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姉淫魔が鬱になっちゃった話  作者: みぎゃー


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16/19

#16.リリスのクローン

「フッヒッヒ、高値で売れそうな淫魔だなぁ。

 しかもかなりの身体…コレは美味しく頂いちゃった後でも良いか。

 いや、そもそも色々と改造して性奴隷にするっていう手もあるかな?」


違法魔界医はリリスを眠らせた後、リリスをどうするかを勘案した。

売ってしまえば自分の手元に残らない、しかし売ればかなりの大金になる。

しかし手放すには惜しいほどの身体をしている。

こうしたジレンマを何度も天秤にかけながら、魔界医はある方法を考えた。


「そうか、仲間の違法魔界医に頼み込んでクローンを作るか。

 鬱ってクローンにうつるのかな?まぁ良いや。その方が都合良いけど。」


違法魔界医には同じく違法魔界医の仲間が存在していた。

そしてそれぞれに強みがあった。

リリスを攫った魔界医は裏組織とのコネクションがあり、金銭担当。

そしてこれから依頼しようとしている魔界医は医療担当であった。

魔界ですら禁じられているような禁忌に手を出したアウトローである。

二人は互いに役割分担をする事でやりたい放題だった。


呼び出されたもう一人の違法魔界医は性格的にはまともであった。


「ふむ、なるほど。確かに豊満な身体をしているな。

 コレは高値で売れるのだろうが、自分用に欲しくなる気持ちもわかるぞ」


「だろ、だろ?それで、クローンは作れるよな?」


「あぁ、まぁ厳密な意味で完全なクローンにはならぬが、

 急成長するヌル遺伝子にコイツの遺伝子情報を組み込めば

 自己増殖を繰り返しながらやがてコイツに似たクローンが出来る。

 しかしまぁ、こんな淫魔のクローンが出来ればお前も安泰だな。

 相当高く売れるぞ、この淫魔は。それに体も最高だ。

 私も一体クローンが欲しいくらいだ。」


「だったら、造れば良いじゃん造れば良いじゃん♪

 さぁ、そうと決まればサッサとお願いするぜ、金ならいくらでも。

 いやぁ~、楽しくなって来たぜ~。」


こうしてリリスの身体は恐ろしい計画に使われる事になってしまった。


~~~


ゲノム解析の中で魔界医はリリスの塩基配列に特徴的なものを見付けた。


「んん、コレは精神疾患を持つマウスに特徴的だった並びに似ているな。

 つまり、自己評価が低くそれを補う為に頑張る傾向があり、

 しかし一旦それが度を超えてしまえば精神的に壊れてしまう。

 まぁコチラとしては扱い易い存在だな。面白い淫魔だ。」


リリスの遺伝子情報は解析され、ヌル遺伝子にそれらが組み込まれた。


「さて、後は培養液の中で自己増殖させて、一定数を越えれば次は羽化機。

 更に一定の形質を保った生命の塊に魔力を与えて自己形成を促す。

 科学と魔力のブレンドで生み出されるこの禁断の技術。

 いやぁ本当に表のヤツらはコレをやれないのが悔しいだろうなぁ。

 ハッハッハ。」


マッドサイエンティスト、という陳腐な言葉では括れないくらいに、

研究者としての探究心の果てにあったこの魔界医はある意味で正常だ。

特に人間の研究機関と違い魔界はこうした医療技術への介入が甘い。

その為多数の違法魔界医が横行し、それらの多くは技術力も高く無く、

単なる興味本位から腕を4本付けたりするだけだが、時々こうした

高い技術力と確かな知識を兼ね備えた天才が存在している。

こうして3週間の後、一体目のリリスのクローンが出来上がった。


「おぉお、素晴らしい…。おいお前、名は何と言うのじゃ?」


「私は…リリス。リリムの姉であり、優秀な淫魔よ。」


「ふぉふぉ、コレは…かなり良い出来じゃわい。

 しかしアイツに渡すのが何とも勿体ないの…。

 そうじゃ、クローンは失敗した事にして、

 まずは一体、失敗作として命の無いクローンを作るか。

 そしてソイツを差し出してクローンの途中で死んだ事にすれば、

 後はワシが好き放題に研究出来るぞ、ククク。」


こうしてリリスの身体は次の魔界医へと渡ってしまった。

リリスは時々目が覚める度に何度も睡眠剤を注入された。

その為彼女はずっと意識混濁が続き、生命維持活動ですら

かなり危機的な状況になってしまったが、その度に栄養剤が投与され

もはやその身体は完全に実験材料と化していた。


「それにしても、本当に哀れなヤツじゃのう。

