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異世界チート魔術師(マジシャン) 作者:内田健

第三章:ウェネーフィクスの乱

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襲撃

 一〇〇〇人もの人間が、一人残らず動きを封じられている。殺すのは容易いが、無力化するのはとても骨が折れるものだ。
 しかし今、王国軍の前に広がるのは、倒れたまま呻いている人間たちばかり。圧巻の光景だった。
 敵である前にエリステインの国民である。救う手間が増えたのは確かだが、自国民の救済を面倒だなどと感じる人間が、正規軍に籍は置けない。罰するかはこれから決めること。まずは保護が先だ。部下にその対処を命じたベラは、彼らのてきぱきとした働きぶりに目を細めていた。
 次々と報告が上がってくる。死者はいないという報告が。
 奏の提案が正解だったのは、この結果を見れば明らかだ。殺さずに沈黙させた奏の功績は大きい。
 そう考えれば、ベラは奏の身を案じずにはいられない。
 太一に手を出そうというバカは彼の力を知ればいなくなるだろうが、奏はその限りではない。奏の実力が世界屈指だとベラは太鼓判を捺している。それでも、彼女は人間の範疇を出ていない。自分の言葉がおかしいとベラ自身も思うが、それでもこの表現は間違っていないと思う。
 自分の身を守るための選択をしなければならない。レミーアのように、世間から距離をおいた生活を強いられることになるか、或いは自分のように組織に所属するか。最後の選択肢は、太一の側を片時も離れないか、だ。選びやすいのは三つめか。自由がない生活は受け入れなければならないだろう。まあ、奏という少女を知っていけば、三つめの選択肢で問題ないという答えに行き着くのだが。
 どれほど時間が経過しただろうか。横で電撃の魔術を練習していたレミーアがベラに声をかけた。先程の電撃魔術の制御が、彼女的には納得いかなかったらしい。あれだけコントロール出来るなら充分ではないか、と思わずにはいられないレベルの話である。

「ベラ。あいつらを行かせて良かったのか?」

 魔術の練習を止めて、レミーアはベラに顔を向けた。

「問題ありません。むしろ願ったりの申し出でしたので」
「お前の独断ではないか?」
「伊達に軍で二番目の地位にいません。スミェーラ将軍にも、もちろん陛下にも、私がきちんと説明します」
「偉くなったもんだ。昔はゴブリン(ざこ)相手にびくついてピーピー泣いていた小娘が」
「レミーア様!」

 耳まで真っ赤にして大声をあげるベラ。
 上官にもそんな時代があったのか、と、周囲の兵士たちが聞き耳を立てているのが分かる。もちろんそれはベラも気付いたことであり、彼女はやおら魔力を活性化させ、たっぷりと威圧感を乗せて撒き散らした。ぎゅぴーん、と目が光ったように、レミーアには見えた。実に愉快な光景である。
 蜘蛛の子を散らすように慌てて離れていった部下たちを見詰め、ベラは大袈裟にため息をついて肩を竦めた。あれで仕事はきちんとこなしているから、強くは咎められない。優秀な部下を持つ上司の贅沢な悩みである。

「レミーア様こそ、行かなくてよろしかったのですか?」
「私が行く必要があると思うか? タイチ、カナデ、ミューラがいるというのに」

 レミーアが挙げた三名の中で戦闘力で一番劣るミューラでさえ、騎士と宮廷魔術師を合わせたような実力があるとレミーアが評価しているのを思い出し、ベラは素直に戦慄を覚えた。

「それに、あいつら、特にタイチとカナデには良い勉強になるだろう。本物の対人戦闘の経験を積むという意味でな」

 彼女の言いたいことが良く分かったベラは、それ以上異を唱えはしなかった。
 内乱に携わった以上、避けて通れる道ではない。まかり間違えば人を殺めてしまうかもしれないが、それもまた、この世界では普通のことだ。戦争となれば尚更である。
 レミーアは、自分の目が届く範囲では最大限気を配ろうと考えている。しかしいつ何時も共にいられると約束は出来ない。
 人を殺めるかもしれないという覚悟はもちろん、慣れておいて困ることはない。共に行かなかったのも、過剰戦力というのも理由のひとつだが、レミーアのフォローが受けられないという状況も経験してもらった方がいいと思ったからだ。
 必ずしも正解だと自惚れているわけではない。しかしレミーアなりの親心である。本人たちがこの意図に気付いているかは別にして。





