことが始まりそうなので早々にお暇する事にした。

 離れる際、一度だけ振り向くと、男エルフは緑のハーフパンツを脱ぎ始めたところだった。



 僕らはドライアドの縄張りからそそくさと離れる。ア゛ァ―――――っ! とか後方で男エルフの断末魔? みたいな声が聞こえた気がするけど、多分空耳だ。

 僕はアルセの耳を塞ぎながら足早に駆け去るのだった。


 にしても、ドライアドっていうのはドリアデスの進化体なんだよね。

 つまりドリアデスもツッパリたちみたいに進化形があるわけだ。

 じゃあ、アルセイデスは?


 たぶん、ある。

 ドライアドみたいにアルセアドみたいな名前のが居るはずだ。

 あの森では見かけなかったけどどこかにはいるのだろう。

 アルセも進化するのかな? アルセが進化したらどんな魔物になるんだろう?

 それとも知識があるから魔族になるのかな?

 はっ! 僕は理解した。アルセイデス。アル繋がりの女性型植物魔物と言えば一つだけだ。


 アルラウネ。

 よく聞く名前の妖樹。

 女性の上半身に花で出来た下半身の姿がよくゲームで見られる存在である。

 あるゲームでは茨の蔦みたいなのに囲まれた女性の姿すらある。


 マーブル・アイヴィを扱う、すなわち蔦を操るアルセイデスとして、上位存在などこれ以外に思い付かない。

 そうか。アルセがあんなお姉さん体型になりうるのか!

 も、もしかしてばいんばいんの綺麗なお姉さんに?

 ゴクリ……


 あ、アルセは今、僕にべったりだ。

 進化してもあまり変わらないはず。

 つまり、綺麗なお姉さんとなったアルセが僕に抱きついて来たり、僕を慕って来てくれる。

 こ、これはアレか! 光源氏計画!!?


 アルセさん、僕は、僕は楽しみにしていいんですか!?

 アルセの進化を待ち望んじゃってもいいんですか!?

 そんな邪な考えをした僕に、アルセは無垢な微笑みを向けて来た。

 ぐあああああっ。溶ける。僕の邪悪な欲望が溶けて行くっ。


 すまないアルセ、僕はついさっきの男エルフを見て悪霊に取りつかれていたようだ。

 しかし、夢は膨らむな。

 未来有望ですよアルセさん。


「お、そろそろエルフニアに着くよ」


 アニアの言葉に僕らは意識をそちらに向ける。

 おお、これがエルフ集落エルフニア!?

 森の奥に、木で出来た柵が作られた場所があった。

 木製の扉の前には門番だろう。二人のエルフが立っていた。


 現れたアルセ一行を見て慌てたように弓に手を掛ける。

 が、アニアを見付けて矢に向っていた腕を止める。

 どうやら妖精とエルフはそれなりに仲のいい存在らしい。


「悪戯妖精め。また悪さをする気か!」


 違った。

 エルフ達は弓では妖精を射ぬけないと気付いて弓での威嚇を止めただけだ。

 腰元から剣を取り出しアニアに向けたのだった。

 なんか、殺伐としてきたのですが、アニア、お前一体何したの?

 ドリアデス

  種族:妖精 クラス:ドリアード

 ・アルセに瓜二つな容姿の妖精。

  頭にはチューリップが咲いており、局部を葉っぱで隠している幼女の姿をしている。

  ドライアドの幼体であり、獲物である男性をドライアド達の元へと導く役割がある。

 ドロップアイテム・ドリアードドロップ・シロップ・チューリップ


 ドライアド

  種族:妖精 クラス:ドリアード

 ・木に寄生することで存在している妖精の一種。

  近づいて来た男性を幻惑してその精を絞り取る。

  ドライアドに誘惑された男たちは何度もその木に通い、幸福の中死に絶えるのだと言われている。

 ドロップアイテム・ドリアードドロップ・メープルシロップ・恐怖の白ジャム


 エルフ

  種族:耳長族 クラス:エルフ

 ・森で生活する善良な妖精の一種。妖精でありながら独自の進化を遂げたため、人種の一つとして数えられている。

  容姿端麗で長寿の種族であり、木工や鍛冶が得意。精霊魔法を付加させることで創られた武器はエルブン(エルフ製)と冠される。

  容姿のせいで人攫いに遭いやすく、オークやゴブリンを毛嫌いしている。

 ドロップアイテム・エルヴンボウ、エルフの普段着、木の矢、矢筒

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