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辺境農民の俺、騎士になったら世界を救うことになりました  作者: ニャンコ
第一章 『辺境農民、騎士になる』

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第四話前編 『騎士と魔導師』

 アルベルトくんさあ、嫌ですねー

そこまでしなくてもー

 グレンは、まだ魔法覚えたてなのにさー

騎士と魔導師


 王立魔導学院、春季合同実技演習。


 第二演習場には、学院生だけでなく、

騎士団から派遣された

       騎士たちも集まっていた。


 普段の授業とは違い、

今日は実戦を想定した模擬戦が行われる。


 学院生たちにとっては、

自分たちの魔法が実際の戦闘でどこまで

通用するのかを試す機会でもあった。


「随分と人が多いですね」

     グレンは観客席を見回した。


「当然じゃろ。

こういう催しは、学院ではちょっとした

     祭りのようなものじゃからの」


 隣でエレノアが楽しそうに言う。


「それにしても、グレン」


「なんでしょうか」


「おぬし、

本当にその木剣一本で出るつもりか?」


「はい」


「魔法の演習じゃぞ?」


「私は騎士ですから」


 即答だった。


 エレノアは一瞬だけ目を丸くし、

      それから笑った。


「うむ。そういうところじゃな」


 観客席には、

  ミーナとリリアの姿もあった。


 そして、

 その少し前方にはアルベルトがいる。


 いつものように身なりは整い、周囲には

何人かの学院生が集まっていた。


「アルベルト様、

  今日はグレンと当たるそうですよ」


「そのようだな」


 アルベルトは余裕の笑みを浮かべた。


「九属性持ちだなんだと騒がれているが、

実際に使える魔法が初級だけだとはな

名前だけはご立派な

     ただの役立たずじゃあないか」


 そして、わざと聞こえるように言う。


「まったく、魔力の量だけ多い農民など、

  珍しいだけが取り柄の置物と同じだ」


 その言葉を、グレンは聞いていた。

 だが、特に反応しなかった。


 やがて、

   模擬戦の組み合わせが発表される。


「第一試合

グレン・テミストクレス

        対

      アルベルト・レイグラン!」


 歓声とざわめきが起こる。


「来た!」


「九属性のグレンとアルベルトだ!」


「どっちが勝つの?」


 グレンとアルベルトが演習場へ入る。

 審判役の騎士が二人を見る。


「勝敗は相手の戦闘不能、あるいは武器を

 喉元へ突きつけた時点で決する。

 危険と判断した場合はこちらで止める」


 二人が構える。


 グレンは木剣

        アルベルトは魔法杖


「始め!」


 開始と同時に、

    アルベルトが詠唱を始めた。


 グレンは走る。


「ふはっ、ちょこまかと!」


 火球が飛んできた。


 グレンは横へ跳ぶ。


 着地。 すぐに走る。


 二発目。

 三発目。


 いずれも避ける。


     アルベルトは笑った。

「どうした! 九属性とやらは!」


 グレンは答えない。

 走りながら、右手を前へ出す。


 小さな火   初級魔法


 それを地面へ落とす

       ポッ

         小さな炎が揺れた


「……何だ?」

     アルベルトは一瞬だけ見る。

 だが、すぐに詠唱へ戻る。


 グレンはさらに走る。


 また小さな火。

       ポッ

 もう一つ。

       ポッ


 地面に

   小さな炎がいくつも生まれていく。


 観客席から戸惑いの声が上がった。


「何をしてるの?」


「火を置いてるだけ?」


「初級魔法だろ?」


 アルベルトは鼻で笑った。


「くだらんなあ!」


 大きな火球が放たれる。


 グレンは避けた

        そして、次の瞬間


 アルベルトの足元に置かれていた

  小さな炎を、グレンが蹴り上げた。


 炎が一瞬だけ舞う。


「なっ!」


 視界が遮られた。

      ほんの一瞬。

         それだけだった。


 だが、グレンには十分だった。


 煙

     炎

         距離


      そして相手の視線


 グレンは一気に踏み込んだ。


「しまっ…」


 アルベルトが杖を向ける

       しかし遅い

          木剣が杖を弾いた。


 そのまま

     一歩

       二歩


 木剣がアルベルトの喉元で止まる。


「勝負あり!」


       静寂


 直後、演習場がざわめいた。


「え……?」


「勝った?」


「グレンが?」


     グレンは木剣を下ろした。

「ありがとうございました」


 アルベルトは立ち尽くしていた。

     やがて、その顔が歪む。

「……ふざけるな」


「?」


「ふざけるなと言っているんだ!」

     アルベルトが叫んだ。


 観客席が静まる。


「今のが勝負だと!? あんなものが!」


 アルベルトはグレンを指差した。


「地面に火を撒いて、煙を起こして、

       隙を突いただけだろう!」


「……その通り」


「な、なにぃ!?」

     グレンは困惑した。


「戦いですからね……」


「黙れ!」


 アルベルトの顔は真っ赤だった。


「神聖なテルス魔法を、そんなくだらない

小細工に使うなど……!」


 声がどんどん大きくなる。


「魔法を愚弄している!」


「……」


「貴様は

  魔法の何たるかも知らないくせに!」


 周囲がざわつく。


「さすがに言い過ぎじゃ……」


「アルベルト、負けたんだから……」


 しかしアルベルトは止まらない。


「そもそも貴様は農民だろう!」


 グレンの眉が、ほんの少し動いた。


「騎士になったからといって、

魔導師と同じ土俵に立てると思うな!」


「……」


「九属性? 大魔導師級の魔力? 