◇◇◇◇◇◇





 荒野から王都に戻り、歩くこと二〇分。目的地までもうすぐと告げられ、太一たちは気を引き締めた。
 王都ウェネーフィクスは、敷地内に隙間なく建物が建てられている訳ではない。王都の中を小さな川が流れているし、池があれば林も存在している。それらを利用した畑や牧場もあるのだ。
 メインストリートから離れるように歩けば、様々な顔をのぞかせる王都。
 ふと太一の目に、人だかりが飛び込んできた。人の往来が少ない状態の王都において、そこだけが異様と思えるほどに人が多い。
 興味深げな目をしている太一の視線を追いかけたミューラが「あれはレージャ教の教会ね」と言った。アズパイアには教会はなかったので気にも留めなかったが、この世界にも宗教があるようだ。

「外の出歩きを非推奨している今、人々の暮らしを支えるのは商業組合から代理販売を請け負った国かレージャ教なんだ」

 ここまで太一たちを案内してくれた宮廷魔術師の青年が答える。
 商人にも等しく外出を自重させているため、市場が回らなくなる。しかし日々の食料は生活していれば無くなっていくのだ。国民を飢えさせるわけにはいかない。言ったからには国が責任を負っているというわけだ。そしてそれを手助けしているのが、前述のレージャ教らしい。この世界唯一の宗教であり、世界すべての国にて『人類の未来を救うために今を救う』という教えのもと、布教活動を続けているという。

「如何せん人が不足気味だから、彼等にはとても助けられているよ」

 今を救う、と、口にするだけでなく行動もしているということか。信念がどうであれ、吐いた言葉に責任を取るには行動で明かすしかない。どこかの国の政治家にも聞かせてやりたいものである。
 彼等を横目に見ながら、太一たちは目的地へ足を止めない。たまに群衆からこちらに目を向ける者がいるが、宮廷魔術師と共にいるため、特に咎められることはない。これが太一たち三人だけなら、「早く家に帰れ」と忠告されていただろう。
 更に歩くこと一〇分弱。大きな屋敷が見えてきた。物陰から覗き見てみる。これだけの大きさの屋敷は、土地の限られる日本ではちょっと見掛けない。もう宮殿といっていいかもしれない。土地も当然ながら広い。

「これが、サーワハ伯爵邸だよ。どうする?」

 興味があるのだろう。青年が問い掛けてきた。
 どうするも何も、作戦などある訳じゃない。
 代表して奏が「小細工なし。正面から行きます」と言った。キョトンとする青年をよそに、三人は身を隠していた角から身を踊らせ、スタスタと正門まで歩いていった。
 門番が三人の前に立ちはだかる。

「何用だ」
「サーワハ伯爵に会いたいんだけど」

 前置きもなしにそう告げた太一に対して、門番の男は露骨に警戒の色を浮かべる。今は戦時中である。それでなくてもアポなしで貴族を訪ねるというのはよほど切羽詰まっているか、大切な用があるかだ。聞き入れられる筈はなかった。

「帰れ帰れ。どうしても会いたくば、書簡で約束を取ることだな。伯爵様が会う価値があると判断してくだされば、二週間後くらいにはお顔合わせが出来るだろう」

 返された答えに、太一は「仕方ないな」と呟いた。門番としては当然のリアクションである。ほいほいと会えるような人物ではないのだ。
 妙な奴等が来たものだと門番は思ったが、この後の三人の行動は、彼の想像を越えていた。

