表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

10話 笑子さんの驚愕

笑子さんの驚愕


「やめる?」

同僚の言葉に、笑子は目を丸くした。

「ううん。やめるんじゃなくて、やめたの。」

同僚はさっさと、自分のいた机の上を片付けながら言った。

「まって、だって、辞表は?出したの?」

「出したわよ。」

「なんでよ!私のほうがずっと出しつづけているのに、なんであなたのほうが受理されて、私のはダメなのよ!」

同僚はちょっと手を止めて言った。

「そぉねぇ、ま、いろんな理由があるわね。」

「たとえば?」

「あたし、彼女の親戚だし。」

「社長の?ほんとにいとこなの?」

「ううん。もっと遠い親戚。でも、今回この仕事をやめるのは、介護のためだし、それも理由の一つになるんじゃない。」

「それだけ?」

「他にもあるわよ。あなた、社長の昔の知り合いみたいよ。」

「……私が?知っているわけないじゃない!」

「でも、社長のほうは知っているみたいよ。だって、私、あたなのことを調べたもの。」

「調べた?」

「そう、学校とか、職歴とか。一緒に秘書課に来たのも、社長の命令だったのよ。」

「な、なんですって?」

笑子は愕然として聞いていた。

「どうしてあなたの事を知っているのかは、知らないわ。」

「ちょっと、本人に聞いてくる!」

笑子はものすごい勢いで社長室に向かった。コンコン。返事がない。コンコン。ちょっとためらってから、笑子は社長室のドアを開けた。

すると。机に突っ伏している。

「社長!」

笑子はかけよってみると、礼子は顔を真っ赤にして意識もうろうとしていた。

「医者!医者呼んで!」

笑子の声が廊下に響いた。

「風邪ですけど、ひどい熱ですね。注射をしましたが、これで明日までに熱が下がらなかったら、明日病院に連れて行きましょう。」

会社内の医務室に勤務している医者はそう言った。詰め込めば四人は寝れそうな部屋で、礼子は横になっていた。

「わかりました、ありがとうございます。」

「じゃ、私はこれで。」

医者はぺこんと頭を下げて、診察室に戻っていった。

「うーん。」

「大丈夫ですか?」

「うーん。」

唸るだけだ。

「どう、社長。」

荷物を片付け終わったのか、人段落ついたのか、同僚が顔を出した。

「明日までに熱が下がらなかったら、病院だって。ねぇ、社長の家族の連絡先知っている?」

「家族って息子さんだけよね?全然、わからないわ。携帯でも見てみる?」

「それしかないわねぇ。」

二人は社長室に戻った。同僚は携帯を眺め、笑子はパソコンを調べ始めた。

「あった?」

「ない。家の番号もない……。そっちは?」

「息子さんとメールさえもしてないのねぇ。ん?」

「どうしたの?」

「これ……うちの息子のメールアドレス!なんで社長が?」

「あら、だって、メル友なんでしょ。」

笑子は金魚のように口をパクパクとさせた。声にもならなかったようだ。

「聞いてないわよ!」

「なんか、秘密裏にやりとりしていたみたいよ。」

「知っているなら、言ってよ!」

「だって、口止めされたんだもん。あ、これだけ、名前がない。誰かの携帯番号ね。」

「かけてみれば?」

しかし、携帯は現在使われていない声がしてきた。

「だめ、使われてないみたい。」

「困ったわねぇ。黙って回復を待つか。聞きたいことも山のようにあるし。」

笑子はため息をついた。同僚と別れて、医務室に戻ると、専務がそこにいた。

「専務。」

「やぁ、どうだい、彼女は。」

「まだ、熱は下がりませんが、明日にでも、マシになると思います。」

「そうか、じゃ、私はこれで。」

専務はにこやかに去っていったが、社長の礼子は専務のことを影では、「永遠のハイエナ」と呼んでいた。なにをしに来たのだろう?

「えみこさぁん?」

呼ぶ声にも力がない。

「はい。」

「せんむはぁ?」

「さっき出ていかれましたよ。何しに来たんですか?」

「たぁおれているあいだの、かいしゃのけいえい、まかせてほしいって・……。」

「承知したんですか?」

「ねたふりしてたぁ。」

「そのほうがいいと思います。とりあえず、安静になさってください。明日の会議は中止します。あさっての会合は副社長に出てもらいましょう。いいですね?」

「まぁかせるぅ。」

まだ、頭がもうろうとしているようだ。笑子は医者に誰にも入らないようにして欲しいと頼んでから、それぞれの手配に回った。気がつけば、夜中になっていた。社長はまだ寝ている。

「えぇみこさぁん。」

「ここにいます。」

「うー。」

社長が自分の名前を呼びながら、うなされているせいか、帰るに帰れず、笑子は結局医務室にいた。その側で、笑子は考えていた。いつ、どこで社長と知り合ったのだろうかと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