その小さな陣取り戦闘が密かに始まったのを、人々は知らない
ツッパリたちは回復魔弾や薬草の御蔭で復活した。
しかしだ。相手はスマッシュクラッシャーの群れ。一匹でもハンマー投げが危険なのに大人数の群れが一斉にそんなモノを使ってくればあまりに危険過ぎる。
全員その事に気付いているのだろう。
番長と現番長を囲んでウ○コ座りで集会が開かれていた。
その一角で話を聞いている僕らとしては、族の集会に巻き込まれた一般人みたいで肩身が狭いというか、狼の群れに紛れ込んだ羊の気分です。
だって、周囲から威嚇するような「オルァッ!」の声が無数にするんだよ。
普通の会話だとしても怖いよ。
何この状況。僕何か悪いことしました?
僕もバルスみたいにちょっと気分がすぐれないので。とテントに入っちゃおうかな。
バルスの奴作戦会議が始まるとか聞いた瞬間慌てたようにテントに入りやがったのです。
まぁ、蚤の心臓みたいだからこの状況に耐えきれず洩らしてたのは確実だろうから賢明な選択だとは思えるけど。
「しっかし、この森の中じゃツッパリとレディース、スマッシュクラッシャーの三つ巴だったんだな」
「その一角をアルセが潰しちゃったせいで勢力図が変わってしまったのね。悪い事をしたからしら?」
「で、でも、どうせいつかは代替わりするんですし、こうなる事は確実だったんですよね。だったら私達がいる今の状態の方が幾分ましかと」
「スマッシュクラッシャーの群れだぜリエラ。俺らが何が出来るっつかな」
ため息交じりにカインが答える。
確かに、スマッシュクラッシャーに何人集まろうと怪我人が増えるだけの様な気もする。
獣だから臭いや気配に敏感なため奇襲とか受けつけないだろうし、落とし穴とか掘っても意味ないよね。
あいつらに有効な攻撃といえば……ああ、あれか。
「ひゃぅ」
リエラに膝かっくんを喰らわせる。カシャッ。
さすがにそのまま倒れて貰っては困るので受け止め元の位置に戻す。
皆がリエラに一斉に視線を向けるけど、リエラは倒れていないしなぜ悲鳴を上げたのか理解されていなかった。
ついでに画像げっとです。リエラの心底驚いた顔を激写しました。
こんなモノ撮ってどうするんだ僕よ?
「な、なんでもないです。なんでもっ」
慌てて皆の注目を逸らし、リエラが後ろの僕を睨む。
なにしてくれんですか。と小声で恨みがましく言われてしまった。
いや、ヒントをだね。
「ぶひ」
「え? そうなのあなた」
なんかリエラの代わりにバズ・オークが気付いたらしい。エンリカがちょっと驚いている。
「どうしたのエンリカ?」
「はい。ユイアさん。どうやらさっきのリエラさんの動きで思い出したそうなんですけど、スマッシュクラッシャーは倒れると身動きが取れなくなるらしいんです。いちいち倒すよりも転ばすだけで相手を無効化できるそうですよ」
「「オルァ!?」」
それは本当か。とばかりに叫ぶ番長と現番長。
両方赤髪なので分かりづらい。ガタイがいい方が現番長。一回り小さいスマートなのがウチのパーティー所属の番長だ。やっぱりまだアルセにやられたのが原因だろう。前ほどの巨漢には戻れないようだ。
とりあえず僕は現番長と番長で区別してる。両方番長だと呼びにくいし、元番長ではあるけど今は番長に戻ってるみたいだし元を付けるのは失礼だよね。
それからしばらくツッパリの集会は作戦を詰める話し合いになっていた。
レディース達も今回は手伝うようで、スマッシュクラッシャー撲滅を志すようだ。
うーん。三国志で言うところの蜀と呉が手を組んだ状態かな。
あの二国よりはツッパリとレディースの方が仲がいい。子孫を作るのも二つの種族が交わって男ならツッパリ、女ならレディースになるみたいだし。
むしろこの二つの種族は持ちつもたれつなのかもしれない。
これでスマッシュクラッシャーが居なくなればこの森は不良の楽園になりそうだけど、話が分かる分僕としてはスマッシュクラッシャーを撲滅して、人間が通れる道を彼らに確保管理して欲しいかなって思う。どうかねツッパリ君。
話の中でなんかクーフが柩を使えとかなんか言ってた。
折角なので元ミイラ少女の柩も使って貰おう。
僕のポシェットから普通にとりだしてもアルセがなんかまた変な能力使ったとしか思われないだろうから、それっ。
突然アルセの横から出現した柩に眼を剥く一同。
アルセは注目を浴びて笑顔で踊りだした。
そういえばこっちにあの水入れてたっけ、この柩の目印に何か付けとこう。別の柩と混ざったら面倒だし。
「ゴルァッ!」
そろそろ行くぞお前らッ!
「「「「「「「「「「オラァ!!」」」」」」」」」」
応ッ!!
とばかりに立ち上がるツッパリたち。
ついに不良たちのお礼参りが始まろうとしていた。
番長と現番長が歩きだす。
その背後をぞろぞろと歩きだすツッパリたち。
レディースも混じればその集団はまさに国家存続の危機並みの大軍団となる。
その列に紛れこんでるから僕らはまだマジだけどさ、この集団に対面する事になったらと思うと、怖いなんてものじゃ済まない。
まさに悪夢。
死が脳裏にちらつく程度ならまだマシだと思える状況になるだろう。
スマッシュクラッシャーの方も何か決戦が始まると分かっていたのだろうか?
森の中、進むツッパリ集団は彼らを見付けて立ち止まる。
前方にはスマッシュクラッシャーの群れ。
日の差し込まない森の奥、暗がりに光る無数の眼。
森に隠れて見えないモノの、物凄い数のスマッシュクラッシャーが存在しているのが見える。
そして、そこから一回り巨大なスマッシュクラッシャーが歩み出て来た。
自然、番長もツッパリたちを待機させて一人歩み出る。
今、小さな森の中で、人の知らない決戦の幕が静かに斬って落とされようとしていた。