「分かった。押し通る」
「何? が……」

 後頭部に鈍い衝撃。崩れ落ちる門番の後ろで、いつの間にか彼の背後を取っていたミューラが、剣の柄を掲げていた。そこで殴打したようだ。

「奏」
「ファイアボール」

 ゴオンと腹に響く音と共に、門が吹き飛んだ。ド派手な侵入である。いや、これは最早侵攻だ。
 爆発と共に門が吹き飛べば、それはそのまま警報となる。怒号を上げながら、何十人と武装した男たちが現れた。
 向かってくる人の波に臆すことなく、太一たちも徐々に速度をあげて向かっていく。
 始まった乱戦を目の当たりにして、案内役の青年は唖然としていた。まさか伯爵家を相手に正面突破をやってのけるとは。自分達の実力に自信がなければとても出来る芸当ではない。ベラには「参戦しなくていい」と言われているため、彼の仕事と言えば退路の確保くらいだ。
 しかしそれも、彼らの闘いを見れば必要性を感じない。悠々と戻って来るのだろうな、と想像がつく。個々の力が飛び抜けている上に、連携もかなりできているのだ。

「自信なくすなあ」

 青年は苦笑した。彼とて人から羨ましがられるような実力者だ。しかし今に限っては、比較対象が悪かった。


 太一は二〇の強化を施し、肉弾戦で戦っていた。どんなものだろうと最初は一〇の強化で戦っていたのだが、一人二人なら問題なくても、これだけ数が多いと死角のフォローに限界があることが分かったのだ。しかし、対する方はたまったものではない。一〇の強化でも戦士として強いのに、いきなり強さが倍加したのだから。太一の動きを追うだけで大変だ。
 太一の武器は拳と蹴りの格闘だ。決して楽な戦いではなかった。スペックでは明らかに上回ることが出来ているが、殺さぬように相手を倒すのが大変である。
 基本はボディと顎狙い。気絶を狙った攻撃だ。殴る相手が魔物から人になると、こうも精神的な疲労が強いとは思わなかった。レミーアが言っていたことは大当たりだったのだ。
 斜め後ろから来た斬撃をひらりとかわし、顎を撃ち抜く。魔物を殴ったときと違う脆い感触が手に残る。これでも大分手加減している。もう少し力を込めていたら、首の骨を折ってしまっていただろう。今のでさえ、顎の骨にヒビが入ったかもしれない。その前兆はあった。顔面を狙ったハイキックを放ち、防がれはしたのだがぼきりというなんとも言えない感触が残った。腕の骨を折ってしまったのだ。オーガの首の骨を折ったこともある太一だが、それが人のものとなれば、抱く感想はまるで変わってくる。
 普通に考えれば相手の腕を折るくらいで申し訳ない気分にはならない。相手とて必死である。抜き身の刃で殺すつもりで斬りかかって来られているのだから、腕の一本や二本折った程度でどうこう言う必要はない。
 それでも申し訳ない気分になるのは、太一にとってこの戦闘では命の危険をまるで感じない故である。

「対人戦闘って気使うなあ……」

 ぽつりと呟く。けたたましい戦闘の音にかき消された。
 今後も対人戦闘は増えていく。やむを得ず出撃して、力加減の手探りから始めるのはあまりよろしくない。味方の命も掛かっているのだから。
 であれば、自分からその場所に飛び込んでいくというレミーアの助言はもっともだと思ったし、今ならばいい意味で気を使わなくて済む面子だけで戦えている。

「くそ! 何だこのガキ!」
「取り囲め! 一斉に行くぞ!」

 周囲を囲まれるのはかなりのピンチだ。だが、太一が抱いた感想は違う。「作戦明かしちゃっていいの?」だ。この程度はなんのことはない。
 周囲を囲むのは一〇人強。一斉にとは言うが、一度に全員はさすがに来ないだろう。味方の攻撃まで阻害しては数の優位を保つ意味がない。
 まず向かってきたのは正面から二人。背後から一人。そして、真横から石が飛んできた。

