#4.リリスの自傷
鬱になってしまった姉淫魔リリスの為に、妹のリリムは魔界の王たる
ルシファーと共に特訓して一人で搾精が出来るようになった。
そして姉のリリスにも搾精した精液を分け与える為に瓶に入れた上で、
それを持ち帰り自宅へと帰って来た。
しかしそんなリリムの思いとは裏腹に、リリスは風呂場で自傷していた。
「お姉ちゃん!!
何やってるの、そんな事したら傷口が塞がらないじゃない!!」
リリムはすぐにシャワーを止めた。
既に大量の血液がシャワーで洗い流され続けたのだろう。
リリスはぐったりしてリリムの言葉に応じなかった。
「お姉ちゃん、そこまで苦しいの?
私が外に出ちゃってたから…ごめんね、お姉ちゃん…。」
この光景を見て、ルシファーは何も言葉が出なかった。
リリスの症状はあまりにも深刻なように思えたからだ。
「リリスがこんなになってしまうまで淫魔の上層部達は
搾取を続けていたと言うのか?」
ルシファーはあくまで一つの種族に過ぎない淫魔達でさえ
このような問題を抱えている事を初めて認識した。
「いつも犠牲になるのは底辺だが…コレはあまりに壮絶だな。」
リリスは決して底辺などでは無い。
しかし、彼女はあまりに淫魔の支配層達にとって都合が良かった。
能力が高く、その気は無くとも次期支配者層への推薦を仄めかす。
こうする事でリリスは更にその能力を存分に発揮していた。
「自らの最大限の能力を発揮した結果がこれだなどと…」
「しかもメア曰く、次期支配者上層部にはメアが推薦されてるの。」
リリムはルシファーに淫魔界隈の歪な采配を訴えかけた。
「とにかく今はリリスを介抱しよう。このまま放置していては危険だ。」
リリスは腕に包帯を巻かれ、ルシファーは慈悲の光を与えた。
これはルシファーが元天使である事から使える癒しの力だ。
「凄い…傷痕が少しずつ癒えて行く…。」
「もう既に私は天使では無いから、この力も消えて行っている。
それでもまだ、少し傷を癒す事くらいなら出来るだろう。」
出血は止まり、何とか傷口は塞がったようだった。
しかしリリスの体内には血が不足している状態かも知れない。
「輸血が必要かも知れないな。リリム、お前はリリスと同じ血液型か?」
魔物の血液型は500種ほどあり、それは親等間でも異なる事が多い。
その為、輸血となると合致する血液は非常に稀だ。
「えぇと、…あ、そうだ!
もしもの時の為に全淫魔の血液型を記載した一覧表があったはず。
こういう時だけは上層部の調査力がありがたいわ、皮肉だけど。」
そしてリリムは淫魔の血液型一覧表を見つけ出したのだが、
そこには意外過ぎる事実が記載されていた。
「そんな…お姉ちゃんと同じ血液型は、…メア?」
そもそもが同じ淫魔という種族は獲物を奪い合う関係である為、
それぞれに同種間での関係性は姉妹のような血縁が無ければ
その付き合いは表面的になりがちである。
しかしその中でもメアはリリムに対して侮蔑の感情があり、
輸血を訴えかければ強い抵抗は容易に想像された。
「メアが協力してくれる光景が想像出来ない…。
だけど今はどうしても血が必要だし…どうしよう、ルシファー様。」
「止むを得ぬな、メアに強力な力を与えてやるしかないだろう。
そんな事をすればメアが次期支配者層上層部への最有力候補になり、
より盤石な地盤を与えてしまう事になるが…。」
「ただでさえお姉ちゃんに匹敵する力を持って政治力もあるメアが
更に強力な力を得てしまうなんて…だけど仕方ないよね。
背に腹は変えられないもん。ルシファー様、お願いします。」
「よし、わかった。それでは今からメアを強制召喚するぞ。」
そう言うとルシファーは悪魔の王としての権限によりメアを召喚した。
「あら、アタシ召喚されたの?
