その番長たちの違いが何なのか、彼らは知らない
元番長が立ち止まる。
そこに辿りついた僕らが見たのは、あの湖だった。
ツッパリたちの憩いの場であるはずの湖に、今存在するツッパリたちは皆満身創痍。
殆どのツッパリの腕や足が折れており、傷だらけのツッパリたちが数体の遺体に男泣きを行っていた。
レディースも同様だ。
想像以上の惨劇に僕らも元番長もただただその光景を見つめるしかなかった。
どう、なってる?
「お、オルァッ!!」
一瞬早く我に返った元番長が声を荒げて現番長のもとへと駆ける。
それに気付いて僕らもそちらに近づいた。
でも、一体なぜこんな事に?
僕らがピラミッドに入ってる間に何が起こったんだろう?
「オルァ!」
どうしたんだ! 一体何が起こった!?
元番長が現番長に詰め寄る。
胸倉掴みあげて詰問すると、現番長の右腕がだらんと垂れた。
それに驚き元番長は彼の胸倉から手を離す。
椅子に丁度良い岩に腰掛けていた現番長は座り直すと一度息を吐いて元番長に視線を向ける。
「オルァ」
奴ら、お前が居ないと知るや攻めてきやがった。
すまねぇ。やっぱり俺には番長は荷が重かったらしい。
「オルァッ!!」
馬鹿言ってんじゃねぇ! テメェで無理なら俺だって無理だ!
「オルァ!」
そんなはずァねェ!! 俺じゃなけりゃ、お前ならもっと上手くやれた!
現番長は叫ぶと共に立ち上がると、元番長を前に膝をつく。
漢、一世一代の土下座。
「ドルァッ!!」
頼む、お前がリーダーだ。無理は承知で戻って来てくれ、アニキッ!!
「オルァ……」
お前……
「オルァ!」
いや、ダメだ。俺は既に番長を退いた身。今更戻ったところで皆が付いてくる訳ねぇだろ!
「「「「「オルァッ!!」」」」
番長ッ! 俺ら、番長の帰りをずっと待ってます。頼んます! 奴らに好き勝手させたままじゃいられねぇ。番長!!
「オルァ」
お、お前ら……いや、だが……
……なんて、感じのやりとりが行われていた。
それをバズ・オークやエンリカがカインたちに伝えている。
なんとなく、しぐさとかで分かってしまう僕って、これ、能力か何かかな?
多分現代知識のせいだと思うけど。
にしても、番長に個体差とかあるのだろうか?
多分ないと思うんだけどなぁ。
気持ちの問題かな?
「ツッパリ、必要とされてんだろ」
未だに渋っていた元番長に、カインが近づき肩に手を置く。
なんだ? と振り返った元番長に、カインが優しく告げながらその首をがしっと脇に抱えた。
「漢、見せてやれよ。仲間が困ってんだ。助けてやれよ!」
「お、オルァ!?」
し、しかし、俺はもう番長じゃ……
そんな言葉が聞こえそうな元番長のもとへ近づくツッパリが一人。
彼はポケットから櫛を取り出す、緊張した面持ちで元番長に手渡した。
「オルァ……」
お前、これは……
櫛をしばらく見つめる元番長。
周囲を見回す。
無数のツッパリたちが今、固唾を飲んで見守っていた。
カインたちに視線を向ける。
やってやれよ。と親指を立てるカイン。皆も頷いて見せる。
その全てを見つめ、元番長は再び櫛に視線を向けた。
ふぅ。と溜息を一つ。
その櫛を自分のリーゼントへと差し込み髪を梳く。
その刹那。元番長を光が包み込む。
髪を梳けば、黒かったリーゼントが赤く染まって行く。
すっと櫛が動くごとに、黒かった部分が消えて行く。
元番長が手を止めた時には、そこに元番長の黒髪は欠片も無く、真っ赤なリーゼント番長が復活していたのだった。
「「「「「「「お、オルァッ!!!」」」」」」」
元番長。いや、番長の復活に沸き立つツッパリたち。
現番長も自分が番長じゃなくなったというのに凄く嬉しそうである。
番長もこうなったらとことんやるぜ。と気合いを入れていた。
「リエラ。回復の魔弾幾つある?」
「えっと、今回の冒険用に継ぎ足したので一応200くらいですかね」
「重傷な奴を優先して使ってやってくれ」
カインの言葉に動き出すリエラ。現番長を皮きりに銃弾一発で一人ずつ彼らの傷を癒して行く。
「軽傷者はこっちに来なさい。薬草だけどないよりマシでしょ」
「あ、ネッテさん私も手伝う」
「精霊魔法が使えます。私は中くらいの傷を優先して回復させます」
ネッテ、ユイア、エンリカが動きだす。
皆ツッパリたちを支援する構えを見せている。
なんか凄いな。
というか、アルセと元ミイラ少女が踊りだしたのですが、誰かアレどうにかしません?
元ミイラ少女が奇妙な踊りを踊り過ぎて気持ち悪いのですが。
ロボットダンスのような動きというか、インドでありそうな踊りというか……特に身体が動いてない時に左右に動く首の動きが気持ち悪い。高速で顔だけが動いたりするのでびっくり人間化している。
興味を覚えた下っ端たちやツッパリたちが無駄に集まってアルセたちを見てるけど、何してるの。ヤンキー共が群れてるみたいで怖いです。野次飛ばさないでね。
下っ端
種族:偽人 クラス:ツッパリ
・ガクランのような服を着ている。実は皮の一部らしい。
ダボついたズボンを穿いている失敗面の魔物。リーゼントではないようだ。
オラァとかドルァとか叫ぶが、これは魔物の鳴き声のようなものらしい。
スキルの咆哮を喰らうと状態異常・恐れになるらしい。
下位存在なせいかツッパリたちの身の回りをしている姿がよく見られる。
種族スキル:威嚇
ガンつけ
アッパーカット
咆哮
負け犬の遠吠え