 なまじ美し過ぎるがあまりに男達の興味をそそってしまい、

 こうして縁も無いワシら違法魔界医の元を渡り歩かされ、

 挙句にはクローンを作られて自らの尊厳さえ破壊される。

 コヤツは何も悪い事をしていないと言うのに、一体何が

 コヤツをここまで不幸に落とし込むのじゃろうのぅ。

 まぁ、それをやっておる張本人がワシ自身なのだがな、

 ふぉっふぉっふぉ!!」


こうして命の無いリリスのクローン体が作られ、

依頼主の魔界医にはクローン失敗の証としてそれが渡された。


「そんな…!!

 まぁでも仕方ないか、クローンって相当難しい技術なんだよな。

 まぁあの妹の依頼主にはコレを渡して納得させるか。

 でもあの妹も中々だったんだよなぁ。

 今度はアイツを元気に生きたまま何かしら捕獲出来れば…。

 まぁ良いや、今回は残念だったな。だけどお前の技術は確かだぜ。

 あまり落ち込むなよ、また何かしら依頼かけるからよ。」


こうして依頼元の魔界医は帰って行った。

しかし一言だけが引っかかってしまった。

━『お前の技術は確かだぜ』━。

一見すると単なる慰めにも思えるが、失敗した相手に対して

このような言葉を掛けるものだろうか。

まさか、わざと失敗を装っているのがバレているのか?

しかし考えても答えが出ない為、魔界医は研究室へと戻った。

すると、最初に作ったクローンが逃げ出していた。


「しまった、何かしら枷を付けておくべきだった…!!

 短時間の死体の受け渡しだと油断していた…。

 まだ近くにいるのか!?ええぃ、しかしどこをどう探せば…」


診察代にはオリジナルのリリスが眠っている。

クローン一体を逃した代償は大きいが、本体が残っていれば

クローンは再び造る事が可能だ。


「クッ、高い勉強代になってしまったが仕方ない。

 もう一度クローンを造るとするか。

 それにしても、かなりの費用が掛かったと言うのに…。

 次に造るクローンは一旦売るか…いやダメだ。

 アイツに渡す事が出来ないじゃないか。

 そうなると…どうやってクローンを金にすれば良い?」


魔界医は頭を悩ませた。

その時、クローンリリスは淫魔姉妹の自宅へと向かっていた。


リリムは姉を魔界医に預けてから半年近く経った頃、

再び魔界医の元を訪れていた。

本来なら夜逃げでもして事務所を空にしても良かったのだが、

魔界医は律義にも同じ場所で違法魔界医を続けていた。


そしてリリスの遺体を見せてリリムに言った。


「大変残念だけどお姉さん、死んでしまったよ…。

 やっぱりこうした精神疾患は体にも負担が掛かっているんだね。

 まぁそれでも治療はしたにはしたから、お金だけは貰うからね。」


リリムは非常に驚き悲しみに暮れたかったが、

先ずはやるべき事を済ませてからにしようと金銭の処理を優先した。


ルシファーとの婚約の際に一定の小遣いを得ていた彼女は、

その全てをこの魔界医に支払った。

しかしあまりに高額なその請求額はリリムを一瞬で無一文にした。


「お姉ちゃんが死んで、しかもお金まで無くなるなんて…。

 どうしよう、私まで鬱になっちゃいそう…。」


そうして帰り道に、リリムは誰も居ない河原で一人泣き濡れた。

リリスの遺体を抱きしめて、ただワンワンと泣きはらした。


「どうして…どうしてなの、お姉ちゃん…!!

 あんなに最後まで生きる力があったお姉ちゃんが、

 治療の途中で死んでしまったなんて信じられない…。

 だけど確かにこうやってお姉ちゃんの遺体はあって…。

 うわぁぁぁん、嫌だよぉ、お姉ちゃん何で死んじゃったのぉぉ!」


リリスは数時間、ひたすらに泣いていたがこうもしていられないと

自宅へと姉の遺体を連れ帰った。

しかしそこには


TVを点けながら家事をしている姉の姿があった。


「ただいま~、って誰も居ないか…アレ?誰かいる。

 ルシファー様かな?それにしても勝手に家にあがるなんて。

 一時は婚約していたとは言え、今はもう他人のレディの家だよ。

 ってアレ、お姉ちゃん!?」


「あら、リリム、おかえり。あぁ、その顔わかるわ。

 そうよね、だって私の遺体を連れて帰って来たんだものね。

 良いわ、ちゃんとゆっくりと順を追って話すから、

 あなたのペースで良いから話をちゃんと噛み砕いて頂戴。

 良いわね?信じられないような話でも、ちゃんと理解して。

 そして一緒にこの狂った計画を止めさせましょう。」


姉妹の運命は再び大きな荒波に飲み込まれ始めていた。

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