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姉淫魔が鬱になっちゃった話  作者: みぎゃー


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9/19

#9.人間界の崩壊とリリスの出産

リリムの感情は、鬱状態の姉を完膚なきまでに徹底的に犯し尽くし、

遂には妊娠させてしまった人間達に対する激しい憎悪に支配されていた。


「もうエサとして残しておく価値も無い。

 人間のオスなんて居なくなって、そしてそれをエサとする私達、

 淫魔も一緒に消えてしまいましょう。」


リリムには人類の男を全滅させる力などは無い。

そこで魔物の中でも混沌や破壊の象徴たる「レヴィアタン」の元を尋ねた。


「淫魔如きが、我に何の用だ。」


「人間の男を根絶させたいんです。

 そこで最も効率的な搾精方法として底なしの容量のあなたを器としたい。

 もう一つ、海を根城とするあなたにだからお願いしたいの。

 全ての人間が触れざるを得ない『水』。

 それに触れた途端、搾精されてしまうようにしたいの。

 そうして搾精された精液はあなたの中に溜め込んで行きたいの。」


「ふん、随分と勝手な申し出だな。

 しかし、人間界に混沌や破壊をもたらす案としてはかなり良い。

 よし、協力してやろう。しかし人間の男が根絶してしまえば

 お前達淫魔は生きていけないのでは無いか?

 牛や馬のそれを代わりに摂取出来るよう進化するつもりか?」


「いいえ、もう淫魔達は人間の男と運命を共にします。

 私一人の勝手な一存だけど…姉のリリスが人間の男に孕まされたの。

 もう、アイツらに存在意義は無いわ。淫魔も一緒に消えます。」


「ほう、面白いな。お前の一時的な感情で淫魔族全ての運命を背負い

 勝手に種族ごと滅ぼすと言うのか。良いだろう、混沌の極みだ。

 お前のその滅茶苦茶な発想を形にしてやるぞ。」


そう言うとレヴィアタンは近くにあった水に触れながら、

それに語り掛けるように言った。


『この地を覆う数多の水よ、触れた人類の雄全てに災いを。

 搾取した精液を私へと還すのだ。』


すると触れていた水面が揺れ始めた。

更には近くにある水分を含んだあらゆるものや、

遠くにある水場・水分を含むあらゆるものが揺れ始めた。


「凄い…さすがね、混沌と破壊の象徴、レヴィアタン。」


「ふん、本来ならば人間達自体が体内に多量の水分を含んでおる。

 しかし今回はあくまでそれは触媒としての役目を負わせた。

 体内の水分が外部の水分と触れた時、搾精が始まるのだ。

 どれ、少し待っていろ。すぐにでも始まるはずだ。」


ほんの2秒ほど待つと、360度あらゆる方向からレヴィアタンに向けて

大量の精液が集まって来た。


「わ、凄い勢いね!そして止む事が無さそうよ!」


「当然だ。人間は生活の中で必ず水に触れている。

 この流れはおそらく今日中は止まらぬだろう。

 あまりに多量の精液が順番待ちをしている状況だ。

 三日三晩を過ぎる頃には世界中の精液がここに貯められる。

 そうした時、この世界のどこにもお前達淫魔のエサは無くなる。

 まぁココにあるのだがな、全てが。」


「素晴らしいわ…。やっぱりあなたに頼んで良かった。

 それじゃあ、人間界を見てくるわね。」


「クク、淫魔と言えば人間の男を一人一人遅い、非常に非効率で

 魔物としてはゴブリン族のように卑屈な存在かと思っていたが

 お前はどうやら違うようだな。淫魔のリリム、名前は覚えたぞ。」


「ふふ、お姉ちゃんほどでは無いけれど、私も伝説を造れるかしら。

 それじゃあレヴィ、またね。」


そう言うとリリムは人間界へと飛び立って行った。




~人間界~


人々、とりわけ男性に限るのだが、水に触れた者達から、

突然射精をしてしまう現象が相次いだ。

最初は単なる恥ずかしいトラブルかのように思われたが、

人が密集している場所ほど早くにこの異常事態に気付く。

周囲の男達も皆、同じ状況にあったからだ。


「一体どうなってるんだ!?

 水に触れた途端、突然射精を…こんなの恥ずかし過ぎる!!」


「あぁ、何だか生きる気力が無くなってしまった…。

 もうこのまま会社に戻らず家に帰ろう。仕事は辞めよう…。」


街は阿鼻叫喚の射精地獄と化した。

リリムはこの現場へと到着した。


「フフ、良い感じね。お姉ちゃんを孕ませた憎き人間の男達…。

 苦しみながら、その生を終えると良いわ。

 もうアンタ達にはエサとしての価値すら無いわ。

 このまま共に絶滅しましょう。そして最後に私はお姉ちゃんを…

 殺す。人間との子を産み、育てるくらいならば…いっそこの手で。」


しかしそこへ、他の淫魔達がやって来てリリムに抗議した。


「ちょっと、何やってくれてるのよ!

 餌の男達が皆射精しちゃって搾精が出来ないじゃない!!」


「こんな状況で笑って…リリム、アンタが何かしたんでしょう?」


他の淫魔達の抗議に対してリリムが顔を向けた。

その表情は恐ろしいほどに満面の笑みを携えており、

異様なその光景に他の淫魔達は恐怖さえ覚えた。


「ヒッ、何この子…とてつもない悪意を感じるわ…。

 一体何がアンタをここまでの凶行に及ぼさせたの?」


「お姉ちゃんが、人間に孕まされたの。鬱だったのに。

 もう、人間なんていらない。そして淫魔も一緒に消えるの。」


「ちょっと、何を勝手な事を言ってるのよ!