「おお」

 石を避けると隙が出来る。太一はそれを受け止め、握り潰して粉々に(・・・・・・・・)した。それを正面に向けて投げる。散ったのは砂。効果は抜群で、正面の二人は勢いを緩めて目をかばった。
 彼等を一旦スルーして、太一はくるりと振り返る。強化した聴覚は、背後から向かってくる男のスピードと距離をざっくりでも把握することを可能とした。
 驚く衛兵に向かい、太一は振り返る動作の慣性を利用して後ろ回し蹴りを男の脇腹に直撃させた。

「ぐほっ」

 呻き声を上げて地面を転がる男には目もくれずに、身体の向きを目潰しをかけた二人に向け飛び掛かった。二〇の強化を施した太一の身体能力は、体操選手世界チャンピオンを数倍単位で上回る。地面に手をついて前回り程度は簡単な動作である。反動で人を飛び越える高さまでジャンプし、両足を外に広げて二人の頭を同時に蹴り飛ばした。

「ぐっ!」
「があっ!」

 たん、と軽やかに着地した太一に、取り囲んだはずの男たちが二の足を踏んでいる。それはアドバンテージを自ら放棄する行為。

「来ないならこっちから行くぞ」

 律儀に宣言し、太一は目に映った衛兵に向かって駆ける。既に相手を呑んでいた。


 奏は自分の手数の多さによる難しさを実感していた。相手を殺さないように、負わせる怪我も最低限にして攻撃をする。目的はそれであり、それを実行するのが難しい。
 炎系の魔術は相手に火傷を負わせてしまうためNG。
 氷系の魔術も持続的に凍らせてしまえば凍傷の危険があるのでNG。因みにかつてマリエに撃った時は効果を一瞬で解除したので問題なかった。
 そうすると残るのは水属性、風属性、土属性か。
 水も風も土も、打撃を与える目的で行使するのなら悪くはない。奏は、あまり使う機会がなかった土属性魔術をメインに据えることにした。
 石を相手の進路などに叩き付けて牽制したり、砂煙を巻き起こして視界を奪ったりと、実に様々な使い方があり、とても便利である。
 そして、中小人数の対人で奏的にもっとも有効だと思う魔術がこれだ。

「うおお!」
「穴ぁ!?」

 こちらに接近していた四人を一撃で落とし穴に放り込む。深さは大体三メートルから五メートルといったところだ。出られない深さではないが、もちろん容易くやらせはしない。
 穴の底を田植えをイメージして膝まで浸かる泥にしたり、またカチカチの氷にしたり。受ければ厄介極まりないトラップで次々と穴に落としていく。
 周囲にいくつか穴を作ったところで、「やりすぎる」可能性が出る方法だと実感した。穴だらけにしてしまうかもしるれないのだ。這い上がれない相手に対しては足止めとして十分な効果があるが、這い上がれる相手に対しては一時しのぎにしかならない。そんな欠点も、考えているうちは良いと思っても、実際に使ってみなければ気づかないことだった。
 この魔術は使い所を吟味する必要がありそうだ。自分だけならいいが、味方の邪魔をしては意味がないし、問題なく抜けれる相手に対して使う場合にはもっと脱出しにくい構造を考える必要がある。
 ひとまず落とし穴は横に置いて、奏は素直に行くことを決めた。水鉄砲で相手を吹き飛ばす方針に切り換える。落とし穴の存在が相手の進路を制限する。際限なく水鉄砲を放つ奏は、衛兵たちにとって相当な脅威だった。


