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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その遺跡の秘宝が何だったのかを彼らは知らない
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その完全勝利に穴があるのを、化け物は知らない

 化け物の絶叫が響く。

 クの字に折れた化け物の胴に食い込む大剣。

 しかし、クーフの一撃ですら両断には至らない。


 舌打ちしながらクーフが剣を引き抜く。

 代わりに走り寄ったのは元番長。

 飛び上がり際に回転蹴り。切っ先鋭い蹴りによりか細い腕が一つボギンと折れた。

 最後の柩が支えをなくして地面に落ちる。


「よし、残り一本。一気に畳め!」


 カインの号令で接敵する皆。

 その瞬間、化け物は大きく口を開く。

 三つの砲門、その全てから黒い何かがせり上がっていた。


「ブヒッ!!」


「っ!? ダメっ。皆さん下がって!!」


 初めに気付いたのはバズ・オークだ。

 その声をエンリカが訳すが遅かった。

 最後の詰めだと近づき過ぎたカインたちに向けて、黒い光が吹きつけられる。

 三方向に飛んでくる黒い光。カイン、バルス、リエラ、ミミック・ジュエリー、元番長、クーフ。その全員が闇のブレスを喰らっていた。


 そして、魂を抜かれたかのように動きを止める面々。

 驚きに目を見張るネッテとユイアが詠唱を止めてしまう。

 いきなり大ピンチですかッ!?


「ブヒッ!」


 残った拳を振り上げ、一番危険と判断したクーフを殴りつけようとした化け物に、唯一無事だったアタッカー、バズ・オークが走り寄る。

 ナイト・ブローバーによる掬い上げる一撃がクーフを狙った拳を打ち上げる。

 しかし、バズ・オークの一撃では骨を折りこそすれ両断するには至らなかった。

 剣の特性のせいだ。


「ガァァッ!!」


 全ての腕を失った化け物はバズ・オークを蹴りつける。

 が、その胴体に突き刺さる矢が狙いを逸らした。


「フゴッ」


 バズ・オークが踏み込み思い切りナイトブローバ―を横薙ぎにする。

 化け物の足が三本折れた。

 しかしまだ三本健在のため普通に立っている。


「コ・ルラリカッ!」


「ラ・ギライア!」


 氷の魔法が頭上に、炎の魔法が足元に着弾する。

 その間に走り寄ったエンリカが動けなくなったリエラを回収。

 一度アルセ達のもとへ戻るとバルスを、カインをと安全な場所へと連れて行く。

 しかし、この状況はマズい。

 まだ最初に受けた元ミイラ少女すら回復していない以上彼らの参戦は望めない。

 現存戦力で戦わなければならない。


 それでもまだバズ・オークも残っているしエンリカもいる。魔法使いが二人もいるなら……

 大丈夫。そう思いたかった。でも、思えない。

 化け物が何か変わった動作をし始めたのだ。


「ブヒッ!」


「何か来ますッ! 皆さん気を付け……嘘ッ!?」


 三面六臂の化け物が分離した。ぶちぶちと包帯を引っぺがして三体のミイラへと分離する。

 両手がない片足のミイラが三体。

 相変わらず両腕はないし、全員片足しかなくなっているけれど、ブレス攻撃が三方向から同時攻撃になれば危険なことに変わりはない。

 彼らは脅威の優先度を判断して三体揃ってブレスを吐いてきた。

 最初の餌食はネッテだ。

 三方向から逃げ場を塞がれ黒いブレスを直撃された。


 その代わりバズ・オークが何とか一体のミイラを撃破する。彼の一撃で背骨を砕かれ、倒れた頭蓋に追撃の一撃だった。

 息つく暇もなくブレス攻撃でユイアが戦闘不能に陥る。

 さすがにマズいとバズ・オークは残り二体の討伐を始めるが、そのバズ・オークにブレスが集中した。


「あなたっ!」


 いや、だからエンリカさんっ!?

 もう、完全に夫婦として認識してるらしいエンリカがバズ・オークを庇ってブレスを一身に浴びる。

 そのおかげでバズ・オークが一体のミイラを倒す事には成功した。


「ブヒッ……ブゥアァッ!!」


 だが、その動きでバズ・オークの動きが鈍っていた。

 どうやらここに来るまでも彼は疲れが出ていたらしい。

 きっと索敵にフォローにと人一倍頑張っていたのだろう。

 最後の最後、無理が祟ったバズ・オークはブレスを避ける事すら出来なかった。


 ブレスに飲まれる一瞬前、バズ・オークは僕を見た。

 アルセや他の人じゃない。僕を完全に見据えていた。

 後は頼む。

 そんな言葉が聞こえた気がしたんだ。


 残った化け物ゾンビは片足のまま動こうとしてバランスを崩す。

 最後に動いているアルセに向けて倒れながらも這い進む。

 マーブル・アイヴィが彼の身体を拘束した。

 さすがにアルセも危機を感じたらしい。


 地を這う状況で化け物は無数の蔦に拘束された。

 当然動けるハズが無い。

 悔しげに身じろぎしながらアルセを睨む。

 しかしアルセは不思議そうに指を咥えているだけだ。


 詰んだ。これでアルセの勝利……にはならない。

 化け物は動けなくはなったが、ブレス攻撃は健在なのだ。

 結果、最後に放たれたブレスの一撃でアルセが動かなくなった。


 全滅……その言葉が重くのしかかる。

 もしも、もしもだけど、カインのパーティーがこれだけだったなら、きっと化け物の完全勝利だったんだろう。

 皆がどんな状態異常なのかよく分からない。一生このままかもしれない。でも、でもだ。


 あいつは一人。見逃した。

 穴があるのに気付いてすらいない。

 だから僕は……


 全てに勝利して愉快気に笑う化け物の首を、アルセソードで薙いでいた。

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