え、ルシファー様?それにリリムも…どういう事かしら?」
リリムは一通りの経緯をメアに伝えた。
「ふぅーん、それでアタシの血が必要ってワケなのね。
そしてそれはタダでとは言わず、より強力な力が得られる、と。」
「あぁ、私は悪魔の王だ。二言は無い。」
「別に良いですよ?リリムはウジウジ姉に隠れて嫌いだけど、
リリスは良きライバルとして尊敬もしていましたし。
ただ、今回の件でアタシが力を得るともう、リリスですら
アタシに匹敵する淫魔は居なくなるでしょうね。
良い気分である反面、物足りなさもあるわね。」
「わ、私がこれから修行してメアを超える淫魔になるから!」
「冗談は止めて頂戴?
今からアンタが修行した所で、これまでのアタシやリリスの実績は
長年の淫魔界隈への貢献があっての評価があるのよ。
それを今から急成長したとしてもアンタにはひっくり返せないわ。」
「それはまぁ、そうかも知れないけれど…。」
そして口ごもるリリムをよそに、ルシファーが催促をする。
「さぁ、それでは早く輸血をするぞ。
あまり長く放置すれば良い事にはならない。」
「ハァーイ、どれくらいの血が取られるのかしら?
血を取られた後しばらくは気分が悪くなったりするのかしら。」
「影響は全くの0とは言い切れないな。しかしすぐに元に戻るはずだ。
それでは行くぞ、魔界医を呼んでいる暇は無い。私が直接施術するぞ。」
そう言うと、ルシファーはメアの身体に向けて魔力を当てた。
「さぁ、それでは一気に引き抜くぞ、気分が悪くなるだろうが、
そう長い事は無い。耐えてくれ。」
━ズモモモモ・・・━
血の塊がドロリとメアの口内から出て来る。
その光景を見てリリムは衝撃を受ける。
「え、何か結構グロい…。
って言うか心配する義理も無いけど、メア大丈夫なのかな?」
血を抜かれたメアはグッタリと倒れ込み、無感情になった。
「まぁ、暫くは動けないだろう。さて、リリスに血を移すぞ。」
ルシファーはそう言うと、血の塊をリリスの口から入れて行く。
━ズ・・・ズモモモモモ・・・━
瞬間、リリスの身体がビクンッ!と跳ねる。
同じ血液型とは言え他人の血を体内に入れる輸血行為。
体側から一定のショックや拒否反応がある事はむしろ自然だ。
「お姉ちゃん、どうか無事に終わって…」
祈るリリムだったが、それが無駄に思えるくらいに施術は
すんなりと終わってしまった。
そしてリリスの顔や肌に生気が戻る。
「ん・・・う。アレ、私、まだ生きてるのかしら…。」
リリスは起き抜けの呆けた状態ではありながらも、
先程までの血が足りずに危機的な状態は脱していた。
「お姉ちゃん…!!
ごめんね、一人にしちゃって…寂しかったのかな?」
「リリム…。あぁ、いえ…別にそんなんじゃないの。
ただ心が弱っていただけよ…私の方こそごめんなさい。」
一先ず、リリスの命の危機は脱したようだった。
そしてリリスがメアの存在に気付く。
「あら、メアじゃない。どうして倒れているの?」
リリムはメアがリリスに輸血をするまでの流れを説明した。
「そんな…私のせいで皆に物凄い迷惑を掛けてしまって…ごめんなさい。
ルシファー様、メアは起きるんですよね?」
「あぁ、当然命に係わる程の血は採っていないからな。
しかししばらくは寝込むかも知れない。体の回復の為にな。」
リリスはおぼつかない足取りで、メアの寝床を造ろうとした。
しかし身体が思うように動かず、躓いてしまった。
「お姉ちゃん!ダメだよ、ちゃんと安静にしていて。
そういう事は私がやるから、大丈夫だよ。」
リリムはメアの為の寝床を作り、ルシファーと共にメアを運んだ。
それにしてもぐっすりと眠っているようだ。
「嫌味もいっぱい言われて来たけど、今回はお姉ちゃんを助けて貰って。
メアにも感謝しないとだよね。」
「あぁ、起きたらそうすると良い。」
リリスは命の危機を脱したものの、やはり鬱症状は続いていた。
「次はもっと迷惑を掛けない死に方を選ばないとね…。」
「もう、お姉ちゃん!死ぬとかダメだよ。
それにメアから血を分けて貰ったんだから、ちゃんと生きて。」
「・・・そうね、ごめんなさい。血を分けて貰ったからには…
もうしばらくは生きてみる事にするわ。」
「生きて『みる』じゃなくて、生きるで良いの!