そんなもの、実際に魔法を使えなければ

何の意味もない!」


 そして、吐き捨てるように言った。


「たった一度しか通用しない、

       まやかしの技だ!」


 グレンは黙ってアルベルトを見る。


 審判が口を挟もうとする。

 だが、その前にアルベルトが叫んだ。


「再戦だ!」


「アルベルト!」


「こんな勝負、認められるか!」


 アルベルトは必死だった。


「もう一度やる! 

    同じ手は二度と通用しない!」


 グレンは少し考えた。


「……面白い」


「何?」


「私も、

もう一度やった方が勉強になります」


 アルベルトは歯を食いしばった。


「……今度こそ、

      貴様に思い知らせてやる」


 二人は再び向かい合った。


「第二試合、開始!」


 今度のアルベルトは違った。


 グレンが動く。


 アルベルトは足元を見る。


 地面

     周囲

         火の位置


「同じ手は食わない!」


 詠唱

    火球


 グレンは避ける。


 だが、今度はアルベルトも追いかける。


 小さな炎を置こうとした瞬間には、

距離を取る。


 視界を遮ろうとすれば、

          風で吹き飛ばす。


「どうした!」

     アルベルトが叫ぶ。

「もう同じ小細工は通用しないぞ!」


グレンは答えず、アルベルトを観察する。


 魔法を使う

      詠唱する

          避ける


 そして、考える

     火だけでは、もう難しい。


 ならば

    別の方法を試してみよう。


 グレンの右手が動いた。


 短い詠唱

      土魔法

 小さな土の塊が地面から盛り上がる


「そんなもの!」

     アルベルトは飛び越える。


 その瞬間

     グレンの左手

           水魔法


 ほんの少しだけ地面が濡れた


「また同じことを!」


 アルベルトが踏み込む

           今度は滑らない


だが、その足元へ風が走った


「なっ!」


 身体がわずかに傾く。

 グレンはその瞬間に距離を詰めた。

 アルベルトは慌てて火球を放つ。


 グレンは避ける

   そして、また 土

           水

            風

             火


 一つ一つは、どれも初級魔法。


 単独では

   戦闘に使えるような代物ではない。


 だが

   組み合わせると、戦場が変わる。


 足場。

    視界。

       進路。

          距離。


 アルベルトは

次第に追い詰められていった。


「なんなんだ……!」

     詠唱が乱れる。

「なぜだ!」


 グレンは答えない。

 ただ、一歩ずつ距離を詰めていく。


 アルベルトが大きく詠唱を始めた。


       中級魔法


 今度こそ決める

        そう思った瞬間…


 足元の土がわずかに盛り上がった。


「しまっ!」

       体勢が崩れる。


   風   水   火


 三つの魔法が、ほぼ同時に起きた。


「なっ!」


 爆発的な威力などない。


 ただ

   視界を乱し

        足元を崩し

             進路を塞ぐ


 それだけ。

    しかし、それだけで十分だった。


 アルベルトが慌てる。

 その懐へ、グレンが入った。


      木剣

          一閃


 杖が弾き飛ばされる。


 さらに一歩

      木剣が喉元へ


「勝負あり!」


 今度こそ。

      誰も声を出さなかった。


 アルベルトは、

    呆然とグレンを見上げている。


「……」


 グレンは木剣を下ろした。


「ありがとうございました」


 観客席から、遅れて歓声が起こった。


「すごい!」


「今、何をしたの!?」


「三属性……いや、四属性?」


「でも、詠唱が…」


 様々な憶測が舞う

         その中で

 エレノアだけは笑っていなかった。


 その目は、

     グレンの手元を凝視している。


「……なるほど」


     セレフィーナが隣に立つ。

「学院長?」


「今のは…」


 エレノアの声が、わずかに震えていた。


「完全な無詠唱ではない」


「……えっ?」


「詠唱は、しておる」


 エレノアはグレンから目を離さない。


「ただし、」


 一つ

   二つ

     三つ

       先に詠唱を済ませている。


 そして、発動する瞬間だけをずらす。

     ほんのわずかな時間差。

 それによって、

外から見れば複数の魔法が

    同時に展開されたように見える。


「そんな……」


 セレフィーナも驚きを隠せない。


     エレノアは、ふっと笑った。

「この使い方は……」


 その顔は、研究者そのものだった。


「ワシ以外に

使える奴はおらんと思うておったが……」


 そして、嬉しそうに呟く。


「まさか、こやつが使うとはのう」


 演習場の中央。

 グレンは周囲の歓声に戸惑っていた。


「……何か、変でしたか?」


     エレノアは思わず笑った。

「変どころではないわ」

     だが、その言葉を飲み込む。


 今はまだ。グレン自身が、自分の

やっていることの意味を理解していない。


       一方


 アルベルトは拳を握りしめていた。


「……認めない」

     誰にも聞こえない声。

「こんな……」

     歯を食いしばる。

「こんな奴に……!」

     顔を上げる。


 そこにあったのは、

敗北を受け入れた者の顔ではなかった。


       屈辱と嫉妬


 そして、自分だけは

負けていないと思い込もうとする意地。


 その日。

 アルベルトは二度、グレンに敗れた。


 そして、

 その二度の敗北が、

彼の中に消えない傷を残すことになる。





   後編につづく


 うんうん、そうだよね!

でももう少し絵的に強くしたいなあ。

演出部分かなあ。

もうちょい磨く必要がありそうだなあ。

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