絵
わたしはいつまで海さんを見ていたのだろう。今日一日で現実と非現実が入れ替わった気がする。違うよね。非現実と思っていたものが現実で、それに勝手な理屈をつけていた上辺が現実と信じさせられていたものなんだ。実像と虚像が、入れ替わったんだ。月さんがいなくなって暗くなった夜、微かな波の音が耳をくすぐる。きっと海さんは月さんと一緒になって喜んでいるんだろうな。
その後のニュースや特別番組が、わたしにはとても面白かった。まだまだ学者さんたちが出ずっぱり。どうしてのせめぎ合いをしている。
どうして潮の満ち引きが変わらないのか。わたしが答えてあげる。月さんと海さんがいつもダンスパーティをしているから。どうして地球の自転速度が変わらないのか。それも答えてあげる。コスモスさんが眠るのに心地良い速度だから。どうして体重が皆増えたと言っているのか。コスモスさんの思いが乗っかっているから。
今のわたしがこんなことを言っても、どこにも響かない。だからわたしは、伝えられる人にならないと。どんな人がいいのかな。ゆっくりと考えていけばいいや。
そういえば興味深いニュースがあがっていた。月さんを飲み込んだ海さんは、わたしだけのところだけじゃなかったみたい。世界のいろんなところで起きていたんだって。地球の反対側でも。そこでは海さんが月さんに向かっていくとき、空が海に覆われたって怯えていたみたい。話だけだとロマンチックなんだけどね。きっとわたしと同じ人が世界に何人かいたってことかな。いつか会ってみたいなぁ。
月がなくなってから一週間後、特に地球に異常はないとして学校も始まった。
学校じゃ月がなくなったことが話題になっている。当たり前か。様々なメディアで言っていることをみんなが話している。わたしは自信満々に、地球が頑張ったからって言っている。けどまだまだダメ。本気で言っているとは思われない。もっと上手く伝えられるようにならなくちゃ。あと何人かの人が海の柱を見ていたみたい。それをああだこうだと理由をつけようとしている。わたし言ってやりたい、あなたたちは学者かって。
そして念願の美術の時間。これもわたしの思いの丈を伝えるチャンスの一つ。前の下書きから手を加えて、最高傑作を仕上げるのだ。地球に嘴を描き足して、それに寄り添うように月を置く。わたしとしては満足。でもね、わたし絵心無さすぎかも。




