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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五話 その逆鱗の理由を奴は知らない
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そのやりとりを、僕以外知らない

「オルァ」


 番長が軽い挨拶のオルァ。多分よぉ大将。とかそんな感じだろう。


「キューキュッキュ」


 おうツッパリの。やはりお前がでてきたか。みたいなニュアンスだ。

 なぜだろうか。二人の会話が手に取るように分かってしまう。

 いや、分かってるかどうか知らないけど、多分似たような事を言っていると思われます。


 巨大スマッシュクラッシャー。その容姿は巨大化したスマッシュクラッシャーとしか言いようがない。身体もハンマーも二回り程巨大になってます。

 そして唯一の変化は額の角かな。真っ赤な角が一つ。

 ……リーダーは角付きとか赤いとか、スマッシュクラッシャーもツッパリも何なの? それがこの世界のトレンドなの? 三倍で動くのか!?


「オルァッ!」


 テメェ。俺らのシマ荒らしてどうなるか分かってるよな。アァッ?


「キューッ」


 はっ。元番長に泣きつくようなヘタレ共の何を分かれというんだ。


「キュー! キュキュキュ」


 貴様らこそ、ついさっき泣きながら逃げ出したクセにまだ分かっていないのか?

 所詮は脳筋。完全に追い出されなければ分からんらしいな。フハハハ


「ドルァッ!」


 テメェ。殺すぞクソカワウソが!


「キュキューキュー」


 やれるものならやってみろ。勝ち戦を経た我等スマッシュクラッシャーが楽に倒せると思うなよ。むしろ貴様等を蹂躙してこの森から叩きだしてやる。

 そうだ。この森は今日をもって我等専用の森となるのだ。貴様等ツッパリ共に常に警戒する必要はない。消えろ、目障りな奴等め!


「ダラァッ!!」


 それはこっちの台詞だ。

 わざわざ見逃してやっていた畜生風情が調子に乗りやがって。


「ゴルァッ!!」


 野郎共、用意はいいか!


「キュキューッ」


 全員、突撃用意! このいくさで奴らを完全に叩きだすぞ!!

 と、言った具合の舌戦が繰り広げられたのではありますが、さすがに言葉の応酬が早過ぎてバズ・オークとエンリカが訳しきれていなかった。

 なので、彼らの会話が分かった気がするのは多分僕だけだと思う。


 バサリと番長はガクランを振る。はためくガクランの隙間から見える番長の漢の背中。

 背後に顔だけ向け、番長は厳かに告げた。


「ドルァッ!!」


 行くぜ野郎共!


「「「「「「「「「「オルァッ!!」」」」」」」」」」」


 番長の言葉を皮きりに、ツッパリたちが走り出す。

 その動き、まさに抗争である。

 無数のリーゼント集団が森を駆け抜ける。はためくガクラン、男達の熱い背中が番長を追い抜いて行く。


 すぐ脇を通り抜けるツッパリの風に煽られはためく番長のガクラン。

 拳を握りしめ、いつでも突撃出来る体勢になっている番長の背中は、まさに漢を思わせる頼れる背中を見せていた。


 それを見たツッパリたちの瞳に炎が宿る。

 この人に付いて行けば俺達は勝てる。そんな想いと共に駆け抜けるツッパリたち。


「キュー!」


 奴らの士気ごと砕いてやれ!

 そんなリーダー格の言葉に、スマッシュクラッシャーたちも動き出す。

 巨大なハンマーを携え、短足を必死に動かし走る様はどこか滑稽で、何故か敵なのに和んでしまう。


 大きなハンマーを振り被り、思い切り打ち下ろすスマッシュクラッシャー。

 「オルァッ」と雄たけびと共に拳によるアッパーカット。

 二つが交錯し、ツッパリの拳が折れ曲がる。

 だが、スマッシュクラッシャーのハンマーもヒビが入り、そして、砕かれた。

 双方同時におのれの武器を失うといった状況が幾つも起こる。


 それでも闘う両軍は、まさに血で血を洗う闘争に発展していた。

 ……何コレ、凄い怖い。

 一方ではツッパリの蹴りでクの字に折れ曲がるスマッシュクラッシャー。メンチ怪光線が火を噴きスマッシュクラッシャーを屠って行く。


 しかし、別の場所では大振りのスイングが直撃し吹き飛ぶツッパリ。

 たった一撃で地面を二転、三転して痙攣。そのまま動かなくなる。

 双方多数の犠牲者が出ていた。


 しかし、ツッパリの数はここにいるだけなのに対し、スマッシュクラッシャーの数はまだまだいるらしい。

 未だリーダー格がふんぞり返る背後の森には無数の眼が爛々と光っていた。


「キュキュ!」


 第二隊、スイングハンマー投げだ。一網打尽にしてしまえ!

 その言葉にさらに出現するスマッシュクラッシャー。

 思わず番長が舌打ちする。


「ゴルァ」


 そろそろ来るぞ、アレを!


「ドルァ!!」


 番長の言葉に待っていたとばかりに叫ぶツッパリ。

 声を聞いた下っ端達が慌てて用意されていた柩を持ってくる。

 ツッパリたちがそれを数人がかりで持ち上げ前面に。番長よりも前に突出すると柩を斜めに地面に突き刺しそれに隠れるようにして支えだす。


 戦場で戦っていたツッパリたちも声を聞いて直ぐに撤退。柩より後ろへと下がる。

 今回用意出来た柩はクーフ、元ミイラ少女、マミィそしてアメス、ミルクラトス、ルドトが使っていた計六個。これを隙間なく並べて簡易防壁にした。

 そこにツッパリたちが退避して柩を盾にする。


 一斉に投げられるハンマーの群れ。

 さすがに数の多いツッパリ全員が逃れる術はなかったが、この防壁の御蔭でかなりなツッパリが無傷で受け切れるのだ。


 後方ではリエラたち回復部隊も待機済み。さぁ、直ぐに反撃開始だ!

 スマッシュクラッシャーリーダー

  種族:かわうそ   クラス:カワウソ重戦士

 ・キュートな瞳のカワウソたちのリーダー。個体名はまだない。

  巨大なハンマーを引っ提げている。

  握力は強いが一度ハンマーを落とすと二度と持ち上げられないため、余程の強敵に合わない限りはハンマーを一生手放す事はない。

  このため転倒してハンマーの下敷きになると自力で脱出できなくなる。

 ドロップアイテム・タイラントハンマー、赤い角

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