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90億人の精神集合体が異世界に召喚されたのでみんなでちょっとお邪魔してみた。  作者: ハマタハマオ
第3章 鉄錆と黄金の終焉、あるいは管理者によるシステム・リブート
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第29話:エーファの楽園再構築(ハック・建国)の狼煙


 「……それではワシは行くぞ。一人で。誰の付き添いも無く。本当に、一人きりでな?」 


 王城のバルコニー。精悍な 青年 へとアップデートを遂げたエドヴァルトは、何度も背後を振り返りながら、重厚なマントを翻した。

 脳内の エド/軍略 は「魔国への単独潜入が最適解である」と冷徹に告げているが、つい先刻まで九十億の兄弟たちと意識を共有していた彼にとって、一人での旅立ちは耐えがたいほどに寂しいのだ。


 「エドヴァルト殿、やはりせめて一分隊だけでも……」

 騎士団長ジークムントが沈痛な面持ちで拳を握る。男たちの熱い心配に、エドヴァルトは(もっと止めてくれ……!)と内心で涙を流しながら、精一杯の「強がり」を絞り出した。


 「よいのだ、ジークムント。ワシは孤独に慣れておる(嘘だ)。……さて、エーファ。寂しかろうが、お主はここでクララと――」


 「あ、エドまだいたの? 頑張ってねー、はいお土産よろしく!」

 エーファは一切こっちを見ていなかった。

 彼女は新しく手に入れた『管理者権限』で、どこからか取り寄せた「ふわふわの付け髭」を鼻の下に装着し、鏡の前でポーズを決めている。


 「……ああ、行くよ。行くともさ。兄弟」

 エドヴァルトは、精悍な横顔に隠しきれない哀愁を漂わせ、光の中に消えていった。



 「さて、クララ! コンラート先輩がチマチマ作ってたこの国の魔力配線グリッド、ボクが今すぐ『最適化パッチ』してあげるね!」


 エドヴァルトがいなくなった瞬間に、エーファの「楽園再構築」という名の暴走が始まった。

 彼女が付け髭をピクピクさせながら虚空に指先を滑らせると、青いインターフェースが闇を照らした。


 「エーファ様、お待ちください! コンラート様は『魔力供給は10%の余力を持ち、決して過負荷をかけてはならない』と仰っていました!」

 師匠の教えに忠実なクララが、顔を真っ青にして必死にタブレットを抱え込む。


 「大丈夫大丈夫、安全マージンなんて全部削れば300%まで出力上がるから! えいっ、ポチっとな!」

 「300パーセント!? 爆発します! 王城が光の塵になります!」


 クララの悲鳴を余所に、エーファが空中のボタンを叩く。

 次の瞬間、凍てつく闇に沈んでいた王都中の街灯が一斉に、太陽のような輝きで点灯した。要するに、 「古い電球を最新の超高輝度LEDに、配線ごと強引に書き換えた」 ようなものである。


 「ほら、あったかくなったでしょ?」

 「……あ、温かいですが……。コンラート様が知ったら寝込むか、私を破門するかのどちらかです……」

 規律正しいクララは、爆速で解決していくライフラインを前に、あわあわと手を動かすことしかできなかった。



 光の復活に驚き、王城の下に集まった民衆たちの前に、エーファはバルコニーから身を乗り出した。付け髭を「かわいい感じ」に整え直し、 「エド/演説」 の魂を一時的に借りて叫ぶ。


 「ヴィーダーラントの兄弟たちよ! いずれこの国は『常夏の楽園』にアップデートされるよ!」

 

 その声には、九十億のカリスマが宿っていた。

 「ボクが来たからには、もう凍える夜は来ない。水耕栽培でイチゴも食べ放題! ……あ、そこ、お腹空いてるの? じゃあ先にパスタの配給もしちゃうね!」

 演説の最中に個人の要望に応え始める自由すぎる「管理者」に、民衆は戸惑いつつも、その圧倒的な可愛さと光の恩恵に「エーファ様ーーー!!」と地を揺らす熱狂で応えた。


 「……おいおい。これじゃあ、俺たち騎士の出番がなくなるじゃないか」

 ジークムントは、エドヴァルトの残していった「哀愁」を思い出しつつ、それ以上に手に負えないエーファの快進撃に、深いため息を吐くのだった。


   挿絵(By みてみん)


 【第29話:状況まとめ】 

 エーファ: 「エドが寂しそうに魔国へ旅立ったけど、ボクは付け髭のフィッティングで忙しいから大丈夫! クララが『師匠の教えがー!』って泣いてる間に、王国の魔力インフラを300%に魔改造しておいたよ。要するに、ボクが神様なんだから、細かいルールは無視して全部ハッピーに書き換えちゃえばいいんだよね!」




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