辛い時期かも知れないけれど、発言を少しでもポジティブにして
落ち込み過ぎないようにしなきゃ。」
リリムの発破をかけるような言い方が正しいのかはわからなかった。
余計に鬱を悪化させてしまうのかも知れない。
それでもリリムはリリスの気持ちの落ち込みが症状をより悪化させて
病状を長続きさせてしまうのでは無いかと考えた。
「それでは私は一旦戻るが、また定期的に見に来るとしよう。
リリム、もう一人で搾精は出来るな?」
「ハイ、ありがとうございました、ルシファー様。
あとは何とか私の方で頑張ってみます。」
そしてルシファーは自身のやるべき事をする為に城へと帰って行った。
「お姉ちゃん…、あ、そうだ。精液を瓶に入れていたんだった。」
「あまり食欲は無いけれど…せっかくリリムが採ってくれたのなら
頂くとしようかしら。」
しかしリリスが採取した精液は人間のオスの中では比較的臭みが強く
不味いと言われているマゾオスから摂取したものだった。
「う”、臭っ…何よコレ、…あぁ、わかった。マゾオスの精液ね。」
鼻を突くツンとした臭みが一度嗅げば鼻から取れない。
また味にもエグみがある。マゾから取れるものは総じて、
オスとしての旨味に欠ける3級品だった。
「う”げ、不味いけど…リリムが頑張って採ってくれたんだものね…。」
そう言いながらリリスは無理矢理に精液を喉に流し込んだ。
体が受け入れる事を拒み、逆流して嘔吐しそうになる。
しかしリリスはそれを意思の力で再び飲み込み、何とか飲み干した。
(ハァ、ハァ…不味過ぎるわ。
だけど本当の事を言ったらきっとリリムが気を病んじゃう。
あぁ、でもこの容赦なく鼻腔を抜けて匂ってくる臭み、
こんなのコクや味なんかじゃなく、シンプルに不味いだけだわ。)
リリスは実力だけなら高位の淫魔達にも引けを取らない強さだった。
その為彼女は美味い人間の男を選んで摂取していた。
そこで美味い精液に慣れていたのだが、リリムはそうは行かない。
(しばらくは、リリムが採って来てくれる精液をアテにして
何とか命を繋ぐしかないわね。あぁでも本当に不味いわぁ。)
リリスは吐き気を覚えながらも何とかマゾ精液を飲み干した。
そしてリリムに向かって精液塗れの舌を出して見せる。
「んぇ・・・どうかしら、見える?コレ、好きな人多いよね。」
彼女達は時折、仲間内でこのような煽情的なポーズを練習している。
火照り少し赤らんだ頬、とろんとした目線が相まって、
その表情は非常にエロティックに見えた。
(お姉ちゃん、凄いな…。
病気になれど尚、むしろそれを武器にしてよりエロくなってる…。)
こうして低調ながらもリリスはまた療養生活を再開した。
それから三日後、リリムがある事に気付いた。
「お姉ちゃん、どうしよう。メアが全然起きないんだけど。」