 三人の中で一番オーソドックスな戦闘をするのがミューラである。
 剣術と強化魔術を軸に、牽制に炎や石を使用する。近距離から中距離を得意とする剣士。それがミューラという少女だ。
 三人の中では、ミューラがもっとも与し易いだろう。彼女が、もっと弱ければ。
 太一、奏と行動を共にするようになって、ミューラはめきめきと腕をあげてきている。奏やレミーアほどでないにしろ、素質そのものはもともと高かったのだ。これまでは慌てる必要がなかったために、ゆっくりとしたペースで修行を重ねていた。そんな日常を過ごすなかで、突如ミューラの前に現れた異世界の二人。
 圧倒的な素質と、それを生かすセンスに舌を巻いた。今後も共に行動していくことになるだろう。そう考えたときに、いい意味で焦燥感にかられた。
 威力では逆立ちしたって太一に敵わない。
 魔術のバリエーションでは異世界の知識を駆使するフォースマジシャンの奏に敵わない。
 幸いというべきは、嫉妬するのもバカらしい程、素質に差があったことだ。だからこそ、前向きに自分の得手を磨くと素直に決意できた。
 自分の得意は剣。
 デュアルマジシャンであり、魔力量も魔力強度も宮廷魔術師の基準を大きく上回っている。
 太一と奏が特別だと考えればいい。ミューラだって人から羨ましがられる素質を持っているのだ。
 レミーアという最高の師の元で築き上げた土台が、ミューラを支える。
 王都に来て宮廷魔術師の魔術を見学する機会があったが、魔力の操作などは劣っていないと自信を持てる。
 騎士のかかり稽古を見て、独学にしては悪くない剣術を使えていると実感できた。
 けれん味のないオーソドックスな魔術剣士のスタイル。正攻法で得られた強さ。
 実質的なスピードでは太一の方が明らかに速いが、ミューラには『遅く見せる』技術がある。相手の視覚を惑わして間合いに入り、先手を打てる。剣を振るいながら同時に魔術を紡ぐことができる。戦闘における技能を全体的に見れば、ミューラは太一と奏の二人を上回っているのだ。
 片刃の剣を普段と逆に持ち、目の前の相手に容赦なく剣を叩き付ける。切れないだけましだが、そんなのは慰めにならないほどの殴打の一撃が次々と加えられていく。
 二人との差をもっとも顕著に現すのが、対人戦闘での躊躇いの無さである。今回はなるべく殺さない、という制限がかけられているが、必要とあれば峰ではなく刃の方で剣を振るうことも、ミューラは厭わない。
 人殺しが好きだ、などという猟奇的な性癖は持っていないが、殺さなければ殺されるという常識の世界で剣を取った以上、そこに忌避感が過剰に入り込んでは命を落とすのはミューラの方だからだ。
 むしろ人を殺すのを躊躇っていても命の危険が少ない太一と奏の実力が非常識なだけである。
 横合いの衛兵が剣を振りかぶるそれを受け止めようとして、ミューラの直感が警鐘を鳴らした。膂力を大幅に強化し、横から振り下ろされようとしている剣を横薙ぎの一閃で半ばからへし折った。そのまま半歩ずれながら振り返り、背後をとっていた男の足下を刈る。

「ぎゃあ!」

 膝を砕かれて悲鳴を上げ、のたうち回る男には一瞥もくれずにくるりと回転し、剣を折った男の上腕に剣の峰をめり込ませ、弾き飛ばした。
 同時に発動させた土属性魔術で石を生み出し、膝を砕いた男の鳩尾にぶつけて気絶させた。
 隙を見せない流れるような連続攻撃。ミューラにもっと容赦がなければ、今の一瞬で二人は絶命していただろう。

「くっ! 退け! 立て直せ!」

 指揮官の判断は遅かった。こちらを牽制しながら引いていく衛兵たちの数はものの五分の戦闘で半分近く減っている。
 衛兵たちの被害は上層部に伝わっているはすだ。伯爵家の戦力から考えれば、もうすぐ主力が出てくるだろう。

「カナデ」
「うん」

 奏は杖を取り出して魔術を紡ぐ。
 数えて凡そ三〇秒。衛兵たちの退路の先に、三発の稲妻が落ちた。網膜をつんざく光の奔流と鼓膜を揺るがす轟音が彼らの足を止め、地面を伝わった電撃で数人が崩れ落ちる。
 逃がすわけがない。太一たちの意図は伝わっただろう。
 戦闘開始から四〇分。たった三人の襲撃によって、サーワハ伯爵家は半壊滅的な人為的ダメージを負った。
 重傷者が多数出たものの、死者ゼロという結果を残して。
ありがとうございました。
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