第28話:二拠点の同期(シンクロ)と、魂の超高速バイパス
◇ 離れていても「超高速LAN」
「……よし。今からボクたちの魂を、『共有ネットワーク』として定義し直しましょう」
ヴィーダーラント王城のバルコニー。青年へと成長を遂げたエドヴァルトは、隣に立つエーファの細い肩に手を置いた。
これからエドヴァルトは魔国へ、エーファは王都の復興へ。物理的に離れることは、リアルタイム共有を基本としてきた彼らにとって、致命的な「ラグ(遅延)」を意味する。
「ねえエド。ボクがこっちに残るなら、君のバックアップはどうするの? 寂しくてログが震えちゃうんじゃない?」
エーファがいたずらっぽく笑う。だが、エドヴァルトの瞳には冷徹な演算の光、そして九十億の「武芸者」の覇気が宿っていた。
「ふん、策はある。エーファ、お主の『管理者権限』を、ワシの内的領域(内的サーバー)と物理直結させるぞ」
◇ 意識の多重起動
エドヴァルトがエーファの意識に深くダイブする。
脳内で、九十億の魂から選抜されたスペシャリストたちが、凄まじい速度で「通信プロトコル」を書き換え始めた。
【HIM_Core】:二拠点間同期プロトコルを起動。
【HIM_Core】:対象「Edwald」と「Eva」の意識共有ライン構築……完了。
「あ……すごい。エドの演算が、ボクの脳に直接デプロイされてる……!」
エーファの瞳の奥で、膨大なログが超高速でスクロールされる。
これが第一のチート、 『二拠点同時同期』 。
要するに、二人の肉体を「超高速のLANケーブル」で繋ぎ、二つの肉体を持ちながら、一つの巨大な並列コンピューターとして振る舞うのだ。
「よし、次は『魂の出張』テストじゃ。……『エド/演説』、お主の出番じゃぞ」
エドヴァルトがスイッチを切り替えると、彼の肉体は「スリープモード」のように静止した。
代わりに、エーファの体がビクンと震える。
「ヴィーダーラントの諸君! 今日は絶好の建国日和だね、兄弟!」
エーファの可憐な口から、伝説の演説家の重厚な「イケおじボイス」が響き渡った。
これが第二のチート、 『スペシャリストの任意往来』 。
専門ソフト(人格)を、二人の間で自由にインストール・削除できるのである。
◇ リモートデスクトップ機能、搭載
「うわっ、ボクの体が勝手に演説を! エド、これちょっと変な感じだよ!」
中身がおじさんになったエーファがジタバタと暴れる。
「成功じゃな。さらに、これだけではないぞ……。エーファ、視界を貸せ」
次の瞬間。エドヴァルトの精神がエーファへ遷移し、エーファの精神がエドヴァルトへ流れ込んだ。
第三のチート、 『精神転移』 。
要するに、肉体という「端末」はそのままで、ログインするユーザー(人格)だけを瞬時に入れ替える「リモートデスクトップ機能」である。
「……見事なものですね。もはやお二人には、距離という概念などデバッグ(修正)済みなのでしょう」
背後で控えていたヴェンツェルが、恐怖を通り越した顔で感嘆する。
「その通りじゃ。ワシが魔国にいようとも、エーファの肉体を借りてこの国のインフラを直接ハックできる」
エドヴァルト(中身はエーファ)の肉体が、慣れない高い視界に「うわ、デカい……」と呟きながら不敵に笑う。
一人は北に、一人は東に。
肉体は二つに分かれても、彼らは依然として一つの無敵なシステムだった。
【第28話:状況まとめ】
エーファ: 「エドとボクは、離れていても頭の中が常に同期されるようになったよ! スペシャリストのおじさんたちも、ボクとエドの間を自由に行き来できるんだ。なんなら意識を入れ替えて、ボクがエドの体で魔王相手に無双することだってできちゃうんだよ。……要するに、ボクたちは二人で一組の『最強のクラウドサーバー』になったってことだね、兄弟!」
次回も18:00にUP予定です、明日もぜひ見てくださいね。
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