 止めさせなさいよ、コレ一体どうなってるのよ、

 まさかサタン様のお力を使ってるワケじゃないでしょうね!?」


「そんなサタン様とは繋がりも無いよ。

 ただ、もう全てを終わらせたくなったんだぁ。

 ねぇ皆、ごめんね。私の我がままに付き合って貰うよ。

 そして一緒に滅びよう?」


「この子、狂ってる…。だけど今ここで殺してもどうせ後に死ぬ。

 こんなの、完全に詰みじゃない…ふざけんじゃないわよ。」


「詰み?あぁ、罪だよ、人類の功罪。たった一人の淫魔に対する暴行が

 私の怒りを買い人類は終わらされるの。惨めだよねぇ。

 いくら淫魔が戦う力が無い種族だとしても魔物の端くれ。

 人間程度がナメてかかって良い相手じゃなかったんだよ。」


「アンタ…淫魔族の恥だね。今のウチに石板にでも書き残しておくよ。

 淫魔族最低最悪の者の名として、リリム、あんたの名をね。」


「フフ、そういう形で歴史に名を残せるのかぁ、良いなぁ。

 ねぇホラ、見て。もうほとんどの男達の搾精が終わったみたいだよ。

 もう体内にはリビドーの根源も残っていないから、再精製出来ない。

 もう終わりなんだよ、アイツら。アハハハハハハ!!!!」


「フ・・・何だかアタシも笑えて来たかも。

 アタシ達今まで、あんな哀れな存在達を貴重なエサとして捕食して

 だけどよく見たらこんなにくだらないヤツらなんだね。

 一匹の淫魔の凶行にただ翻弄されるだけ…。惨め過ぎるでしょ。

 もう良いや、アタシも一緒に死んでやるよ、リリム。

 アンタの言おうとしてる事がわかった気がする。」


こうして、リリムの思想に共鳴する者まで現れ始めた。

そして無気力な男達が増え始めた事により、

社会は確実に崩壊への足音を踏み鳴らし始めた。


まず、定期的な機械のメンテナンスや作業・監視等、

今すぐに人の手が加わらないようになれば止まる仕組み達が

一気にエラーを吐き出し始めた。

そうしてあらゆる世の中の仕組みが次々と悲鳴をあげ始めた。

女達は何が起こっているのかわからないまま、

ただ社会が崩れるのを側で見ているしか無かった。



~リリス宅~


一方で、リリスは陣痛の痛みに苛まれていた。

淫魔の妊娠は人間よりも圧倒的に早い。

個人差はあるものの、1~3日程度で生まれてしまう事が多い。

リリスはひたすらに脅えていた。


(あぁ、もうすぐ産まれてしまうんだ。忌むべき、私の子…。

 せめてまだ、人間との禁断の愛の果ての結果なら良かった。

 あんな形でのレイプの結果なんて、最悪過ぎる。

 産まれたらどうしよう…。リリムはどこかへ行ったし、

 鬱状態の私がこのお腹の子を育てられるのかしら?

 ルシ―ファ様に協力を…いえ、ダメだわ。他人をアテにしては。

 だったら結局、産まれてもすぐに殺してしまうのかしら。

 何なんだろう、不可抗力とは言え禁忌を犯してしまい、

 同族達からは嘲笑と侮蔑の対象になり、妹も消えてしまい、

 私はこうして一人。お腹の中の子供だけが私を必要としている。

 ・・・何なのよ、この私の淫魔人生は)


リリスは自身の存在意義について疑問を持ち始めた。

やがて、陣痛が一層ひどくなり、ついに産まれるという直前。

彼女はお腹の中の子供からの声を聞いた。


(母様…私のような半人半魔の存在が大変申し訳ありません。

 しかし、産むという決断をして下さった事、大変に感謝です。

 今、貴女の心を苦しめているこの病気の根本原因、

 それを私は貴女の中で見つける事が出来ました。

 産んで頂くお礼と言っては何ですが、コレは私が持ち去ります。

 そして産まれたらすぐにでも目の前から消えましょう。

 忌み子とは言え、母の愛は多大なる存在意義となります。

 私のようなものでも、産む決断と言う愛を頂き非常にありがとう。

 母様、私は生涯、母様を愛しております…。)


次の瞬間、リリスはこの世のものとは思えない痛みに体が引きつる。

そして、星を丸ごと産んでしまったのでは無いかと言う衝撃。

文字通り体が避けるような痛みを味わいながら、確かに産まれた感覚。

そこには、白い光があった。


(母様、ありがとう…そしてさようなら。

 もう二度と会う事はないでしょう。)


それだけを言うと、光はそのまま遠くへと飛んで行ってしまった。


「何だったのよ、一体…。」


リリスはこの時、不思議な感覚に包まれた。

先程までずっと続いていた憂鬱な気持ちが吹き飛んでしまったのだ。


「ア・・・レ?鬱っぽさが無い…。

 私、治ったの?…あの子が、全部持って行ってくれたと言うの?」


一方その頃街では、リリムが人間社会の崩壊に高笑いを浮かべていた。

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