新たな教官と問題
あの日から数日経った。事件は夢像軍の幹部による犯行だと分かった。それから戦闘ファイラーを持つ能力者は交代で街を見回り、いつどこで何が起きてもいいようにしている。
訓練場では金属の金切り音と夢像のホログラムが消える光が漂っている。
「70%。今の刀の出来は相当良いものだったわ…でもまだ状況や物によってばらつきがあるから、もっと均等に生成できるようになると安定して戦えるわ」
「イマジナーさん。ずいぶん成長しましたね!前まで刀を作ることすらままならなかったのに。気づけば不可能が可能になりかけてて…」
フェルンは感慨深く話す。
「イマジナー。今日はゲストを連れてきた。ここでもしゲストに勝てば、研究施設の最終試験を受けるといいだろう。彼に勝てばほぼ試験には合格できるだろう」
「カリスルーンだ。シュミレーションでは怪我をすることがない。本気で行かせてもらう」
僕より少し身長が高く大剣を持った男性が現れた。
「彼は、スノーフォード学園で教員をしてるの。学園でも上位を争う実力者よ」
見るからに強そうで威圧感と闘争心が溢れ出している。
「早速、その力見せてもらおうか…」
シュミレーションに入る。開始の合図がなってまずは相手の動きを観察した。
また向こうも同じようにこちらをじっと観察している。
先制攻撃はこちらから仕掛けた。アメストの刀を生成し勢いよく刀を振りかざす。大剣に阻まれカキンと音がなる。しかし刀を盾に変えて体当たりをし相手のバランスを崩した。
しかしカリスが大剣を地面に振りかざした瞬間に巨大な地割れが起きて凄まじい威力の爆発に巻き込まれてしまう。盾では防ぎきれなかった衝撃波に押されてしまう。刀を地面に刺して体が吹き飛ばないように固定する。
今度は氷の弓矢で攻撃をした。矢が着弾した所は凍りついて行動不能にできるはず。案の定カリスは氷漬けになっている。その隙に刀で斬り刻む。そしてトドメを刺そうとした瞬間に氷が溶けてカリスがいなくなっている。
寒さで震える指に力を入れて刀を構える。背中から心臓を貫かれたような視線を感じる。咄嗟に振り向いて攻撃を受け止めようとした。
しかし力一杯に振りかざされた大剣には勝てずにパキンと折れてしまう。
しかし想定内だった。わざと分が悪い刀で攻撃して相手の油断した所を狩る作戦だった。秘策としてカリスの大剣を想像して生成した。先ほどの刀よりずっしりとした重圧感を両手に感じる。完成度は低かったが、確実にダメージは入っている。
「負けて…たまるか!」
カリスはさらに力を込めて大剣を振る。僕は攻撃を受け止め後ろに下がる。この攻防を続けていた。だんだんと押され始めて額に汗が浮き出る。
(やはり…完成度が低いから攻撃を受け止めるだけで精一杯だな…)
盾と大剣を合体させた武器を想像して生成をした。効果は抜群で盾で大剣を弾き大剣の部分でカリスを貫いた。なぜか目の前にカリスの姿は無かった。
「甘い!」
大剣を完全に避けれずに右脇を切られてしまう。データの判定は重傷だ。痛みは感じないが視界が少し歪み。
「これで終わりだ!」
片膝を付いている僕にカリスは容赦なく畳み掛けてくる。
(負けたくない…昨日…ユーリエに誓ったんだ、この世界を守るって!誰も悲しませない!そんな未来を作る!だから負けない!)
右手に黄金の光が宿った。その光は一つの刀になった。この刀に重さを感じなかった。僕の左目には真っ青な光が一つの魂のように渦巻いている。そして音が消えた。
「夢窮状態?!いや…バイタルは夢窮状態とは違う形…なんだ…」
カリスは鋭い目つきでこちらを見つめる。
風の如く姿を現して奇襲を仕掛ける。カリスも負けずと大剣を大きく振って竜巻を起こして対抗してくる。空中に吹き飛ばされてしまう。
たった一つの隙が命取りになる。刀を投げ捨て足元に注意を引かせる。カリスの目線が下に向かうのを確認して、投げナイフを形成して誤差なく胸を貫く。
「勝者、イマジナー」
無機質な声がフィールドに響く。カリスは汗を流して呼吸が荒くなっている。
僕は力が抜けても、その場に立ち尽くしている。いつもなら倒れているだろうが、今日は体がふわふわと軽くて戦いやすかった。
「無限の可能性の想像の力…あっぱれだ。きっとこの世界を照らす光となるだろう。君と戦えて光栄だ。メーク…君はとんでもないファイラーを育て上げたな…」
「いえ、これは彼の才能です…私はただ彼の能力を最大限生かせるように教えたまでです…しかし先ほどの状態は…」
フェルンは目と口を見開いている。開いた口がふさがらないとはまさにこの事だろう。
「夢窮状態じゃ…ないよね?本当に大丈夫…」
氷の弓矢はローリエにコツなどを教えてもらった。まだ代償で指先が冷たい。
「明日に試験が受けれるように俺が手配しておく。今日はもう明日に備えて休もう」
カリスは謎の光を放ちながら姿を消した。瞬間移動だろうか、数秒だけ隙ができるので戦闘向きではなさそうだ。
「スピード出世ってこと?」
「ああ、もし明日の試験に合格したらの話だが…私もどんな試験があるのか実際の所は分からないが、簡単だと言う噂もある。想像の力の場合は長年出てこなかったのもあり、試験内容もあやふやなんだ。でも試験に合格する事を願っている」
メークは誇らしげにこちらを見つめた。生暖かい風が僕の頬を撫でる。
「遂にイマジナーさんもファイラーデビューですか?!」
「そうだね。フェルンと共闘できる日を楽しみにしてるよ」
帰り道で他愛もない話をしていた。しかしまだ大豆畑の犯人が見つからないことに気を取られてしまう。
近くに植えてある花の匂いが辺りに漂う。金蓮花が花壇に植えてあった。
「モッチ達は?」
「ローズとユーリエ達と一緒に研究員の護衛をしてるらしい。昨日に研究員が何者かに襲われる時間があったらしくて。解析結果でインクラー反応が出たらしくて。近くに幹部級の夢像が潜んでるってこと」
うんうんと頷きながら歩いていると、学生服を着ている少女が何やら忙しい様子でこちらに近づいてくる。
「あの!ここ最近でグラジオラスさんっていう人を見かけませんでしたか?最近学校を休んでて、家に行ってもいなかったので…」
「見かけてないよ」
僕がそう答えると制服姿の少女は頭を下げてまた駆け足で他の人に話を聞いている。
「最近、不思議な事が多いですね。ですが、ファイラー登録証があるなら、追跡が可能なはずですが…」
フェルンの何気ない独り言が僕の心に引っ掛かる。
(この前…謎の影が僕を拘束してきたな…あいつの存在が怪しと感じる。あんな事を言ってきたのだ。必ず裏があるはず).
(次は思い通りにさせない)
太陽がほんの少し東に傾いていた。




